このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

職員自らがkintoneアプリを作成し業務改善、そのノウハウや成果を共有

1市で悩むより、3市で共有。合同でDXリーダー育成に取り組む三島市・伊豆の国市・伊豆市

2026年03月18日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

三島市、伊豆の国市、伊豆市が合同で実施した「DXリーダー育成プログラム研修」の成果発表会

 全国の自治体でいま、“自治体DX”の取り組みが盛んに進められている。特に、住民人口が減少している自治体では、より少ない職員数で公共サービスを維持/改善しながら、職員自身の業務時間削減も実現していく方策として、デジタル活用による業務効率化に大きな期待が寄せられている。

 ただし、既存の業務プロセスとの整合性や住民との合意形成も必要である自治体業務のDXは、民間企業のそれほど容易ではなく、スピーディーには進んでいないのが実情だ。こうした状況を改善するには、自治体どうしが積極的に業務改善のノウハウや成果を共有していくことが役立つのではないか。

 実際にそうした取り組みを進めているのが、静岡県の三島市、伊豆の国市、伊豆市の3市である。3市は合同で、4カ月間に及ぶ「DXリーダー育成プログラム研修」(以下「合同DX研修」)を実施し、市庁内の業務改善に取り組むとともに、そのノウハウや成果を互いに共有してきた。

 今年(2026年)2月、2025年度の合同DX研修の締めくくりとなる「成果発表会」が、三島市役所で開催された。3市の市長/CIO補佐官に合同DX研修の狙いを聞いたほか、3市職員による取り組みの成果をレポートする。

「『業務改善マインド』はこれからの自治体運営に不可欠」

 三島市、伊豆の国市、伊豆市の3市は、いずれも静岡県東部、伊豆半島の北東部に位置する自治体である。人口は3市合計でおよそ17万人となる(三島市が約10万人、伊豆の国市が4万5000人、伊豆市が約2万8000人)。

三島市、伊豆の国市、伊豆市(地図画像は静岡県Webサイトより引用。3市の枠線は筆者追記)

 隣り合う3市は、昔から経済活動(観光振興など)でも交通(国道136号、伊豆縦貫自動車道、伊豆箱根鉄道など)でも密接な関係にある。自治体業務においても、たとえば3市が連携する「三島市、伊豆市及び伊豆の国市 電算センター協議会」があり、50年以上前(1972年)から自治体業務基幹システムの共同調達、協働運用を行ってきた歴史を持つ。

 この電算センター協議会が主催するかたちで、3市が昨年度(2024年度)にスタートさせたのが、今回紹介する合同DX研修だ。

 今年度(2025年度)も、2025年10月から2026年2月の4カ月間にわたって合同DX研修が開催された。自らの手でDXを推進し、市役所業務の効率化を図る人材の育成を目的として、サイボウズが講師として支援しながら、業務課題の抽出やkintoneアプリ作成などの研修を実施してきた。

 その締めくくりとして開催されたのが、今回の成果発表会である。

 開会挨拶の中で、電算センター協議会の事務局長を務める杉山慎太郎氏(三島市 企画戦略部 デジタル戦略課 課長)は、「この研修の真の目的は、kintoneアプリを作れるようになることではない。現場の課題を自ら発見し、デジタルを前提とした改善を自らの手でスピーディーに成し遂げる。そんな『業務改善マインド』こそが、これからの自治体運営に不可欠なエネルギーだ」と語った。

 また、講師として研修をサポートしてきたサイボウズ シニアコンサルタントのなかむらアサミ氏は、「プログラム受講者の皆さんには、自分の業務に向き合っていただくと同時に『どうありたいのか』という理想を掲げていただいた」と説明した。「理想を持ったがゆえに、現実に向き合うことが苦しく思えることもある。今日の発表では、単なるデジタル化の話だけでなく、職員の皆さんが現実に向き合ってどういうことをしたいと考えたのか、そこにも耳を傾けてほしい」(なかむら氏)。

合同DX研修がもたらすメリットとは? 3市のリーダーに聞いた

 成果発表会には、これまで合同DX研修に参加してきた三島市、伊豆市、伊豆の国市の職員だけでなく、3市の市長およびCIO補佐官も出席し、各市職員による取り組みの成果発表を熱心に聞いていた。

 電算センター協議会の会長も務める三島市 市長の豊岡 武士氏は、「社会経済がどんどん複雑化して、職員が受け持つ業務も増えている。デジタル化は『待ったなし』で、本当に急がないといけない」と、市役所業務のデジタル化、業務効率化の遅れに対する危機感をあらわにする。

 昨年度の合同DX研修以後、各市庁では職員の自主的なkintone研修会などがスタートしているという。メンターとして今年度の受講生を指導した昨年度の参加者もいた。また、今年度の受講生たちは自ら立候補した、あるいはふだんからデジタル化に興味関心が高い職員が選出されたという。

3市の市長、CIO補佐官からは、他市の職員に対しても積極的に質問が投げかけられていた

伊豆市 CIO補佐官の中村祥子氏、三島市 市長の豊岡 武士氏、伊豆の国市 市長の山下正行氏

 各市職員による発表内容は後ほどまとめるが、印象的だったのが、3人の市長・CIO補佐官から、他市職員の発表に対しても積極的に質問や発言が投げかけられていた点だ。それぞれ別の自治体とはいえ、「同じ行政業務」の中では「同じ業務課題」を抱えることが多い。そのため、合同でDX研修を行えば、解決策やノウハウをお互いに学び合うことができる。

 伊豆の国市 市長の山下正行氏は「行政業務は共通しているので、ほかの市が行っている良い取り組みは、まねをすることができる。そういう意味で、3市合同でのDX研修はとても意義がある」と説明する。

 また、伊豆市 CIO補佐官の中村祥子氏は、合同DX研修を通じて「他市における課題や、その改善の内容を見て学べることがとても多い。1つの市で経験するよりも(3市のほうが)本当に多く学べると思う」と実感を語った。

 つまり、3市合同で研修を行い、共通する業務課題の解決策、ノウハウや成果まで互いに共有することで、1市単独の研修よりも“3倍学べる”機会が生まれるわけだ。その結果として、業務改善もスピードアップすることは間違いないだろう。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ