IoTソリューションの開発プロセスの中では、そのアイデアの実現可能性を探るために「PoC(概念実証)」が行われます。
PoCは新規ソリューション開発に欠かせないものですが、一方で、PoCから先の実ビジネスにつながらない「PoC止まり」、さらには成果の出ないPoCの繰り返しで担当者が疲弊してしまう「PoC疲れ」といった言葉もよく聞かれます。
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なぜ、多くのIoTプロジェクトが“PoC止まり”に終わってしまうのでしょうか。そこには、いくつかの共通する原因があるのではないでしょうか。
まずは「技術ドリブンでプロジェクトが進んでしまう」ことです。IoTプロジェクトの目標は本来、何らかの「ビジネス課題の解決」であるはずです。しかし、「こういうIoT技術があるから使いたい」という技術ありきのスタンスで、ビジネス的な目標を定めないままプロジェクトが進んでしまうこともしばしばあります。
PoCは本来、「技術的な実現可能性」と同時に「本当にビジネス課題を解決できるのか」を検証するためのものです。PoCの結果、前者が実証できたとしても、後者が不明瞭であればビジネス的には価値がなく、先に進まなくなります。具体的に「どんなビジネス課題を解決したいのか」を定めたうえで、PoCを実施することが大切です。
同様のことは、IoTで取得するデータについても言えます。データをやみくもに収集しても「データの活用先が決まっていない」のであれば、やはりPoCは技術的な検証だけに終わってしまいます。
解決するべき具体的なビジネス課題が定まっていても、「現実の運用に必要なリソースやコストを無視している」ものであれば、ビジネスとしての実現は困難です。PoCの中で、こうした部分の見積もりを行うことも不可欠です。
最後に「PoCの結果判定が複雑すぎる」ことも、難易度を上げてしまいます。1つのPoCに多数の判定基準を盛り込んでしまうと、そのどれかが基準を満たさない可能性が高まりますから、結果として「PoC止まり」になるケースが増えます。PoCを何のために行うのかを再確認し、できるだけ判定基準を減らす(シンプルにする)ことが必要です。
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これらはごく基礎的なことではありますが、実際に開発プロジェクトが走り出してしまうと忘れがちなことでもあります。PoCの実施だけに気を取られるのではなく、「何のためにやっているのか」という冷静な視点も欠かさないことが大切です。
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