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週替わりギークス 第345回

お仕事悩み、一緒に考えます。#63

順調なのに不安 その違和感、実は“次のサイン”です

2026年03月21日 07時00分更新

文● 正能茉優

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働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!

 「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
 誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。

 何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。


 ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。

 この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。

 今回のご相談は、キャリアの節目で多くの方が感じる「このまま、この仕事を続けていいのだろうか」という迷いについて。

 不満があるわけではないのに、未来につながる実感が薄れていく──そんな静かな揺らぎをどう受け止めればいいのか、一緒に考えていきたいと思います。

社会人8年目。「このまま続けるべきか」がわかりません

 正能さん、こんにちは。いつも連載を拝読しています。

 私は30歳で、新卒で入った広告代理店を経て、今は外資系コンサルティング会社で働いています。

 社会人になって8年目。

 仕事自体は嫌いではなく、むしろ「向いているのかもしれない」と感じる面もあります。

 評価も悪くなく、これまで大きなつまずきもありませんでした。

 それでもここ1〜2年、ふとした瞬間に「このまま、この仕事を続けていいのだろうか」という問いが浮かぶようになりました。

 朝起きたときのわずかな重さ、昇進や転職などで次のステップに踏み出す同僚たちへのざわつき。

 「辞めたい」と言えるほどの違和感ではないし、「転職したい」という明確な意志もない。

 ただ、“未来につながっている実感がなんとなく薄い”“何かが違うかもしれない”という曖昧な気持ちだけがあります。

 正能さんはこれまで何度もキャリアを選び直してこられたと伺っています。

 このような迷いの時期は、どのように捉えればいいのでしょうか。

 (30歳・女性・外資コンサル)

「このままでいい?」という問いは、“変化の予兆”

 お便りありがとうございます。

 お便りを拝見して感じたのは、質問者さんの中で、まだ言葉になりきっていない“変化”が静かに始まっている、ということです。

 それは突然の転機や大きな一つの出来事に起因するものではなく、日常の中のごく小さな違和感が、時間をかけて、少しずつ形を持ちはじめた状態に近いのではないでしょうか。

 朝起きた時のわずかな重さ。

 同僚の新しい挑戦を目にしたときのざわつき。

 前は自然にできていた頑張りへの、ほんの少しの抵抗。

 この延長線上に未来を置けるかどうかが曖昧になる瞬間。

 そういう“微細な揺れ”の積み重ねの先に、「このままでいいのか」という問いが生まれます。

 これは、仕事がこなせるようになった8年目だからこそ、そして人生の中で大切にしたいものが静かに変わり始める30代だからこそ訪れる、ごく自然な揺らぎだと私は感じました。

「こうしたい」がない=“噛み合っていない”状態?

 「辞めたい」も「こうしたい」もないという状態は、「このままでいい」という結論に見えがちですが、実際にはその“どちらにも振れきらない感じ”の中で、人生と仕事のバランスが静かに組み替わり始めているのかもしれません。

 人生の価値観や優先順位が少しずつ変わり始めているのに、日々の仕事は以前と同じペースで動き続ける。

 そのわずかなズレが、“未来がつながらない感じ”として表れるのだと思います。

 人は歳を重ねると、仕事以外にも大切にしたいものが増えたり、時間や体力の使い方の手触りが変わったり、自分が望む生活のイメージが更新されていきます。

 その生活や人生に対する変化が先に起こると、仕事に対する希望や野心が一度フラットになるのは、ごく自然なことです。

 これは停滞ではなく、“軸が書き換わりつつある時期”に起きるプロセスです。

「この仕事をしている自分」と「しっくりくる自分」に距離が生まれた

 仕事の意味が薄く感じられるとき、それは仕事そのものが急につまらなくなったからでも、質問者さんのやる気が落ちたからでもありません。

 多くの場合、起きているのはとても小さなズレの積み重ねです。

 “この仕事をしているときの自分”と“自分が本来しっくりくるあり方の自分”とのあいだに、自分でも気づかないほどの細い隙間が生まれ続けている。

 以前は自然に重なっていた二つの自分が、人生の変化にあわせて静かに、でも確実にズレ始めているのです。

・かつては誇りだった役割が、今は少しだけしっくりこない
・刺激だった忙しさが、今は身体や生活のリズムに合わない
・以前は未来を描けた環境が、今は「なぜ続けるのか」が曖昧に見える

 こうした小さな違和感は、「自分に合う働き方や意味づけが変わってきている」サインなのかもしれません。

 私はこの数年、数えきれないほど多くの30代・40代の方が同じ“しっくりこなさ”を経験しているのを見てきました。そして、私自身も例外ではありませんでした。

 この揺らぎは、ときに不安を呼びますが、実は次の自分へ移行するための“助走期間”でもあります。

方向性を決める前に、「人生の軸」を見つめ直す

 ここまでの揺らぎから見えるのは、質問者さんが迷っているのは「仕事」そのものではなく、“人生の中での仕事の置き場所”なのだ、ということです。

・人生で何を大事にしたいのか
・どんな時間の使い方をしたいのか
・どんな未来に自分を置きたいのか

 こうした“人生側の軸”が変わると、仕事の意味づけも自然に変わります。

 先日、親友が「第二子を産むかどうかが決められないから、転職も決められない」と私に話してくれました。

 人生の判断と仕事の判断は、そう簡単に切り離せるものではありません。

 だからこそ、この時期に必要なのは、「次のキャリアを決めること」ではなく、「人生の軸を見つめ直すこと」。

 人生の軸が見えれば、仕事の選択肢は自然に絞られていきます。

 逆に軸が曖昧なままでは、どの選択肢も決め手に欠けるのです。

いきなり結論を出さず、「小さな実験」で未来を探る

 とはいえ人生の軸なんぞ、そう簡単に見えない。

 だからこそ私は、「結論より先に、小さく試す」ことをおすすめしています。

・興味のある領域のプロジェクトに手を挙げてみる
・働く時間帯の調整をしてみる
・副業や社外活動をスモールスタートで試す
・学んでみたい分野に、少しだけ時間を投資してみる

 こうした小さな実験は、重い決断よりもずっと軽やかに、「自分はどちらに動きたいのか」を教えてくれます。

 そしてその心の動きそのものが、仕事への価値観の解像度を上げてくれることもあります。

 やってみた実感は、どんな分析や相談よりも確かな判断材料です。

迷う時間に、キャリアが“深まっている”

 最後に、もっともお伝えしたいことがあります。

 「このままでいいのか」と迷っている時間は、決してキャリアが“止まっている”のではありません。

 迷いとは、人生のほうが先に動き出し、仕事がその動きに追いつくまでの“調整期間”です。

 しっくりこないまま走り続けるのではなく、一度立ち止まって、「今の、そしてこれからの自分の軸」を探し、「その自分に合う仕事・働き方」を捉え直す。

 その時間は必ず、質問者さんの次の働き方、そして生き方につながります。

 仕事は人生の一部であって、全部ではない。

 だからこそ、人生の更新に合わせて働き方を変えていい。

 迷いは、更新のサインです。

 どうか焦らず、自分の内側で起きている変化を丁寧に受け止めて上げてください。

 私もきっと今後の人生でまだまだ揺らぐことがあると思いますが、これからの自分にとって必要な“揺らぎの時間”として、怖がらずに味わっていきたいと改めて感じました。

 

筆者紹介──正能茉優

ハピキラFACTORY 代表取締役
パーソルキャリア 企画職

1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 卒業。
大学在学中に始めたハピキラFACTORYの代表取締役を務める傍ら、2014年博報堂に入社。会社員としてはその後ソニーを経て、現在はパーソルキャリアにて、HR領域における新規事業の事業責任者を務める。ベンチャー社長・会社員として事業を生み出す傍ら2018年度より現在に至るまで、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの内閣の最年少委員を歴任し、上場企業を含む数社の社外取締役としても、地域や若者といったテーマの事業に携わる。
また、それらの現場で接した「組織における感情」に強い興味を持ち、事業の傍ら、慶應義塾大学大学院にて「組織における感情や涙が、組織に与える影響」について研究。専門は経営学で、2023年慶應義塾大学院 修士課程修了。

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