山梨中央銀行とサイボウズがタッグを組んだ甲府のDXセミナーをレポート
「DXを後回しに」と後悔 そんな甲府の管工事会社も地銀の伴走で一歩を踏み出せた
2026年02月04日 09時00分更新
遅れがちだった日報が翌日には集計可能に 「えっ?もう終わったの?」が実現
続いて長田氏は、実際にkintoneで作ったアプリを披露する。長らく課題だった工事日報を実現するため、まずは取引先や社員、顧客などを管理するためのマスターアプリを作成するところからスタート。やりとりを重ねていくうちに、工事台帳の作成アプリや請求書の発行アプリまで作ることになった。
作成した日報はきわめてシンプルだ。「社員が入力するのは、本日はなにをしたのか? どれくらいかかったかの基本2箇所のみ。あとの現場名や取引先はマスターアプリから持ってくることができます」と長田氏。工事台帳に関しても、今までは紙ベースだったが、kintone化したことで契約内容をそのまま流し込むことが可能になった。アプリ同士の連携により、請求書の発行記録が工事台帳アプリから確認できるのも大きなメリットだった。
社内で利用していた有休や残業、勤怠管理など各種届出書類も紙からkintoneに移行した。残業であれば17時までに申請を行ない、kintoneアプリから承認を行なえばOK。「有休申請も、早めに出してくれるようになったので、それぞれの業務への影響が早くわかるようになりました」と長田氏は語る。
アプリの導入効果としては、まず労務費確定前の時間が短縮されたことが挙げられる。会社や現場で日報が入力できるようになったため、即日入力・翌日集計が可能になり、会計監査のサイクルが早まったという。また、マスターアプリを作成したことで、入力時間が短縮され、誤記入も減った。「えっ?もう終わったのというくらい早く入力が済み、すぐにおつかれさまです!と帰る社員を見て、kintoneの日報の効果が見られるようになった」と長田氏は振り返る。
さらに必要な情報の管理、集計・分析まであらゆる業務をkintoneで行なえるようになったのも大きい。自由度の高いカスタマイズにより、富士冷暖専用のアプリを作ることができたという。「私たちだけではもちろん難しかったが、伴走支援があったので、いろいろなやり方をご指導いただけた。アプリ間の連携や集計機能で、多くの業務をkintoneに集約できました」と長田氏は語る。
DXなんて、自分の会社には無関係だと思っていた
山梨中央銀行の伴走支援は大きかった。「私自身がIT関係は苦手。当社が抱えていた重い荷物を運びながら、しっかり伴走していただいたというのが第一印象」と長田氏は語る。
一言で伴走と言っても、業務の見直しからアプリの作成まできめ細かくカバーしてもらったという。たとえば、本運用の前に使用者を限定した仮運用の期間を設けることを提案してくれたため、事前に課題を洗い出し、使い勝手を見直し、スムーズな本格稼働に移行できたという。
またITやkintoneの知識に関しても、富士冷暖のレベルにあわせて説明してくれたので、機能の理解や習熟を図ることができた。kintoneに関しては、動画やマニュアルも豊富に用意されているが、わからない部分をピンポイントで確認できる伴走支援はやはり大きいという。「伴走支援の活用により、スムーズな活用ができたので、とにかく情報をいただき、話を聞いてみてよかったなと思いました」と長田氏は振り返る。
今回のkintone導入で実現できたのは、情報のタイムリーな見える化と業務スピードの改善だ。特に情報の見える化により、従業員の時間やコストの意識も変わった。「この現場でどれだけのコストがかかっているのか、敏感になりました。自分たちが立てた実効予算との差額がどれだけあるのか、質問を受けることも増えました。これはkintoneを導入した成果だと思っています」と長田氏は指摘する。
「DXなんて、自分の会社には無関係だと思っていましたが、企業の変革を後回しにしてきたことを今では後悔しています。DXという言葉は仰々しいと感じられるかもしれませんが、実際に進めてみると、『それほどハードルは高くないな』と強気な気持ちも持てるようになりました」と長田氏はまとめた。
経営者と社員は、まず課題の認識からいっしょに取り組むべき
登壇後は長田氏と山梨中央銀行 コンサルティング営業部 コンサルティング営業室 室長代理 白石開氏が質疑に答える。
まず「DX、最初の壁」について聞かれた長田氏は、「問題点ははっきりしていましたが、誰に相談すればいいのかわからなかった。あとは、社員が使いこなせるか不安でした」と語る。
山梨中央銀行の白石氏は、他社の声として「僕らがご支援させていただくのは、県内の中堅中小企業になるので、情報システム部やエンジニアのいる会社は当然多くありません。ですから、進め方は課題に感じるお客さまは多いです」と語る。
また、社員の使いこなしに関しては、「富士冷暖様は社員の定着が本当に早かった。でも、やりたいことはいっぱいありましたが、1つ1つスモールスタートで進めたのは工夫したところかもしれません」と白石氏は語る。こうした定着に関して長田氏は、「若手社員の習得が早く、先頭を切って他の社員に教える姿が印象に残っています。仕事の経験値はまだまだですが、前向きな部分は若手に助けられました」と振り返る。
山梨県内企業のDXのニーズに関しては、日頃使う日報のデジタル化や情報共有のニーズが多いという。ただ、課題は、意思決定する経営者と実際に利用する現場の人のベクトルが合わないこと。富士冷暖はうまくいったが、他の会社だと新しいツールに抵抗感を感じる社員も多いという。「課題の認識から経営者と社員がいっしょにやっていくことが重要」と白石氏は語る。
山梨中央銀行のコンサルティング営事業部では、kintoneを用いたDX推進を手がけているが、最近多いのは請求書、経理、会計などバックオフィスのデジタル化や勤怠管理の効率化などの事例だという。一方、富士冷暖が今後取り組みたい事例としては、Excelで行なっているISOの取得関係業務や資格管理などをkintone化したいという。
経営や資金繰りなどを知り尽くし、なにより地元への熱い想いを共有する地方銀行は中業企業にとって重要なパートナー。そんな多くの地方銀行が中小企業にとって課題のDX導入を支援するという今回のようなスキームは日本全国に拡がっている。今後もさまざまな事例が拡がっていくに違いない。








