専門家・西﨑彩智さんに聞く「片付けは最高のセルフコーチング」 片付けの先にある大切なこと

文●源詩帆  編集/山野井春絵

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 これからのキャリアについて考えた時、「家のこともあるし、自分には新しい挑戦は難しい」「仕事と家事の両立が不安」、そういった悩みを持ったことはありませんか。「まずは片付けを頑張ってみよう!」と張り切ってみたものの、続かず、何度も同じ経験を繰り返している方も少なくありません。

 片付け事業を行う株式会社Homeport代表取締役の西﨑彩智さんに、そもそもなぜ片付けが苦手なミドル世代女性が多いのか、そして片付けの先にある大切なことについて話を伺いました。(シリーズ1/2)

「片づいている家」の3つの条件

 そもそも、「片付いている家」とはどのような状態を指すのでしょうか。西﨑さんに伺いました。

 「表面的には片付いているのに、棚の中はぐちゃぐちゃで押し込んでいるだけという方が結構いらっしゃいます。それではすぐまた散らかってしまいますよね。私が考える『片づいている家』とは、以下の3つの条件を満たしている状態です。

1. 何がどこにあるか把握でき、一発で取り出して元に戻せる

 物の定位置が決まっていて、物に『住所』がある状態です。これにより、何かを出すたびに家が散らかることもなくなります。

2. 見栄えより、使いやすさが優先されている

 見栄えばかり気にして出し入れに工数がかかるのは本末転倒です。実用的に機能していることが重要です。

3. 家族全員が1.2.を理解し、実践できている

 よくあるのは、お母さんだけが定位置を把握していて、家族が探すたびにお母さんが代わりに出し入れしてしまうパターンです。それではお母さんだけがいつまでも忙しいままですよね。家族全員が自分で出し入れでき、使いやすさを実感している。それが本当の意味での『片付いている家』です」

片付けられないミドル世代女性が悩む3つの理由

 家事育児経験の長いミドル世代女性でも、片付けが苦手という人は多いといいます。女性たちが片づけに悩む背景とは何なのでしょうか。

「大きく3つの特徴があると感じています。

1. 完璧主義による「条件が揃ったら」思考

 『やるからには、ちゃんとやらねばならない』という完璧主義の方が多いです。ただ、このベースには『条件が揃ったらやろう』『タイミングが来たらやろう』という先延ばし思考がある。完璧を目指さなくていいので、まずは小さく動き出すことが大切です。

2. SNSの影響による自己否定

 SNSではキラキラした人ばかりが注目されます。ラグジュアリーホテルのようなお部屋や、物が一切出ていない綺麗なお家を見て『そうじゃない自分はダメなんだ』と思ってしまう。この悪影響は非常に大きいです。全員が雑誌のような完璧な家に住む必要はありません。『どこかほっこりするレベル』でいいんです。居心地の良さを優先しましょう。

3. 外での頑張りと家庭内での自己犠牲

 特にミドル世代女性は、外では必死に頑張り、家の中では自己犠牲傾向が強いと感じています。お母さんが育児と家事に専念し、お父さんが働くという社会で育ち、親からの影響も大きいです。仕事や地域との関わり、子育ても介護も頑張っているのに、女性だから家のことも全て一人でどうにかしないと、と感じている方が非常に多いんです。

 もちろん、女性の方がマルチタスクが得意で片づけに向いているのは事実です。だからといって一人で全てを担う必要はありません。男性にとっても片づけや家事は頭のリセットになると言われています。男性の脳は、2つのことを同時に考えるのが苦手だといわれているからこそ、洗い物や掃除に集中することで考え事から離れ、リフレッシュできるんです。一人で抱え込まず、家族を巻き込んでみてくださいね」

片付けがもたらす心と体の健康

 家が片付くことで心と体に起こる変化について聞きました。

「片付けができるようになると、『私ってすごい!』と自信が持てるようになります。ですが、リバウンドすると自信を失ってしまうので、私は『お片付けを祭りにしないで』とよく言っています。一気に行うのではなく、毎日少しずつ継続することが大事だからです。心の健康のために、写真を撮って毎日記録をするのもおすすめです。

 いつの間にか体重が減少していたという人も多いんですよ。片付けは軽度の運動になりますし、食後すぐに食器を片付けるという動きの習慣化もしやすいからです。また、人は不安から物を溜め込んだり、食べすぎたりして太ると言われています。溜め込まなくなることで家が片付き、食事の質が上がる。料理の品数を増やそうと前向きに動き出せるようになる方も多いです。

 ストレスからお酒を飲んでしまう人が、家が片付いたことで心が安定し、お酒に逃げなくなったという事例もあります。『知らないうちに前より健康になっていた』『落ち込みにくくなった』『何か行動するときにスイッチを入れやすくなった』という声もよく聞きます。『病は気から』とはまさにこのことですね」

片付けも仕事も「ゴール」から考える

 ライフシフトを考えているミドル世代女性にとって、片付けと仕事をどう両立すればいいのでしょうか。「片付けと仕事には共通点が多い」と語る西﨑さんに、その理由を聞きました。

「仕事でも片付けでも大事なことは、ゴールを明確にすることです。片付けがうまくいかない時は、『目の前の物がいるかいらないか』という点で考えがちですが、そうするとあまり物が捨てられません。『この家を片付けたらこんな暮らしがしたい』『最高の自分はこんな状態』というゴールが描けたら、『その状態にある私がこれを使っているのは心地いい?』と判断ができるようになるんです。

 仕事も全く同じです。仕事が進められない時は点で考えている。ゴールから考えると、何を今やるべきなのかが見えてきます。片付けの先にやりたいことがあるのなら、日々『この作業の意図はどこにあるのか』『何をどうしたいのか』自分に問いかけてみてください。

 この考え方は人間関係にも応用できます。惰性で付き合っている人や我慢している関係があるなら、『どんな未来を作りたいのか』『そのためにはどんな人と関わっていきたいのか』と考えることで、取捨選択ができるようになります。

 私は片付けを『最高のセルフコーチング』だと考えています。コーチングでは問いを通じて答えを見つけていきますが、何もないところで考えるのはとても難しい。でも片付けや物という対象物があると格段に考えやすくなるんです。私も46歳で離婚した際に荒れた家を片付けながら、『50代はどうありたいんだろう?』『どんな自分がかっこいいんだろう?』と自問自答して今があります。ぜひ皆さんもセルフコーチングだと思って片付けに取り組んでみてくださいね」

 次回は、ミドル世代のための片付けの「始め方」と「続け方」について話を伺います。

著書『人生が変わる片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』(朝日新聞出版)。片付けで人生を変えた実例が詰まった一冊。

 

Profile:西﨑彩智

にしざき・さち/株式会社Homeport代表取締役。

自らの経験や片づけ代行の仕事から培った独自の片づけメソッドをもとに、2015年9月「お片づけ習慣化コンサルタント」として福岡で起業。家を丸ごと45日間で片づける「家庭力アッププロジェクト®」を2018年1月からスタート。2019年2月に法人化し、2021年11月に東京・港区に東京オフィスを開所する。2021年9月には一般社団法人 日本お片づけ教育推進協議会を設立し、代表取締役に就任。2023年5月にはアメリカでも講座を開催するなど国内外の受講生は2026年1月現在3,600人を超え、企業や学校での講演も多数開催。著書に『部屋がゴチャゴチャで、毎日ヘトヘトなんですが、二度と散らからない片づけのコツ、教えてください!』(すばる舎)や『人生が変わる片づけの習慣』(朝日新聞出版)などがある。


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