第22回 チームワークマネジメント実践者に聞く
流れてしまうフロー情報と溜めておきたいストック情報 ツールを賢く使い分けよう
広報チームを襲う「情報洪水」の正体。必要なのはコミュニケーションの量ではなく設計だった
提供: ヌーラボ
目的達成に向かって、一丸となって動ける強いチームを作るために必要な考え方である「チームワークマネジメント」。本連載では、チームやプロジェクトで陥りがちな悩みを事例で検証しながら、チームワークマネジメントを実践するためのベストプラクティスを学んでいく。
今回は、施策が昨年から一気に増えてしまった建材メーカーの広報チームを事例にコミュニケーション設計の重要さを学んでいく。コミュニケーションのプロである広報がなぜコミュニケーションに悩んでいるのか? 背景にはコミュニケーション設計の欠如があるようだ。
【事例】コミュニケーションのプロなのにコミュニケーションに課題?
建材メーカーの広報チームに所属しているが、チームで担当している情報発信がそろそろ手に負えない状況に陥りつつある。調査会社の認知度アンケートで競合に差が付けられた事態を深刻に受け止めた経営陣は、広報チームにプレスリリースやSNSなど認知度施策の強化を厳命。チームの人数が増えないまま、昨年から比べてほぼ倍の広報施策を抱えることになってしまった。
チームは施策を円滑に進めるべく、メール、チャット、グループウェアなど多種多様なツールを駆使して、コミュニケーションを活性化させた。社内外の関係者と密に連携しようと、「コミュニケーションの量」を重視し、スピード感を持って情報を共有する体制を整えた。チーム内では膨大なメッセージが絶え間なく飛び交い、一見すると活発な連携がなされているかのように見えていた。
しかし、コミュニケーションの「量」が増えた一方で、現場では深刻な弊害が表面化した。まずは必要な情報と不要な情報が混在する「情報洪水」だ。チームワークの向上を意識するあまり、あらゆる情報がのべつ幕なしに共有される状況に陥り、自分に直接関係のない案件の連絡まで大量に共有されるため、本当に今すぐ確認すべき重要な連絡が情報洪水の中に埋もれてしまった。その結果、必要な情報を求めて複数のツールを横断して検索し続けるという、極めて非効率な作業に時間を奪われている。
さまざまな情報がさらに散在してしまうことで「誤解や誤認」も発生している。ツールが乱立し、情報が整理されずに散在していることで、同じプロジェクトに関わっていても部門間での認識のずれが生じているのだ。目標やルール、最新の決定事項がタイムラインの中に流れて消えてしまい、各自が断片的な情報で動いていることで、不要な誤解や、認識合わせのための膨大な差し戻しが発生してしまうのだ。
理想は必要なタイミングで必要な情報を得られるコミュニケーション環境だが、現状は必要な情報を探すのに多くの時間を費やす毎日。広報チームはコミュニケーションのプロのはずなのに、なぜこんなにコミュニケーションがうまくいかないのだろうか?
【課題】コミュニケーション過多な現在 設計しないと情報に溺れる
コミュニケーションのプロである広報なのに、コミュニケーションがうまくいっていないと広報担当者が自覚してしまう今回の事例。なにが問題なのだろうか?
そもそも複数メンバーによるプロジェクトではコミュニケーションが増えてしまうのは当たり前。タスクの数が増えれば、やりとりは増え、ツールが増えれば、やりとりは指数関数的に増える。しかも、昨今は「属人化排除」と「チームワークの向上」が謳われるようになり、「コミュニケーションも量が大事」と言われることが増えたため、さまざまな情報がひっきりなしに共有されてしまう。
このような状況にも関わらず、コミュニケーションが組織として設計されていない組織は多い。単にコミュニケーションの量を増やしたり、情報を広く共有したりするだけではなく、「適切なタイミングで、適切な情報が、適切なメンバーに届く」ようにコミュニケーションを「設計する」必要があるわけだ。
・コミュニケーション設計
チームワークを円滑に進めるためには、「適切なタイミングで、適切な情報が、適切なメンバーに届く」ようなコミュニケーションの仕組みが不可欠です。情報の透明性と共有文化は、信頼関係を構築し、チームの協働を加速します。(チームワークマネジメントの定義より引用)
現在は大事な連絡も不要な情報も、区別なく大量に共有されてしまう情報洪水時代。その情報の洪水に埋もれるだけでなく、情報はツールごとにバラバラに散在している。メンバーや業務が増えるほどこの状況は悪化し、誰もが情報処理の限界を迎えているのだ。この観点で今回の事例を深掘りしてみよう。
ダメ出しポイント①
必要な情報をなかなか見つけ出せない。
単に情報が多いだけではない。メール、チャット、グループウェアなど、情報がさまざまなツールに散在していることが問題を深刻にしている。複数のツールを併用していると、どこに必要な情報があるのかわからないという状況に陥る。「必要な情報を求めて、ツールをまたいで検索しまくった」という読者も多いことだろう。自分に関係する情報だけをキャッチできる仕組みを構築するのはなかなか難しい。
ダメ出しポイント②
部門が異なると認識が異なることも多く、誤解や混乱も生じてしまっている。
社外だけではなく、社内でも、組織が異なると認識は大きく異なる。そのため、組織間でのやりとりにおいては、「目標」や「ルール」が重要になる。さまざまなコミュニケーションツールの登場で、担当者同士をつなげることが簡単にできるようになったが、目標やルールを共有しなければ、誤解や認識合わせのロスが大量に発生してしまう。
ダメ出しポイント③
過去にも同じようなミスが発生したはずだが、その反省を活かせてないようだ。
メールやチャットなどのコミュニケーションツールは、特定のトピックやプロジェクトのやりとりでは便利だが、再利用が難しいという弱点がある。新しいやりとりが発生すると、古いやりとりは流れてしまうので、その履歴を資産にするのが困難。ストック情報とフロー情報が混在していることが、情報の洪水に拍車をかけている。
【解決提案】情報を「課題」として整理し、情報洪水をなくしていく
以上の課題設定を踏まえ、施策が倍になってしまった広報チームの業務を改善するコミュニケーション設計を行なう場合、ポイントは以下の通りだ。
・必要なタイミングで必要な情報を得られる環境の構築
・組織をまたいだコミュニケーションの目標とルールの設定
・コミュニケーションを組織の資産として活かせる仕組み
こうしたコミュニケーション設計においては、プロジェクト・タスク管理ツールのBacklogが大きな効果を発揮する。さまざまな情報を「課題」という単位でBacklogに集約し、「どこを見にいけばよいかわからない」という状態を解消する。たとえば広報チームの例では、プレスリリースやSNSの発信などを事業部ごとのプロジェクトとして設定し、すべてのやりとりをそこに集約するのがオススメだ。
Backlogではタスクを「課題」として起票する。今回の事例であれば「新製品Aのリリースと認知拡大」という親課題を起票し、プレスリリースやSNSなど施策を「子課題」として起票する。子課題にはチェック項目を設け、期限と担当者を割り当て、完了条件を設定する。以下、事業部と広報チームのやりとりはすべてこのBacklogで行なうようにする。種別やカテゴリーなどで課題を分類しておけば検索性も高まり、必要な情報をすぐに入手できる。
やりとりはメンションを活用し、通知を必要な担当者に絞る。チャットやメールを併用するのもOKだが、決定事項や資料は必ずBacklogへ登録し、情報を集約する。情報はプロジェクトメンバー全員にオープンにされているため、後から参加したメンバーも背景を遡れる。この「透明性」こそが、メールとの大きな違いである。
重要なのは、使い方をルールとしてBacklogの概要欄にきちんと記載し、情報洪水を意識的になくすように心がけることだ。Backlogはあくまでツールなので、使い方に差が生じると、情報集約という目的を達成するのは難しい。「ここを探せば見つかる」という環境の構築を意識して、ユーザーに利用してもらおう。単にルールを決めるだけではなく、ルールに基づいて利用されているか、進捗遅れやゾンビタスクをチェックする「バックログスイーパー」という役割をメンバーに担ってもらうのもオススメだ(関連記事:バックログスイーパーの恩田さんに、タスク管理成功の秘訣を聞いた)。
コミュニケーションについては、フロー情報はビジネスチャット、ストック情報はBacklogといった使い分けを意識しよう。ただ、実際に編集部でも体験したことだが、「Backlogに業務の情報を溜める」という意識で利用を続けると、面白いことに進捗に関してのチャットやメールでのやりとりはどんどん減っていく。やりとりの多くは内容よりも、進捗の確認というパターンが多いのだ。その上で、過去のやりとりがいわばテンプレートとなり、次に同じような施策を動かす際にもスムーズに動かすことができる。まさにコミュニケーションが組織の資産になるのだ。
【まとめ】情報洪水の時代 コミュニケーションは設計しないと機能しない。
コミュニケーションを設計する意識でBacklogを導入し、まずは業務の情報を課題として集約する。適切なタイミングで適切な情報が適切なメンバーに届く仕組みを構築しよう。これにより、やりとりが資産として蓄積され、次に似たようなタスクが発生した場合に過去の事例を再利用できる。
チームワークマネジメントとは?
多様なメンバーが共通の目的達成のために助け合い、自律的に動けるチームを設計・運営する概念。チームの構造を見える化し、コミュニケーションを設計することで、チームメンバーが個々の能力を発揮しやすくし、全体の生産性向上と目標達成を目指す。
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