5G/6GやIOWNといった最新の通信規格における特徴の1つが「超低遅延性」です。通信遅延が大幅に短縮されることで、IoTのユースケースがさらに大きく拡大することが期待されています。
IoTユースケースのサンプルとして「工場に設置された産業用ロボットの遠隔操作」を考えてみましょう。
従来の4G通信の場合、無線通信区間だけで20~50ミリ秒(仕様上の理論値)が発生しました。これをクラウドにあるAIシステムで自動操作させたいと考えても、まず現地の映像/センサーデータを遠隔地のクラウドデータセンターに送り、操作指示を現地のロボットに送り返すだけで、往復40~100ミリ秒以上の遅延が発生します。その結果、ロボットが動くタイミングがずれて、たとえば加工や組立の作業に失敗するかもしれません。
これが5Gになると、1ミリ秒以下(理論値)の超低遅延通信が実現しますから、4Gでは無理だった産業用ロボットの遠隔操作も可能になります。製造業以外でも、たとえば「ロボットを使った遠隔手術」「自動車の遠隔運転」など、超低遅延な通信仕様がなければ実現できなかったユースケースは数多くあります。
この低遅延性を求めて、工場などの現場にローカル5Gを導入するケースもあります。ローカル5Gは、自社専用の5Gネットワークを、自営基地局を導入する形で運用するものです。Wi-Fi 7は5ミリ秒の低遅延性を実現できますが、接続する端末数が増加すれば10~30ミリ秒程度に低下します。低遅延の通信を安定して提供するには、やはり5Gのほうが優れているのです。
そして、2030年ごろに商用化が予定されている6Gでは、5Gのおよそ10分の1となる「0.1ミリ秒以下(100マイクロ秒以下)」の“超・超低遅延性”が目標に掲げられています。これが実現すれば、IoTのユースケースがさらに拡大することが期待できます。
たとえば、人間によるロボットの遠隔操作で「触覚フィードバック」が実現します。遠隔で操作する人でも「重さを感じながら物を持ち上げる」「抵抗を感じながらネジを締める」といったことができるのです。また、AR/VR映像を見ながら遠隔作業を行う場合に、人の動きと視界映像の動きのズレが大きく減って、いわゆる“VR酔い”の発生が抑えられます。
なお5G/6Gでは、通信遅延の削減だけでなく、「通信速度」「接続密度(同一エリア内で接続できるデバイス台数)」「信頼性」の向上も図られています。これは主に、IoTデバイスの無線接続手段としての活用を前提とした性能向上です。つまり5Gや6Gが登場した背景には、“IoTデバイスがあふれる社会”の到来が大きく影響したと言えるのです。
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