社会には24時間365日接続され、適切なタイミングで適切な映像や画像を確認しなければならない、いわゆる「落とせない環境」が存在する。この「落とせない環境」を構築し、最適な確認体制を取れるソリューションを開発、提供しているのがアムニモだ。
アムニモは長年培ってきたノウハウをもとに、社会インフラや自治体、放送局といった公共性の高い組織にAI、映像、IoTソリューションを提供している。今回はこのアムニモの代表取締役社長 小嶋 修氏に、これまで手掛けてきたソリューションの具体的な実例から今後の展望まで、幅広くお話を伺った。
過酷な環境でも稼働するハードウェア~ソリューションまで提供するアムニモの強み
横河電機の連結子会社であるアムニモは2018年に設立された企業で、横河電機本体の事業領域から少し離れたIoTや映像、AIを軸にしたソリューションを展開している。設立当初はIoTが主体だったが、3年前から映像系に力を入れている。今回お話しを伺った小嶋氏は、元々サン電子でモバイルルーター「Rooster(ルースター)」の立ち上げに携わった後、ライブロックテクノロジーズを起業。鉄道踏切向けのカメラソリューションを手掛け、その後、横河電機がIoT事業として立ち上げたアムニモにジョインし、2024年6月に代表取締役社長に就任した。ソラコムとの付き合いはライブロックテクノロジーズの頃からだという。
アムニモの強みは、ハードウェアからクラウド、デバイス管理、AI活用に至るまで、自社で一気通貫して提供できる点だ。屋外や産業用途へ向けた機器開発を長年続けてきた経験を活かし、雷対策、防水、防湿コーティング、気圧コントロール、直射日光や温度変化への耐性など、屋外使用で想定される要素を一つの筐体に集約している。
また、カスタマイズ性の高さというアムニモのソリューションの強みもあり、痒いところに手が届かない既存のルーターやクラウドサービスから乗り換えるケースが増えているという。「外国製ルーターは安価だが、意図が伝わりにくい。日本製でカスタマイズできることを理由に来られる方が多い」(小嶋氏)
AI、映像、IoT 3つの柱を主軸にソリューションを展開
アムニモが提供するソリューションは大きく「AI」「映像」「IoT」の3領域に分かれる。アムニモではこれらを個別サービスとして切り出すというよりも、業務課題や利用環境に応じてハード・ソフト・クラウドを一体で成立させている。「映像をIoTの延長線上にある入力データとして扱い、そこにAIやクラウドを組み合わせることで、お客様の現場に必要な形に仕上げていく」(小嶋氏)というアムニモが提供するソリューションを紹介しよう。
AIソリューション:現場AIと生成AIを組み合わせる実務向け設計
アムニモのAIソリューションでは、ルネサス製のAIチップを搭載したエッジゲートウェイを中心に構築されている。GPUのように発熱しやすい方式は屋外運用と相性が悪いため、低消費電力で熱に強いチップを採用している。
現場側のAIでは「何が起きたか」を検知し、人の侵入、動体、熊などの動物の来訪など、エッジ側で見るべき瞬間を抽出してクラウドへ送る。「すべての映像をAIで解析し続けるのは非現実的。エッジAIで抽出し、生成AIでレポート化することで実務向けのAI活用になる」(小嶋氏)
クラウド側では生成AIとの連携も可能で、機械警備のアラートが上がった際に、アラート前後の映像を生成AIへ送ってレポート化し、駆け付けるガードマンのタブレットへ送る仕組みを構築している。現場の状況を事前に把握することで、業務の迅速化や危険回避につながるという。
小嶋氏は「映像は主役ではなく、業務フローを補佐する存在」と語る。警備会社であれば機械警備が主役であり、建設業であれば図面管理や工事管理の仕組みが主役になる。そこに必要な情報として映像を組み込むため、アムニモではAPI連携による映像活用を重視している。これは他社が「サービスを提供してユーザーに合わせてもらう」のとは対照的で、「そこにあるシステムとどう付き合うか」がアムニモのコンセプトだと小嶋氏はいう。
映像ソリューション:屋外・産業用途に最適化した設計
アムニモの映像ソリューションは、屋外監視用途を重視した設計となっている。屋外は雷対策、防水、防湿コーティング、電源変動、直射日光、気温変化など、映像機器にとって厳しい環境が多い。アムニモのエッジデバイスは、これらの要因をひとつの筐体に集約して対処できるよう設計されている。
たとえば踏切監視や防犯カメラ、洋上風力発電といった現場では、電源断や通信障害が発生した際に映像が途切れたり、装置が停止していては成り立たない。アムニモのデバイスは、電源が落ちても30秒程度は内部キャパシタで動作し、「電源が落ちた」という通知を確実にクラウドへ送る仕組みを備えている。また、PoEのON/OFFを遠隔制御することで、現場で故障したカメラを無人で復活させる。
このように「落とせない環境」を前提とするアムニモの映像プラットフォームはエッジ録画とクラウド録画を組み合わせたハイブリッド構成になっている。100拠点規模のカメラをクラウド側で一元管理するケースでは、放送局が扱う6Mbps級の高画質映像も処理できる構成をテレビ局向けに提供し、数百台単位の映像配信を低遅延で行う仕組みを実現しており、他局への横展開も進めており、各局の映像業務を支えていく予定。
また2026年10月から施行される予定のカスハラ対策法に対応した、ネームプレート型映像監視ソリューションも開発。医療、福祉、鉄道、サービス業など、従業員の業務に支障が出るカスタマーハラスメントの防止策の一環として開発されたこのソリューションは、様々な企業から引き合いがきているという。
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