デジタル庁が運営する「デジタル改革共創プラットフォーム」の現在
デジ庁の自治体・政府限定「Slackコミュニティ」は5年目に突入 孤独に戦うDX担当の“救いの場”に
2026年01月19日 11時00分更新
自治体と政府の職員が“直接対話”をする場として、デジタル庁が運営するオンラインコミュニティ「デジタル改革共創プラットフォーム」(以下、共創PF)。スタートから5年目を迎え、参加する自治体職員の数は1万2500人に達している。
2026月1月14日にデジタル庁が開催した共創PFに関する説明会では、同基盤の現状や利用例、そして自治体職員による生の声が共有された。
参加者かつアンバサダーも務める栃木県真岡市の池澤さよりさんは、「専門的な議論ができる場であり、私のようなデジタル初心者や“ひとり情シス”をしている職員にとって心強い場」と語った。
国・自治体間のフラットなコミュニケーションを醸成する「共創PF」
共創PFは、自治体や政府の職員であれば誰でも参加することができる、デジタル庁運営のコミュニケーションプラットフォームである。ビジネスチャットツールのSlackを基盤に、自治体と政府、あるいは自治体同士の職員が直接対話できる環境を整備しており、ここに寄せられた自治体職員の声は政策推進にも活用される。
こうした対話の場が提供される背景には、自治体のDX担当者が抱える「情報不足」の問題や、「政府の情報発信」の問題がある。
自治体のDX担当は、動きが早いDX関連の情報を日々追いかけ、自団体の悩みを解決するノウハウや事例を見つけなければならない。加えて、政府から届く通知の照会作業もこなす必要があるが、その内容は往々にして難解である。
デジタル庁のオープンガバメント班 シニアエキスパートである関治之氏は、「共創PFの目的は、こうした問題に対して、自治体と政府の職員が必要な時に必要な情報へアクセスできる場を整えること」と説明する。
共創PFは、2021年11月に現行版の運用を開始。5年目となる現在、同基盤に参加する自治体職員の数は1万2500人に達し、政府職員を含めると1万4500人を超えている。1495市町村の職員が参加しており、これは自治体全体の83%を占める。
共創PFで目指しているのが、 誰もが自由に課題やアイデアを投稿できる、“自由闊達な意見交換の場”だ。そのため、「投稿は個人の意見として扱う」「コメントは否定から入らない」「チャンネル内でのオープンな会話を推奨する」といった行動規範も設けている。現在、Slack内では140以上のチャンネルが運用され、月平均で約6000件(2025年での集計)の投稿があり、フラットで活発なコミュニケーションがとられているという。
加えて、参加者の拡大に寄与しているのが、「アンバサダー制度」だ。コミュニティがより活性化するよう働きかけるリーダー職員を認定するもので、現時点で23名が就任している。
今回の説明会では、2025年度からアンバサダーを務める栃木県真岡市の池澤さんが登壇した。
“リアルな試行錯誤”まで共有されるのが共創PFの強み
池澤さんが共創PFに参加したのは、2023年末のこと。育児休暇から復帰し、デジタル戦略課に配属されたばかりだった。新しい業務の流れはもちろん、IT系の資格や専門知識もない状態でのスタートだったという。「さらに、前任者の産休に伴い十分に引継ぎを受けれず、直属の上司も忙しくて、初歩的な質問すらためらう状況だった」と振り返る。
そんな折、池澤さんはデジタル庁のサイトで共創PFの存在を知る。自由闊達な意見交換の場というコンセプトに惹かれ、小さな悩みや疑問まで解決したかった当時の池澤さんにマッチしたという。
そして、共創PFに参加することで、池澤さんの情報収集の方法は変わっていく。まずは、過去の投稿から業務に必要な知識を吸収し、担当予定だったオープンデータに関しても基礎から先行事例まで学ぶことができた。
真岡市のオープンデータカタログサイト
特に変わったのは、これまで近隣の自治体に電話やメールで問い合わせていた事例の収集だ。情報収集の範囲は全国へと広がり、真岡市と同様に農業・工業が盛んで同規模の自治体を見つけ、ベンチマークにすることも可能になった。地理的に離れている担当者に直接質問できるのは、共創PFならではだ。
池澤さんは、メディアで発信される“完成された事例”だけではなく、成功に至るまでの最初のステップや悩み、失敗談まで、“リアルな試行錯誤”を知ることができるのが共創PFの強みだと語る。真岡市でデジタル人材の育成や活動範囲について悩んでいた時には、「同じ課題を抱えた自治体から、未完成な実践内容も共有されていたのが、次の一歩を決める支えとなった」という。
池澤さんは、今後もアンバサダーとして、「ITには詳しくないが、当時の自分と同じように悩んでいる職員に寄り添える存在になりたい」と意気込みを述べた。




