農業機械の遠隔監視を実現したキャニコムとの実証事例
九州テンが取り組んだ各種産業機械メーカーのキャニコムの事例では、リモコン操作で稼働する高額な農業機械を対象に、稼働状況やエラー情報、位置情報などを遠隔で把握することを目的とした実証が行われた。キャニコムでは売上の半分以上が海外向けであり、国内でも交通の便が悪い地域で各種産業機械が使われるケースが多いと城戸氏は語る。現地に技術者が何度も足を運ぶのではなく、事前に状況を把握し、遠隔でサポートできる体制を整えたいというニーズが、この取り組みの出発点となっている。
実証ではラジコン式草刈機「アラフォー傾子」にQRIoTを組み込み、GPS情報やCAN通信によるエラー情報を取得。通常時は通信量を抑えるために最小限のデータのみを送信し、必要に応じてメモリに蓄積された詳細データを上位サービスから取得する構成が取られている。これにより、通信コストを抑えつつ、トラブル発生時には詳細な状況を把握できる仕組みを実現している。
この実証を通じて、稼働情報の収集や遠隔サポート、省力化といった効果が確認されており、現在はQRIoTをベースにした専用通信機器の開発が進められている。外付けではなく、ラジコン式草刈機「アラフォー傾子」の内部に組み込む形での開発が想定されている点も特徴的だ。通信機器の開発は4月からスタートし、過酷な使用環境や海外利用を前提とした検討が進められている。
この他にも九州テンの製品は、会議室におけるエアコンや照明の稼働状況監視、医療機器の所在管理や状態監視、工場内の環境センサーの可視化など、業種を限定しない形で活用されている。いずれのケースでも共通しているのは、まず現場で動かし、データを見せるところから始めるというアプローチであり、その延長線上にクラウド連携や他システム連携が位置づけられている点だ。IoTを目的化するのではなく、現場の課題や業務フローを起点に、必要なデータと仕組みを積み上げている。
通信回線にとどまらないソラコムとの協業
九州テンがソラコムを利用し始めたのは、最初にIoT関連の製品を作った時点までさかのぼる。通信回線としての利用にとどまらず、検証用途として使うケースも早い段階からあったが、当初は事例として表に出せるほどの取り組みは多くなかったという。
前述したキャニコムの事例ではSIMに加え、データの可視化やメール通知、リモートアクセスといった周辺サービスを組み合わせることで、顧客が自前でサーバーを用意しなくても、まずはデータを見られる環境を構築できる点が評価されていると伊東氏は述べた。
最初のステップとしてソラコムのサービスを利用し、そこから拡張するか、別途システムを構築するかを次の段階で判断する。海外での利用を前提とした案件では、最初からその条件を考慮してソラコムを選択するケースもあるという。
また、通信そのものだけでなく、運用面でのソラコムのサポート体制については、分からないことや顧客対応で困った点があった場合に相談すると、レスポンスが早く、サンプル作成なども含めて柔軟に対応してもらえると伊東氏は語る。「他のキャリアは通信管理部分しかできなくて物足りないが、サンプルも作ってもらえるので非常に助かっている」(伊東氏)と、ソラコムは社内で対応しきれない部分を補完してもらえる存在となっている。
過酷環境対応と海外展開を見据えた今後の開発方針
九州テンの今後の展開は、まずキャニコム向けの通信機器開発が4月からスタートする予定で、過酷な利用環境や海外利用を前提とした通信機器そのものの開発フェーズとなる。通常、自動車でかかる負荷が1.5G前後なのに対し、各種産業機械では利用環境の条件によって約7Gもの負荷が掛かる過酷さで、その耐久性や各種条件を考慮した基盤作りから着手すると城戸氏は語る。
農業・林業・土木等の現場では、機械の使用環境が厳しく、海外展開も含まれるケースが多いため、一定の期間をかけて検証・開発を進める必要がある。そうしたニーズを踏まえ、九州テンでは、国内外を含めて一元的に管理できる仕組みへのニーズは今後も高まっていくと予想しており、現場で使われることを前提にしたモノづくりを軸に、汎用品と個別開発の両立を図りながら、顧客ごとの課題に応じたIoT活用を支えていく。
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