業務を変えるkintoneユーザー事例 第294回
成功の鍵はツール導入前から ユーザーと情シスの両輪で進めた市民開発の歩み
シェア100%の重圧を跳ね除けろ 味の素ファインテクノの業務改善は、kintoneで加速した
2025年10月15日 11時00分更新
ツールを超えた業務改善の本質と、多様な働き方を支えるkintoneの可能性
多くのアプリの開発を通じて、大野氏が学んだ気づきは、「業務改善の目的に正面から向き合い、業務を磨き続けること」だという。過去には、kintoneというツール、つまり手段にこだわり、失敗した経験もあった。しかし、目的をしっかりと見つめ、それを磨き続けることで、kintoneが得意な改善や他のツールの特性が理解でき、業務改善がもっと楽しくなる。
大野氏は、業務改善のあり方を「きこりのジレンマ」に例える。目先の仕事に追われ、斧を研ぐことができないきこりの話だ。膨大な業務をこなさなければならない時こそ、一度立ち止まってしっかりと斧を研ぐ、つまり業務改善を行うことが重要になる。kintoneは気づいたことをその場で簡単に修正できるため、斧を研ぐための強力なツールとなる。
こうしたkintoneの「業務に寄り添う」力が、思わぬ場所でも発揮されている。味の素グループには、知的障害のある社員に活躍の場を提供する「味の素みらい社」という会社がある。
そこで、kintoneの直感的に操作できる特徴を活かし、膨大な過去データをアプリに移行する作業を、新たな活躍の場として用意した。「kintoneは働くすべての人たちの多様性を生かし、働き方の世界を変えていく力を持っている」と大野氏。
たった4人で始まったOE推進活動から10年。現在ではその100倍となる全社員400人が、日々の業務にkintoneを活用している。2025年2月には、同社の取り組みが味の素グループの「市民開発アワード」を受賞した。
大野氏は、「kintoneから学んだのは、アプリのテクニックではなく、『業務プロセスに正面から向き合って磨き続ける』こと。皆さんのそれぞれの業務フローにも、それぞれの最適な道筋があると思います」と呼びかけた。
セッション後、サイボウズの柴田祐吾氏から大野氏に質問が投げかけられた。
柴田氏:業務改善の肝となる「オペレーショナルエクセレンス」の文化を広げるためにされた工夫を教えてください。
大野氏:業務改善を対外的に見える化して、具体的な改善効果を見せることが重要でした。そうすると、隣の部署が「なんか面白そうなことやってるね」と興味を持ち、どんどん周りを巻き込めました。
柴田氏:プレゼンで「挫折や失敗はつきもの」とありましたが、印象的な失敗談や、それをどう乗り越えたかを聞かせてください。
大野氏:kintoneを楽しく触っていた初期に、何も考えずにフィールドコードを好き勝手に作っていました。後になって情シスに指摘され、ちくちくと直した記憶があります。
柴田氏:それ以降、ルールやガバナンスをどのように整備されたのでしょうか。
大野氏:kintone活用推進会という勉強会にて、情シスがルールを定めたことで、適切に運営できるように変わりました。

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