【チームワークマネジメント実践講座】イベント直前なのにチームはバラバラ!原因は”目的の共有不足”にあった

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: ヌーラボ

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 目的達成に向かって、一丸となって動ける強いチームを作るために必要な考え方である「チームワークマネジメント」。本連載では、チームやプロジェクトで陥りがちな悩みを事例で検証しながら、チームワークマネジメントを実践するためのベストプラクティスを学んでいく。

 今回は、とある会社の“新卒採用イベント”の運営プロジェクトを題材にお届けする。突然チームに応援要請された“僕”が感じた違和感と疑問から、プロジェクトを成功に導くために必要な要素や、具体的な実践方法を学んでいきたい。まずは“僕”の気持ちになって、次の事例を読んでほしい。

【事例】突如チームに参加した“僕”が感じる不安。このままでイベントは本当に大丈夫なのか?

いよいよ新卒採用イベントが近づいてきた。新卒の人たちに、うちの会社に来てもらい、事業や働き方について現場を見てもらうイベントだ。しかし、急遽応援要請された僕から見ると、各チームメンバーはどうも違う方向を向いている気がする。

集客担当チームは、参加者リストができたら運営メンバーに渡すことになっているが、リストを渡すタイミングが遅い。しかも情報が不十分なので、結局運営メンバーが参加者に毎回確認する手戻りが発生している。登壇者対応のチームは、イベントで登壇する担当者をアサインしただけで、どんな話をするのかすりあわせをしていないようだ。先日は登壇予定者から「プレゼン資料を作る必要があるのか?」と問い合わせがあり、担当が割り当てられていないことがわかった。

一応、イベントのマニュアルは共有されているが、作業内容は書かれているものの、このイベントの目的や指標が全然わからない。とにかく参加者数を集めればいいのか、参加者の満足度が高ければいいのか、参加者とのコミュニケーションの量が大切なのか……。そもそもイベント自体が、部長の思いつきでスタートし、キックオフのときにはいろいろ話があったようだが、そのときのログもないようだ。

各メンバーが目の前の作業にのみ集中し、今となってはイベント全体で目指しているゴールが全然わからない。忙しいという理由で定例会に参加しないメンバーも多く、全体がどのように動いているのかもわからない。間近に迫ったイベント。果たして成功するのだろうか? というか、どうなれば成功といえるのだろうか?

【課題】「目的の共有」はチームワークの大前提

 途中からイベント運営プロジェクトに参加した“僕”だが、さまざまな疑問や不安を感じているようだ。ここでは一体何が課題なのだろうか?

 多くのメンバーが関わるイベントの企画や運用は、チームワークが非常に重要な業務である。今回の事例のような新卒採用イベントの場合、企画からスタートし、登壇者のアサイン、マニュアル作成、参加者の募集や管理、当日の運営、アンケートの回収など、業務も多岐に渡り、関わる人数も多い。また、イベントは“生もの”であり、刻一刻と状況が変わるのも特徴だ。たとえば、集客が厳しければ、てこ入れが必要になるため、人員配置やタスク、優先順位も変化していく。

 イベント当日に破綻してしまいそうな気配を感じている今回の事例だが、「目的や指標がわからない」「担当者が決められていない」「コミュニケーションが欠けている」「進捗管理がない」など、さまざまな問題点を抱えている。その中でも今回は、「目的が共有されていない」という点に着目しよう。

目的の共有

チーム全員が「何を目指しているのか(目標)」、そして「なぜそれを行うのか(目的)」を明確に理解し共有することで、チーム全体の方向性が定まり、一人ひとりのメンバーの自律的な行動と効率的な業務遂行が促進されます。


 目的の共有は、チームワークマネジメントに必要な5つの要素のうちの1つであり、チームで仕事をする場合の「大前提」でもある。そもそも目的を持たない集団は、人が集められただけのグループであり、チームではない(関連記事:「管理」と「マネジメント」は違う──脱・Excel管理でチームを強くする倉貫さんのチーム論に納得しかない)。チーム全員に同じ目的が共有されているからこそ、出自の異なるメンバーでもチームとしてワークすることができる。

 それでは、今回の事例から具体的に“何を改善すべきか?”を3つのダメ出しポイントから見てみよう。

ダメ出しポイント①

このイベントの目的や指標が全然わからない。

途中参加したメンバーが感じた不安は、そもそもどういう目標(なにを目指しているのか?)や目的(なぜそれを行なうのか?)がわからないことだ。目標がなければ、そもそもイベント成功の基準がないことになり、目標達成のために、なにが必要かを議論できない。また、目的がなければ、メンバーは自身の業務に納得感が得られない。与えられた仕事に終始し、一人ひとりのリーダーシップを発揮するのが難しくなる。まずは、リーダーやコアメンバーが目標と目的を明確にしなければならない。

ダメ出しポイント②

キックオフのときにはいろいろ話があったようだが、そのときのログもないようだ。

目的はチームに共有してこそ意味がある。この事例のイベントは、部長が言い出しっぺとしてキックオフで話をし、それなりに熱い想いもあったのかもしれないが、記録が残っていない段階でアウトと言える。まずは議事録をとること、その上できちんと共有することからスタートすべきだ。

ダメ出しポイント③

というか、どうなれば成功といえるのだろうか?

「目標を達成したかどうか」を、明確に測定できなければならない。たとえば、参加者の人数、参加者のイベントへの満足度、応募に至るまでのコンバージョンレートなど、数値化の方法はさまざま。また、こうした目標や目的についてチームメンバーで議論すること自体も、チームワークを強くするはずだ。

【解決提案】BacklogのテンプレートやWikiを最大限に活用

 イベント運営の事例を例にしたチームワークマネジメントの「目的の共有」を具体的な作業に落とし込むと以下になる。

・イベントの目的の設定

・設定した目的の共有

・議事録の保存と共有

 このうち、イベントの目的は、リーダーやコアメンバーが設定する。あまり多くのメンバーで議論すると、「船頭多くして船山に上る」になるため、シンプルでわかりやすい目的を設定する。プロジェクトはつねに流動的だが、この目的に関しては一貫して変更しないようにする。目的の変更はコアメンバーの変更くらい大きな影響を与えるからだ。

 その上で、チームワークマネジメントツールであるBacklogを使って、チームメンバーで運用できるようにしていこう。具体的には、イベントの目的とミーティングの議事録をBacklogの「ドキュメント」や「Wiki」に登録し、いつでも振り返るようにする。また、「課題のテンプレート」に登録しておき、課題を立てる際に必ずチェックできるようにするのもよい(関連記事:繰り返し発生するタスク(課題)、Backlogで効率良く管理する方法は?)。テキストだけで説明が難しい場合は、Cacoo(カクー)などのオンラインホワイトボードツールを使って図式化することもおすすめだ。

プロジェクトの目標を明文化して、意識合わせを行なう

 Backlogにイベント運営のデータを集約しておくメリットは、実は次回のイベントでこそ真価を発揮する。過去のイベントで蓄積されたタスク、ドキュメント、マニュアルなどは、次回の準備にそのまま活用できる。前回の反省点を踏まえて改善を加えれば、より洗練されたイベントの実現が可能となるのだ。

 毎月開催されるイベントはもちろん、それがたとえ半年後や1年後であっても、Backlogに記録された情報は大きな力を発揮する。履歴という名のナレッジが蓄積されているからこそ、「あのとき、きちんとタスクを登録しておいてよかった」と実感するはずだ(関連記事:1年前のルーティンワークが残っている 「Backlogやっててよかった」を見せたい)。

 イベントの運営では以下のようなBacklog活用事例もあるので、参考にしてもらいたい。

展示会運営 PCIソリューションズ様

展示会の概要など共有すべき情報は「Wiki」に記載しました。後からプロジェクトに入ったメンバーからも「情報がまとまっていてわかりやすかった」との声がありました。関連するドキュメントやファイルなどもすべてBacklog上で共有することで、効率的に情報の集約ができたと思います。


就職支援イベント運営:メディア総研様

メンバーの業務が可視化されたことで、属人化を防げるようになりました。やり取りや決定事項がBacklogに残るので、情報の不透明感や認識のずれも減ってきています。


KOZAROCKS運営:フォーシーズ様

毎日定例ミーティングを行うのは、一見非効率に思われるかもしれません。しかし、Backlogを通じて進捗を共有することで、「プロジェクトメンバー全員が一つのゴールに向かう」という、これまでになかったチームワークが生まれました。

【まとめ】チームは目的の共有から始まる

 イベントの企画となると、会場や日時などが優先されがちだが、目的の共有もチームワークの前提とも言える大事な概念だ。あとから参加するメンバーが迅速にチームに溶け込めるためにも、イベントのゴールはきちんと設定しておきたい。次回は「役割の明確化」について学んでいこう。
 

チームワークマネジメントとは? 

多様なメンバーが共通の目的達成のために助け合い、自律的に動けるチームを設計・運営する概念。チームの構造を見える化し、コミュニケーションを設計することで、チームメンバーが個々の能力を発揮しやすくし、全体の生産性向上と目標達成を目指す。

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