製造業やインフラ分野では現在、現場のデータをリアルタイムで収集し、現状把握やトラブルを未然に防ぐ仕組みづくりが求められ、さらに遠隔から管理・保守を行うニーズが高まっている。このようなニーズに応えるIoTはますます普及しつつあるが、どう集め、どう活用するかという具体的な実装力が、いま改めて問われている。
こうした中、約60年にわたり通信機器や各種装置のモノづくりを手がけてきた九州テンは、ハードウェア開発を核に、IoTゲートウェイ「QRIoT」シリーズを軸としたソリューション展開を進めている。今回は九州テンが、現場課題にどう向き合い、どのような技術と体制で支えているのかについて、マーケティング&セールス本部第三営業部の城戸俊博氏と伊東 正氏にお話しを伺った。
ハードウェアを核に、ソリューションへと拡張する九州テンの事業基盤
本社を福岡県福岡市、本店を長崎県佐世保市に構え、九州全域にある事務所を中心として活動する九州テンは、1967年創立の約60年の歴史を持つ企業。その核となる事業はハードウェアを中心としたプロダクト事業本部と、フィールドやシステム対応を担うシステムソリューション事業本部の2つとなる。
そのモノづくりはタクシー無線を中心とした通信機器の開発・保守から始まり、現在はドライブレコーダー、トラッキング端末などの車載器、タクシー無線基地局、IoTゲートウェイなどの通信機器、鉄道向け自動閉塞装置、水量計測テレメーターなどのインフラ系機器などを作っている。そして長年培われてきたこのハードウェア開発力が九州テンのベースとなっており、その後、富士通系の事業との関わりを通じて、システムや保守を含めたソリューション型の事業へと領域を拡張している。
製品は汎用的なIoTデバイスなどの提供だけでなく、顧客ごとの要件に応じた通信機器や基板、構成そのものを設計・開発している。九州テンのIoT関連プロダクトは、Bluetooth Low Energy(BLE)や各種センサー、アナログ・デジタルI/Oなど多様なインターフェースに対応しており、特定用途に固定された装置ではない。そして現場側で特別な設定や作り込みを必要とせずに、すぐに接続・検証できる柔軟性を備えている。また価格面でも導入しやすい水準だが、単に安価なデバイスという位置づけではなく、富士通などのメーカー向けのモノづくりを行っていることが裏付けとなっている点も信頼感もつながっている。
ソリューション事業では現場で発生するデータをどう集め、どう活用するかという課題に対し、機器開発から通信、データ取得、可視化までを一気通貫で支えている。農業機械、医療機器、工場設備、会議室など、用途や業界を限定せずにデータ収集ニーズに対応している。「最近多いのは機器や装置のデータを、リモートで遠隔で取りたいというニーズで、業種に関係なくやっています」(伊東氏)
「汎用と個別の両立」「デバイスからシステムまでを自社で理解していること」「現場要件に踏み込める開発体制」。これらを組み合わせることで、業種や用途を限定しないデータ活用の相談に応えられることが九州テンの強みだ。
分散収集からエッジ処理まで担うQRIoTシリーズの全体像
九州テンのIoTゲートウェイであるQRIoTシリーズは、センサーや通信モジュールを顧客のニーズに応じて組み合わせることができる。QRIoT Ⅲはセンサーからデータを収集する中核デバイスで、小型化・低価格化を進めるとともに、通信モジュールを一枚基板にまとめることでシンプルな構成となっている。
QRIoT Ⅲは現場に複数台を分散配置し、広域にセンサーを設置してデータを収集するような用途も想定されており、必要に応じてエッジ機能を搭載したIoTゲートウェイであるQRIoT Ⅹなどで集約・処理を行う。BLEセンサーからは多数の信号が受信される可能性があるため、QRIoT Ⅲにはフィルタリング機能が実装されている。特定のBLEアドレスやUUIDを条件に抽出し、必要なデータのみを送信することで通信量の増大を抑える設計だ。また、QRIoT ⅩはGPS情報やCAN通信によるエラー情報の取得にも対応している。通常時は最小限のデータのみを送信し、トラブル発生時など必要に応じて詳細データを取得する。
QRIoTⅢのOSはTRON系を採用している。Linuxの採用も検討されたが、サポートやメンテナンス面の負荷、協力パートナーとの関係などを踏まえ、TRON系で構築する判断に至ったという。Bluetoothからのデータ受信に特化し小型化・低価格化を実現している。長年の開発・製造実績をもとに高品質な製品に仕上げている。さらにネットワーク接続向上、フィルタリング機能拡張、カスタマイズ対応範囲の拡大などの改善を図ったQRIoT Ⅲは3月24日に販売が開始された。現行機のQRIoT Ⅱは3月31日を持ってQRIoT Ⅲへ移行され、在庫がなくなり次第に販売終了となる。
エッジ側でデータ処理や制御ができるIoTゲートウェイであるQRIoT Ⅹは、単なるデータ収集にとどまらず、エッジ側での処理や制御を担うことを前提に設計されている。その大きな特徴は、リアルタイムOSとLinuxを組み合わせたマルチOS構成を採用していること。リアルタイムOS側では、高速サンプリングが必要なデータ取得や、停止させられない処理を担当する。一方でLinux側では、データの蓄積や識別、アプリケーションの実行といった柔軟性が求められる処理を行う。さらに、Linuxをスリープさせて低消費電力で動作させるといった制御も可能で、リアルタイムOSと相互に死活監視を行う仕組みも備えていると伊東氏は語る。
インターフェースはBLEだけでなく、USBやアナログ、デジタルI/Oなどに対応しており、センサーや機器と直接接続することができる。Node-REDを活用して、取得したデータを上位へ送信する仕組みを構築することも想定されている。
九州テンは、まずデータを集めて試したいという顧客に対し、簡易表示アプリやローカルで完結する構成を提示し、必要に応じてクラウド連携や上位システム連携へと発展させることを提案する。そこでQRIoT Ⅲを分散配置して広域にデータを収集し、リアルタイム処理やアプリケーション実行を担うQRIoT Ⅹと組み合わせることで、段階的な拡張が可能だ。その上で、一定のボリュームが見込める顧客には、個別要件に応じた通信機器やハードウェアそのものの設計にも対応している。
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