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山梨中央銀行とサイボウズがタッグを組んだ甲府のDXセミナーをレポート

「DXを後回しに」と後悔 そんな甲府の管工事会社も地銀の伴走で一歩を踏み出せた

2026年02月04日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 地方銀行とITベンダーがタッグを組んで地元企業のDX化を推進する。そんな事例が続々と増えている。2025年11月19日、山梨中央銀行とサイボウズが共催した「中堅中小企業の経営者のためのDX経営スペシャルセミナー」もこうした地元企業DX化の取り組みの1つ。kintoneの導入事例を披露した地元企業の社長は、「DXを後回しにしたことを後悔している」と振り返った。

セミナー会場には地元の経営者たちが詰めかけた

地元企業の社長が語る「強い会社になりたい」の想い

 人口減少や高齢化、産業の空洞化といった地方の課題を解決すべく、地元企業向けにITコンサルティングを展開する地方銀行が増えている。ノーコードツール「kintone」を展開するサイボウズはこうしたIT支援に前向きな地方銀行とタッグを組み、地方企業のDX化を推進している(関連記事:地方銀行とkintoneのタッグで実現する地方経済のDXとは?)。「中堅中小企業の経営者のためのDX経営スペシャルセミナー」は、こうした地方銀行とサイボウズの連携セミナーで、今回は甲府市内で行なわれた山梨中央銀行とのセミナーを取材した。

 甲府市内で行なわれたセミナーの冒頭、山梨中央銀行 コンサルティング営業部 部長の内田伸一氏が登壇した。同行のコンサルティング営業部は約40名程度のメンバーで地元企業の経営支援を行なっており、DXをはじめ、サステイナブル経営、人的資本経営、M&A、海外事業支援など幅広く手がけている。

山梨中央銀行 コンサルティング営業部 部長 内田伸一氏

 内田氏は売上100億円規模を目指す地元企業の経営者へのヒアリングで、「(財務的に)いい会社ではなく、強い会社になりたい」というフレーズが出てきたことを紹介。「いい会社は収益のために、ときにお客さまに無理強いさせたり、従業員が苦しんでいたりします。に対してえこひいきをしてしまいます。でも、強い会社はときにマイナス面を請け負いながらも、持続的に経営でき、コロナ禍やトランプ関税など予期せぬ事態に対応できる体力を持っています。そんな強い会社になりたいというお話を伺い、非常に共感できました」と語った。

 山梨中央銀行も中期経営企画で「県内企業の強靱化」を掲げる。「企業を強くする手始めとして、まずはDXを進めたい。みなさまといっしょに勉強しながら、強い企業になっていきたい」と力強く抱負を語った。

紙中心の業務から脱却 まずは課題を洗いざらい話すところから

 続いて会場で披露されたのは、サイボウズの青野慶久社長とkintoneユーザーである京屋染物店の蜂谷氏による「経営者が行なうべき自走できる組織の作り方」という対談動画。その後、kintoneを導入した地元企業として登壇したのが、富士冷暖 代表取締役 長田三千穂氏だ。

富士冷暖 代表取締役 長田三千穂氏だ。

 今年で50年目を迎える富士冷暖は甲府市上石田で管工事業、消防施設工事業を営んでいる。管工事とは、建物内に水や空気、ガスなどを通すための配管の設置やそれらの配管とつなぐ設備機器を取り付ける工事を指す。「ガソリンスタンドのニュー平和さんと朗月堂さんのある交差点の近くにある住宅地で商売を営んでいる」と地元の人しかわからない紹介だが、聴衆たちはうなずいていた。

 そんな富士冷暖が山梨中央銀行のコンサルティング営業タント事業部と相談を開始し、kintoneを導入したのは1年前。利用ユーザーは10名で、平均年齢は49.7歳だ。利用しているITツールは、Microsoft Officeのほか、画像管理ソフトの「蔵衛門御用達」や経理ソフトの「TKC」、CADソフトの「CADWe'll Tfas」など建設業向けのツールだ。

 kintone導入前、富士冷暖は紙業務中心で印刷費用がかさんでいた。特に日報は社員10名で年間60冊ほどとなり、保管場所も必要。毎日の記入を怠り、提出が滞ったため、労務費の計算が遅れることもあった。「今までは現場から疲れて会社に帰ってきて、そこから日報を一生懸命入力しなければならなかった。入力が滞ると、2日ごと、3日ごとまとめてやるようになっていた」と長田氏。また、自由記入のため、統一感がなくて見にくく、工事台帳への記入に時間がかかるという課題もあった。

書類だらけだったという富士冷暖の社内

 長田氏がkintoneに興味を持ったのは2023年だが、こうした日報の確認作業に追われる日々で、すぐに断念してしまったという。だが、2024年11月に山梨中央銀行のコンサルティング営業事業部からkintoneを提案され、2025年4月までは山梨中央銀行の伴走を受けながらkintoneの導入にチャレンジする。「最初、この話を社内会議でしたとき、誰も社員は目を合わせてくれませんでした(笑) 」と長田氏は振り返る。

 こうした課題を洗いざらい話すことからスタートした。kintoneを選定した理由として、「悩み続けている日報に対応できそう」「人材不足、働き方改革への対応策として、富士冷暖の企業規模でも導入できそう」「スマホアプリが利用でき、パソコンが苦手な社員でも使えそう」といったポイントがあった。「DX初心者としては山梨中央銀行から「しっかり伴走していただける」と言ってもらえ、とても心強く感じました」と長田氏は語る。

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