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数理最適化あり、バイブコーディングあり、宇宙あり?

今年は実用度高すぎでしょ! カスタマイズコンテストで見たkintoneの可能性

2025年10月31日 19時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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生成AIを開発要員として「意味ありコード」の課題に取り組む(ジヤトコ岩男さん)

 ラスト7番手として登壇したのは、おさかなキャンパーことジヤトコの岩男智明さん。「kintoneでパターン検索!自由自在に高速に!」というタイトルで、kintoneの検索にメスを入れてきた。

ジヤトコの岩男智明さん

 岩男さんは「あなたの会社では、『意味ありコード』を使っていますか?」と会場に問いかける。意味ありコードとは文字通り、番号の並びに意味を込めたコード。型式や図面番号、YJコード、JAN、コンテナ番号など、社内独自・業界標準など、われわれの業務はさまざまな意味ありコードにあふれている。こうした意味ありコードをkintoneで使う際の悩みを新しい手法で解決するというのが、岩男さんの提案だ。

いろんな会社で使っている「意味ありコード」

 釣りとキャンプが趣味の岩男さんは、車のATやCVCを製造するジヤトコでIT企画を担当している。同社では、プロ開発・市民開発でアプリを作成し、すべてのデータを基盤となるkintoneに集約している。今回はその中の設計文書管理システムにフォーカスを当てる。

 kintoneの設計文書管理システムには、100万の文書、1000万以上のファイルが登録されている。20年来使っていたシステムをkintoneで安価に実現したわけだが、困ったのはフィルタ機能の制限があること。具体的には英数字の一部でフィルタできないため、英数字の一部で検索できないため、前述した意味ありコードを相性がよくない。

 たとえば、『XBF』で図面を検索しても検索できない。しかも、ヘビーユーザーからはもっと細かい条件でフィルターをかけたいと言われていたた。たとえば、「M6で終わる型番」「JTTで始まり、途中でハイフンが入る」といったフィルタがkintoneでは利用できない。「これを解決しないと、『データがあっても使いづらい』『やっぱりkintoneなんてダメなんだ』と言われてしまいます。これだとkintoneの適用範囲が拡げられません」と岩男さんは指摘する。

フィルタ機能の制限で意味あるコードがうまく探せない

 ここで岩男さんが注目したのは、パターンを逃さない正規表現だ。簡単に言えば、並び方の決まりを使って、文字を見つける方法で、これをkintoneに実装した。岩男さんは20万件近いレコードから、「XVZで終わる型番」をフィルタするデモを披露する。

 仕組みとしては、まず図面アプリのデータをJSON化・圧縮して「検索データアプリ」に登録する。フィルタ時、取得されたデータをPCのメモリに保持し、これをJavaScriptでフィルタをかけ、取り出したレコード番号でkintoneフィルタをかけて、再表示する。「Excelで高速にフィルタをかけられるのと同じ。PCのハードウェア進化で実現できる。要は改善アイデアは身近にある」と岩男さんはアピールする。

正規表現の検索を実現する仕組み

 この方法であれば、どんなパターン検索も高速に処理できるが、正規表現は難しい。そのため、正規表現はヘビーユーザーに使ってもらい、通常のユーザーはフィルタのTIPSを用意したり、生成AIで正規表現を作ってもらうのもあり。実際、この仕組みを岩男さんは生成AIによるバイブコーディングで実現した。実装時間は3時間だ。

 最後、岩男さんは、「私はコーディングが大好きなITエンジニア。エンジニアだからこそ、コードを適切に評価できます。生成AIを開発要員として採用し、意味あるコード対応のような悩みを、あなたのアイデアで解決していきましょう」と結んだ。

バイブコーディングにより、アイデアを3時間で実現

実用度の高かった今年のカスタマイズコンテストを制するのは?

 7組の発表が無事終了したところで、聴衆による審査。「kintoneの可能性が広がると思ったチーム」「もっとも技術的に尖っていたチーム」「一番面白く、わくわくしたチーム」の3つを採点基準で審査が行なわれた。審査員の1人となったサイボウズの青野慶久社長も「今回は実用的なものの多かったので、すべて使ってみたいなと思いました。その中で唯一のキワモノは宇宙(笑)。VRで飛んでみたいなと思いました」とコメントする。

コメントするサイボウズの青野慶久社長

 そして今回のチャンピオンは、その「kintoneで宇宙を作ってみた」のコムデック西道さんに。「みなさんのkintoneの利用が少しでもワクワクするようになれば」とコメントした。生成AIの活用も多く、例年と比較しても実用度の高かった今回のkintone hackだが、チャンピオンに選ばれたのが遊び心のあった西道さんのセッション。ただ実用的なものだけを求めているわけではないkintoneユーザーの期待や願望を表しているように思えた。

実用度の高かった今年のkintone hack 2025をやりきった7組

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