働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!
「こんな働き方はもう嫌だ」「もっとこんな仕事がしたい」。
誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。
何か困っていることや考えていることがあれば、こちらまで気軽にメッセージください! 匿名のメッセージも、もちろん大丈夫です。
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。
今回の連載は、「半年間の休職を経た復職後に、復職前と同じだけ頑張れるか」と悩む方からの相談です。
同じく休職を経て、復職した身として、一緒に考えていけたらと思います。
「また働ける」と「頑張れないかも」の狭間で
正能さん、こんにちは。いつも連載を拝読しています。
私は現在、30歳でメーカーの企画職として働いています。
半年前に心身を崩して休職し、来月から復職を控えています。
心身を崩した原因は、仕事や家族ごとの忙しさに重ね、同じ時期に大好きだった祖母を亡くしたことも大きかったと思います。
かつては一緒に暮らし、最近までも毎日のように電話をしていた祖母が突然いなくなり、心の拠りどころがなくなったように感じました。
その頃ちょうど担当していたプロジェクトがうまくいかず、職場でも感情をコントロールしきれないことが増えて……気づいたら、朝起きられなくなっていました。
今は医師からも復職の許可が出て、体調は落ち着いています。
ただ、「また働ける」という安心感と同時に、「もう前のようには頑張れないかもしれない」という不安が強くあります。
祖母の死以降、そして心身の不調以降、何にやりがいを感じればいいのか、自分でもよく分からなくなってしまいました。
正能さんも、大きな喪失を経験されたあとに仕事に戻られたと聞きました。
どうやって「再び働く」という気持ちを取り戻しましたか?
前のように頑張れる自信がない自分を、どう受け入れたらいいのでしょうか。
(30歳・メーカー企画職)
“戻る”ではなく、“始める”としての復職設計
おばあさまを亡くされたこと、そして心身を崩されたこと、どちらも大きな出来事でしたね。
体の疲れ、心の悲しみ、生活の変化。
それらは別々の出来事に見えるけれど、実際は同じ「一人の人間」に降りかかっていることを思えば、あなたの心身のエネルギーが足りなくなったのは当然のことだと思います。
復職に向けてすべきことは、「元気になる」でも「前のように頑張る」でもありません。
大切なのは、今の自分のエネルギー量に合った、エネルギーの使い方を再設計することだと私は考えています。
喪失や休職を経て再び働くというのは、「壊れた自分を直す」ことではなく、「これからの自分を組み直し、新しく始める」プロセスです。
まずは、「戻る」ではなく、新しい形で「始める」という前提で、復職を捉え直してみると、少し気持ちや考え方が変わるかもしれません。
復職=“戻る”は、プレッシャー?
私が復職したとき、生活や一日の過ごし方には不安を感じたものの、仕事そのものにプレッシャーを感じなかったのはなぜだろう?
今回のお便りを踏まえ改めて考えてみると、そのひとつに、諸般の事情により、復職前とは、役割が変わったことがあるのかもしれないと思いました。
「復職」という言葉には、「以前の状態に戻る」という響きがあり、前と同じにやろうという気持ちが自然と起こりがちです。
けれど、喪失や病気を経た後には、良くも悪くも、経験前と同じ自分に戻ることはできません。
それは「変わってしまった」のではなく、「変わるほどの経験をした」ということ。
「前のように頑張る自信がない」と相談者さんはおっしゃいますが、むしろ、「前のように頑張らなくてもいい自分」に、そして「前とは違う頑張り方をする自分」に出会えたとも言えるのではないかと私は思います。
回復とは、「前と同じやり方で前と同じ力を出せるようになること」ではなく、「今の自分にあった形で、力を入れるやり方や領域、総量を選べるようになること」なのかもしれません。
復職=“始める”と捉えるには?
復職を「戻る」ではなく、「始める」と考えるには、具体的にどうしたらいいのでしょうか。
そのひとつは、「新しい時間軸やツールを、意識的に取り入れること」だと私は考えます。
私の場合、復職前後はちょうどAIツールの進化が著しく、頭の使い方や手の動かし方、働き方が大きく変わりました。
同時に、病を経て、人生観も大きく変わり、「より長い時間を、家族と共に過ごしたい」という価値観が強まりました。
この2つの変化が重なった結果、「AIを活用して業務を効率化し、家族との時間を大幅に捻出しながらも成果を出す」という、新しい働き方の目標が見えてきたのです。
この変化は「力の限り働こう」という考えをずっと持ってきた私自身にとって大きな変化ではありましたが、「変わってしまった」という焦りはなく、休職後の自分が手に入れた新しい大方針と武器だと私は捉えています。それくらい、自分にとって、自然な存在です。
とはいえ、もちろん日々業務に取り組む中で「あと3時間働けば、余裕で目標が達成できるのに」と思う日もあります。
けれど、「この働き方に対する考え方自体が、病を経たからこその人生の大方針であり、今の人生の武器である」と自分で捉え、自分に立ち戻る場所をつくると、復職後の働き方・仕事の再設計がしやすくなりました。
例えば、以前の私は「自分がとことん考え抜くこと」に価値を置いていました。
けれど今は、「AIと一緒に考えることで、自分にしかできない問いを見つけ、効率的に答えを出すこと」に重きを置いています。
こうして仕事の取り組み方を変えることは、「自分という装置の使い方を変えること」であり、自分の存在意義を捉え直すことでもあります。
過去の自分が慣れていた環境を再現するのではなく、今の自分が心地よく機能できる環境を、意識的に選び取りつくっていく。
そうして少しずつ、自分の中の古いOSを更新していくことが、復職を「始める」として捉える一歩になるのだと思います。
誰と時間を使い、何を実現する人生にするのか?
こうしてOSを更新した先で、私がもう一度向き合ったのは、「誰と、どう時間を使うか?」という問い、そして「仕事では何を実現するのか?」という問いでした。
私は、死産という子の命、そして自分自身の喪失を経験して以来、「日常は当たり前ではない」ということを、身をもって知りました。
どんなに予定を詰めても、どんなに努力をしても、明日同じ日が来るとは限らない。
だからこそ、今大事にしたい人と、どう時間を使いたいかを、心から大切にしたいと思うようになりました。
……と同時に、もしかしたら私はすごく長生きするかもしれない。(笑)
だからこそ、「長く生きる」前提で、仕事でも何を達成したいのかを、改めて考えるようになりました。
家族と長く時間を過ごすことと、仕事で何かを達成することを、トレードオフにしない。
その両立こそが、いまの私にとっての挑戦であり、希望なのだと思います。
仕事以外の時間を大事に過ごすこと、仕事で何かを達成すること
私は今、その問いを現実の時間設計に落とし込むために、生活と仕事のリズムを少しずつ試してみています。
例えば、平日は、起きてから9時までと、15時から20時までの8時間は、基本的に家族との時間と決めて過ごす。
一見当たり前のようではありますが、以前の「まず仕事、そのあとに生活」という順序が常の私にとっては、ありえない生き方でした。
(子が生後3ヵ月の頃から朝8時から夜19時までシッターさんにいてもらっていて、ずっと仕事をしていました)
けれど今は、家族との生活を先に置くことで、仕事の中身や集中の仕方まで変わりました。
「限られた時間の中で、何を実現するか」を考えることが、「より短く働く」ことではなく、「より深く働く」ことにつながっている感覚があります。
こうして少しずつ、今の自分に合った時間の構造をつくり直していくこと。
それが、私にとっての「生きながら、働く」ということになってきました。
「生きる」とは本来、働くことも含めた様々な行為が含まれる大きな概念です。
けれど、病気になる前の私は、仕事が大事すぎて、仕事に夢中になりすぎて、仕事以外の「生きる」ことを無意識のうちにサボっていました。
今日相談者さんが使う時間の中に、そして今後相談者さんが暮らす毎日の中に、少しだでもいいので意識して、「生きる」を混ぜてみてください。
それがきっと、新しく「始める」復職の大きな最初の一歩になるはずです。
筆者紹介──正能茉優
ハピキラFACTORY 代表取締役
パーソルキャリア 企画職
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 卒業。
大学在学中に始めたハピキラFACTORYの代表取締役を務める傍ら、2014年博報堂に入社。会社員としてはその後ソニーを経て、現在はパーソルキャリアにて、HR領域における新規事業の事業責任者を務める。ベンチャー社長・会社員として事業を生み出す傍ら2018年度より現在に至るまで、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの内閣の最年少委員を歴任し、上場企業を含む数社の社外取締役としても、地域や若者といったテーマの事業に携わる。
また、それらの現場で接した「組織における感情」に強い興味を持ち、事業の傍ら、慶應義塾大学大学院にて「組織における感情や涙が、組織に与える影響」について研究。専門は経営学で、2023年慶應義塾大学院 修士課程修了。

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