製造業にとって電力などの光熱費は利益に直結する大きな要素だ。その使用量はこれまで細かく計測されていないことも多かったが、電力価格の高騰やカーボンニュートラルへの対応といった社会環境の変化によって、データ取得の規模や方法、単位などのニーズが大きく変わってきている。
長年にわたって計測器メーカーとして現場を支えてきた渡辺電機工業(以下、渡辺電機)は、このような市場の変化に対し、これまでの知見とIoTの活用によってそのニーズに応えるビジネスを展開している。今回は渡辺電機 営業本部 販売支援グループ 櫻井桂太氏に渡辺電機の製品や、ソラコムのSIMを用いたソリューションへの取り組みについてお話を伺った。
汎用的なプラットフォーム、汎用的な仕組みを提供する渡辺電機
創業86年目を迎えた渡辺電機は、針式のアナログメーターの開発・製造からスタートし、計測機メーカーとしてハードウェアからソリューションまで手掛けている企業で、JIS規格の第1回審査に合格した歴史を持っている。現在も事業の中核は計測機などのハードウェアで、渡辺電機のビジネスの約9割を占めている。
主力製品はエネルギー監視や電力計測のための機器で、近年は計測したデータをどのように渡し、どのように集約するか、さらに、そのデータをどのように活用するかということが求められ、それらを実現するソリューションなどのシステム的な領域にビジネスの幅を広げていると櫻井氏は語る。
これは電力価格の高騰や省エネのための電力使用量の把握といった側面に加え、現在の企業に求められるカーボンニュートラルへの対応などが要因で、製造業全体として細かく把握することが前提となり、電力管理がやらなければならないこととして求められているからだ。渡辺電機のクライアントの多くは製造業で、従来は工場全体やキュービクル単位の電力使用量の計測が主体であったが、製造ライン単位、設備単位の可視化が求められるようになっているという。
また、製造業以外にも、家電量販店やスーパーマーケットなど、多店舗展開を行う業態からの引き合いも増えており、各店舗のデマンド監視や空調の電力管理、水使用量の常時監視といった用途での導入が進み、これまであまり細かく管理されてこなかった領域にも、計測データ活用の幅が広がっている。
そのような社会環境の変化の中、渡辺電機は計測機という末端デバイスの提供にとどまらず、データ収集用のゲートウェイ、可視化・監視を行うクラウドまで提供している。電力を測る機器、データを集めるゲートウェイ、エネルギー監視用のクラウドアプリケーションをワンストップで提供できる計測機メーカーは多くなく、「汎用的なプラットフォーム、汎用的な仕組みをお客様に提供することで、簡単に始められるようにしている」(櫻井氏)ことが渡辺電機の強みとなっている。
家電量販店やスーパーマーケット全店舗のエネルギー計測も担うソリューション
渡辺電機の製品群は自社開発の電力計測機器や無線センサー、各種装置に取り付けられる計測器などの末端デバイスが用意されており、そこから収集できるデータを集約するIoTゲートウェイがソリューションの軸となっている。ゲートウェイは自社製品だけでなく、Modbus RTU(RS-485)のプロトコルに対応している機器であれば、他社製の計測機器からもデータを取り込める。ゲートウェイ内部にはWebサーバーが組み込まれており、ゲートウェイ単体で画面表示やデータ確認を行えるので、クラウドなどの外部にデータを出せない顧客にも対応している。
クラウドは電力やエネルギーの可視化を中心に、データの集約や運用管理を行う。データ判定による警報通知などにも対応し、運用を意識した設計となっている。さらに、ゲートウェイとクラウドの連携を前提に、遠隔からゲートウェイ内部へアクセスできる仕組みも取り入れており、保守や確認作業を簡素化している。
IoTゲートウェイのプログラムは基本的に固定され、ユーザー側に自由なカスタマイズ領域は開放していない。すでにプログラムが用意されたIoTゲートウェイなので、簡単に、安く始められるという形でスモールスタートできるという。また、製造業の現場では、電気や設備には詳しくても、通信やクラウド、セキュリティに不安を感じる担当者が少なくない。そうしたハードルを下げるため、ゲートウェイ側の機能を充実させ、遠隔からの保守や確認についても、クラウド画面からワンクリックでゲートウェイ内部にアクセスできる仕組みを実装している。
渡辺電機の顧客の8~9割は製造業だが、近年は全国展開している店舗からの引き合いも増えているという。とある家電量販店では、全国に展開する約150店舗に導入され、各店舗の電力デマンド監視や、空調設備などの使用電力量を一括で管理している。30分間の最大使用電力量を基準に料金が決まるデマンドの特性を踏まえ、クラウド上でデータを確認できる仕組みが構築されている。
また、スーパーマーケットでの導入事例では電力ではなく、水の使用量監視を主目的としている。約50店舗に導入され、水の使用状況を常時監視することで、おかしな使い方や水漏れの可能性といった異常を検知し、運用改善につなげている。こうした電力、水、ガスといったエネルギーの計測は、これまでは月に一度の検針でしか分からず、全体量しか使用量が見えなかったが、渡辺電機は計測機器とソリューションを用いることで、どこで、いつ、どの程度使われているのかを把握したいというニーズに応えている。
心強く感じたソラコムのマインドと、協業による今後の展開
渡辺電機ではIoTゲートウェイを販売する際、SIMを組み込んだ上で顧客へ提供する形を取っている。その中で、標準の通信として採用しているのがソラコムのSIMだ。ソラコムを選んだ理由は、ゲートウェイ側のプログラムが固定されているという製品特性だ。データ取得の周期や送信量があらかじめ想定できるため、通信量の上限とミニマムが読みやすい。その条件に合う通信プランがソラコムに用意されていたことで採用されたと櫻井氏は語る。
また、顧客からの受注が決まってから製品を提供するケースが多いため、SIMを1枚単位で発注でき、必要なタイミングですぐに手配できる運用性も重要で、ソラコムの仕組みは使いやすかったと櫻井氏は振り返った。
少し前のモデルでは他メーカーのSIMを使用していたこともあるという櫻井氏は、「ソラコムは単なるSIM屋さんではない」という印象を受けているという。SIMの提供にとどまらず、パートナーのデバイスと組み合わせた提案や、企業同士をつなぐ役割がありがたいといい、ソラコムに入った相談から「それなら渡辺電機に聞いた方がいい」と紹介を受けて具体的な案件につながったケースもあるという。
ソラコムの担当者からの「私たちはSIMしか持っていないが、SIMだけでは何もできない。デバイスとセットで価値が出るものだから、デバイスが売れる仕組みを一緒に考えたい」という言葉があり、櫻井氏はそのマインドがすごく心強いと語った。
計測器に求められるニーズの変化とともに、大掛かりな仕組みではなくまず一部から始めたいという中小規模の工場や、特定のライン・設備単位での管理といった用途に対し、ソラコムのNapterの機能はすごく面白く、安くていいサービスだという櫻井氏は、Napterを使用してゲートウェイにアクセスするだけで情報が簡単に見られるという形でゲートウェイ側の機能をもう少し充実させていきたいという。
「遠隔監視とは少し違うが、渡辺電機のゲートウェイとソラコムのサービスを1つのソリューションとして展開していけたらと考えており、そのためにエッジ側の機能を充実させていくことが今後のポイントと考えています」(櫻井氏)
IoTの需要自体は昔からある話だが、それに対応する方法や渡辺電機の製品で対応できる幅が広がってきていると感じるという櫻井氏は、以前は費用面で断っていたことも「こうしたらいいですよ」「これを使えばできます」と顧客に踏み込んだ提案が比較的簡単にできるようになってきたという。
最後に今後について櫻井氏に尋ねたところ、セキュリティに不安を持つ顧客に、渡辺電機のゲートウェイはこういう認証を取得していると言えるように準備をしていると語り、エネルギー監視や電力計測の引き合いをスタートとしながら、市場環境やプレイヤー構造の変化に対応するIoTソリューションを構築していきたいとアピールした。
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