このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

劇的な生産性向上の秘訣は「スキルギャップ解消」と「リソース代替」

生産性を“20倍”向上させるメカニズム グラファー×サイボウズが語る生成AI活用の現在地

2026年01月20日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 生成AIをフル活用することで、「生産性を20倍向上できる」時代が来る ―― そう語るのは、企業や行政向けのDX・AIサービスを手掛けるグラファー社長の石井大地氏だ。生産性向上のポイントとなるのが、「スキルギャップ解消」と「リソース代替」だという。

 サイボウズは、2025年10月末、年次イベント「Cybozu Days 2025」を開催。グラファーの代表取締役 石井氏とサイボウズのテクニカルエバンジェリスト 山下竜氏のトークセッションでは、「適用領域」「役割分担」「プロジェクト」「データ整備」の4つのテーマで生成AI活用の現在地が語られた。

「AI×データ活用の現在と未来: Mindset Dataset Is All You Need」と題したセッションをレポートする(AI革命を引き起こした論文「Attention is All You Need」をなぞっている)

AIの適用領域:凄さ・派手さよりわかりやすさを重視

 最初のテーマは、AIの「適用領域の選び方」だ。

 サイボウズの山下氏がポイントとして挙げたのは、凄さ・派手さよりも、わかりやすさを重視することだ。データを含めて短期間で準備ができ、汎用的かつ転用性が高く、人によるレビューが容易なユースケースを探すべきだという。加えて、「AIと仕事している感が得られるものだとなお良い」と山下氏。

 具体例として挙げられたのが「分類」である。顧客からの問い合わせを緊急度と担当部門別に自動分類させるというシナリオであり、「データも意外と使わず、すぐに始めやすい」(山下氏)という。

サイボウズ テクニカルエバンジェリスト 山下竜氏

 グラファーの石井氏は、AIの適用領域に関して、「『業務でAIを使う』から『AIが業務を行う』へと価値創造の主軸が変化してきた」と語る。これはAIモデルの推論能力やハブ機能(マルチモーダル化やMCPなど)の進化に伴って、AIが遂行可能な業務が劇的に拡大しているためだ。

 生成AIはこれまで、個人の“タスク”を効率化するにとどまっていた。それが、2024年から2025年にかけて“業務プロセス”をAI前提の形に変革するサービスやアプリケーションが増え、さらにはAI前提で“組織”の構成や人材配置を見直す先進的な企業も現れ始めているという。

AI活用はタスクの効率化から業務や組織を変革する段階へ

 特に進化が著しいのが、ソフトウェア開発の領域だ。ベンチマークにおけるAIモデルの問題解決能力は、2023年の2%から2025年には70%に達し、既に多くのソフトウェア開発者を超える能力を得ている。「だからこそ、ソフトウェア開発を軸としたユースケースが面白いのではないか。グラファーでは、法務や経理を含むほぼ全員が、コーディングエージェントを活用してプログラムを書き、業務改善を推進している」(石井氏)

AIと人の役割分担:劇的な生産性向上の秘訣は“スキルギャップ解消”と“リソース代替”

 続いてのテーマが、「AIと人の役割分担」だ。

 山下氏は、AIの役割について、まだまだ人によるチェックは必須であり、アシスタント的な役割にとどまっていると現状を述べる。一方の石井氏は、AIを“フル活用”することで、生産性は「20倍向上」できると確信しているという。

グラファー 代表取締役 石井大地氏

 例えば、DXを推進するためには、ツールを探し、相見積もりをとって、契約するというプロセスが必要で、年間100万ほどのコストが発生する。しかし、グラファーのように現場担当がコードを書いてツールを自作してしまえば、一気にコストは抑えられる。

 他にも、新規プロダクトを生み出すには、数名のチームで数か月かけて開発し、投入に向けて別担当が市場調査などを実施する必要がある。AIの力を使えば、専属ではないプロダクトマネージャー1名が、市場調査も含めて1か月で完結させることも現実的になっている。こうした劇的な変革を計算すると、生産性+2000%は夢物語ではないという。

AIによる生産性向上のインパクト

 石井氏は、さらに一歩踏み込み、AIで生産性が向上するメカニズムを分析している。ポイントとなるのが「スキルギャップ解消」と「リソース代替」だという。

 スキルギャップ解消は、プログラミングの民主化のように、専門家のスキルや知識を頼っていた業務を自身が担えるようになるAI活用である。リソース代替は、自分以外の人、例えば部下などの工数を使っていた業務をAIに代替させるAI活用だ。両者に共通しているのは、専門家や他者との“コミュニケーションが減るほど”生産性が向上することである。

 この2つのAI活用を突き詰めると、「10人のチームを率いるくらいの生産量を確保できる」と石井氏。そして、人はだんだんと業務の遂行主体ではなくなり、業務を設計・管理する役割へとシフトしていくという。

AIで劇的に生産性が向上するメカニズム

 ただ、もちろんAIに任せてはいけない業務もある。石井氏がよく聞かれる質問として、「著作権を侵害してないか」「セキュリティは大丈夫なのか」「品質は担保されているか」の3つがあるという。これに対する石井氏の回答は「大丈夫ではない」だ。

 AIは責任を持っておらず、あくまで使う側が全面的に責任を負わなければいけない。そのため、人間によるチェックや意思決定のプロセス、いわゆる「Human-in-the-Loop (HITL) 」が不可欠になる。「実は、責任の所在が人とAIの役割の切れ目。人は失敗したら謝罪をして、場合によっては給料が下がり、クビになる。AIはそういったリスクを負わないことを念頭に付き合うべき」(石井氏)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ