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業務を変えるkintoneユーザー事例 第300回

大阪にある警備会社のDXは、ネガティブ思考の事務員から始まった

業務改善とは「人の弱さと向き合う」こと だからkintoneの利用は“あきらめた”

2025年11月28日 08時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp 写真●サイボウズ

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「めんどくさい」を潰すために受け入れた、ユーザー負担を最小限にするためのカスタマイズ

 もうひとつ中西氏がこだわったのが、ユーザーの「めんどくさい」という感情と正面から向き合うことだ。例えば、Excel時代の5回の転記が、kintoneの5回の入力に変わっても、負担は減らない。そこで中西氏は「新規現場管理アプリ」を作成した。

 同アプリで、新規入力を行う際に、“必要なボタンだけが有効化される”仕組みを実現した。例えば、「新規顧客」を選択すると「顧客登録ボタン」が現れ、それをクリックすると、裏側で顧客マスターへのデータ登録が完了する。

「この仕組みは、標準のアクションボタンでは条件分岐ができないため、JavaScriptでカスタマイズしています。システムに人が寄り添えるのが理想ですが、人の運用でカバーする範囲が大きいほど、kintoneへの反感につながってしまう」(中西氏)

 導入段階では、とにかくkintoneの印象を下げないために、ユーザーの負担を減らすことを最優先。あえてカスタマイズのリスクも許容し、「操作性に全力ベット」する姿勢が、PCが苦手な社員の心を掴んだ。

「JavaScriptカスタマイズは原則自己責任。わが社にはDX難易度鬼レベルの人たちがいるので、このコストを飲みました。ただ管理が大変なので、個人的にはプラグインの方がお得だと思っています」(中西氏)

JavaScriptカスタマイズで徹底的に操作性にこだわった

改善担当者の心を折れさせない「ネガティブ式・生存戦略」

 改善は失敗の連続であり、担当者の疲弊は避けられない。社内からは「シュシュッとで業務改善出来たら苦労せんわ」「改善要望多すぎてさばききれない」「あの~その業務必要ですか?あ、いるんですねぇ~」といった声が聞こえてくる。「改善を進めるうちに、しんどくなることがあります。でも、そんな時に支えになったのがkintoneのコミュニティでした」と中西氏。

DX推進には失敗が付き物で、担当者は疲弊してしまう

 中西氏は、「業務改善とは人間の弱さと向き合う仕事」だと語る。無理にkintoneに固執せず、人間は弱い生き物だと認め、仕組みで対応する。そして、改善活動を一人で抱え込まずコミュニティを活用する。これが彼女の“ネガティブ式の生存戦略”だという。

 中西氏は「改善はもちろん大事ですが、担当者が折れてしまっては改善は進みません。だからこそ、自社にあった手段をしっかり用意しましょう。ユーザーコミュニティを含めたエコシステムこそ、kintoneの最大の魅力です」と締めくった。

改善担当者の心が折れないようにすることが一番大事

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