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マルテー大塚とライトアップの「kintone×AI連携」実践例

初手“キラーAI”ではなく“現場の困りごと”から kintoneを土台に小さく始めるAI民主化のススメ

2026年03月06日 12時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 経営層からAI活用を求められるも、具体策は丸投げ ―― こうした状況に戸惑う担当者は少なくないだろう。AI活用の第一歩に際して、先駆者たちが勧めるのが、「大きな成果」を狙うのではなく「現場の困りごと」をひとつずつ解消していくことだ。

 サイボウズは、2025年10月末、年次イベント「Cybozu Days 2025」を開催。kintoneのAI連携をテーマとしたセッションでは、マルテー大塚とライトアップの2社が登壇し、現場の実務からAI活用を始めた実践例を披露した。

 モデレーターを務めたサイボウズの佐藤太嗣氏は「押し付けられたAIを民衆は使いこなせるのか」と問いかけ、業務から乖離したAI活用は形骸化しやすいと指摘。AIは実務に組み込まれてこそ真価を発揮すると語った。

サイボウズ アライアンスビジネス開発部 兼 エコシステムAI PjM 佐藤太嗣氏

「現場の武器」になるのか? 6つのカテゴリで広がるkintoneのAI連携

 前段としてサイボウズの佐藤氏は、kintoneと連携するパートナーのAI製品を「6つのカテゴリ」で紹介した。「すでに多様なソリューションが存在し、部署や課題に合わせた“最適な武器”を選択できる環境」(佐藤氏)。

 まず「テキスト生成」は、外部LLMと連携する汎用的なAI連携だ。kintoneに入力されたデータを基に新たなデータが生成され、プロンプト次第で幅広い業務に応用できる。2つ目の「データ活用」は、kintoneに蓄積したデータを参照して、RAGや予測推論、データ評価などを実現するAI連携だ。

「テキスト生成」と「データ活用」の主なAI連携

 3つ目の「データ入力」では、AI-OCRや文字起こし、画像解析により、kintoneへのデータ入力を自動化する。人による入力作業をアシストする製品も含まれる。4つ目の「UX向上」は、kintoneアプリの作成や設計、カスタマイズを支援する。プラグインや連携サービスの使い勝手を高める製品も登場している。

「データ入力」と「UX向上」の主なAI連携

 5つ目は、自律的にkintoneのデータを操作したり、その補助を行う「AIエージェント」だ。AIツールにkintoneを参照・操作させるための「MCPサーバー」についても、サイボウズ公式に加えて、パートナーによる高度なソリューションが提供されている。

 最後は、専門知識を持つパートナーがAI導入を伴走支援す「コンサルティング」サービスである。AIリテラシー向上のための教育プログラムも増え、AI導入の初期段階における課題感が表れている状況だ。

「AIエージェント」と「コンサルティング」の主なAI連携

AIのはじめの一歩は「整える仕事」から ―― マルテー大塚のSmart at AI活用術

 続いて、AI連携の実践例が披露された。登壇したのは、塗装用の刷毛やローラーを製造するマルテー大塚の石井健太郎氏だ。

 マルテー大塚は、エムソリューションズのプラグイン「Smart at AI」の有償版を活用している。「AIを何から始めたらいいかわからないという企業にぴったりなサービス」だと石井氏。

マルテー大塚 管理本部 システム部 副部長 石井健太郎氏

 一般的にAI導入の第一歩には、議事録作成など全社利用が見込める「キラーAI」が推奨されがちだ。石井氏はこうしたAI活用は、自社には合わなかったと振り返る。それは、プロジェクトが全社にまたがることで、関係者のニーズが増え、合意形成が難しくなるからだ。AIに対する期待値のギャップも大きくなり、失敗のリスクも高まる。

 その点、Smart at AIは特別な環境構築も不要で、プラグインとしてインストールするだけで、アプリ単位で小さく始められる。有償版であればAPIキーの取得や管理も不要で、情報漏洩のリスクを懸念する部門への説明責任も果たしやすい。

 同社では、定期的に発生しやすく(高頻度)、最終的に人間が確認でき(低リスク)、さらにプロンプトとして言語化しやすい(定義しやすい)業務からSmart at AIの利用を始めた。「AIは色々な“整える”仕事に向いているというのが結論」(石井氏)

高頻度×低リスク×定義しやすい仕事からAI適用

 実際の整える仕事への適用例として、AIにメールや報告書の推敲や要約、翻訳などをしてもらう「下書き支援」が挙げられた。プロンプトを設定済みのボタンをクリックするだけで、これらの支援が得られる。

 他にも、ECサイトに出品する製品情報から、検索ワードを大量に生成させるといった「クリエイティブ生成」も実装している。人では時間がかかる作業も、AIなら1分で完了。SNSの投稿文も任せており、絵文字やハッシュタグを含めてもらうなど、細かな調整も可能だ。

Smart at AIを活用した「検索ワード」の生成

 特に手ごたえを感じているのが、「単純作業の自動化」だという。例えば、kintoneに取り込んだ数万件の名刺から、都道府県情報だけを抜き出す、といった人では実質不可能な作業も、Smart at AIのエージェント実行(バッチ処理)機能で短期間で遂行できる。

 最後に石井氏は、「どの仕事に適用するか迷った場合は、“勝てる業務改善”に注力してください。結果が見えていない挑戦はリスクがあります。kintoneとAIが得意なことだけ任せましょう」と締めくくった。

kintone×AIは、整える仕事の中から勝てる仕事を選ぶべし

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