本記事はFIXERが提供する「cloud.config Tech Blog」に掲載された「当たり前を疑う勇気|AI時代の真の業務改善とは」を再編集したものです。
GeminiのNano Banana機能を使って証明写真生成アプリを作る開発者を見かけました。技術的には確かに面白い試みです。AIで背景を統一し、表情を調整し、規格に合った完璧な証明写真を生成する。
しかし、こうした技術的な進歩を見ていると、AIで簡単に作れるようになったからこそ、もっと根本的な疑問が浮かびます。
「そもそも証明写真は、本当に必要なのでしょうか?」
この疑問は、AI導入全般にも当てはまる重要な視点だと思います。
技術で効率化する前に、その業務自体の必要性を問い直すことの大切さです。
実際に私自身、以前こんな経験をしました。
省庁時代の小さな試み
省庁時代に採用関連業務を担当したことがありました。
人事専門ではない立場だったからこそ、素朴な疑問を持てたのかもしれません。
「証明写真って、本当に必要なんだろうか?」
思い切って自分の担当の範囲で見直しを実施してみました。
応募者の中には戸惑いを感じる方もいらっしゃいましたが、実際の選考業務には特に支障はありませんでした。
この小さな体験から感じたのは、「当たり前とされていることでも、一度立ち止まって必要性を問うことの大切さ」です。
現在、AI導入を検討する際にも、同じことが言えるのではないでしょうか。
AI導入でよく見る思考パターン
多くの組織で見られるパターンがあります。
例えば、誰も読まない報告書があったとします。すると「AIで自動生成しましょう」という提案が出る。議論のない定例会議があれば「AIで議事録を自動化しましょう」となる。形だけの承認作業には「AI審査システムを導入しましょう」と続きます。
しかし、このプロセスには重要な検証ステップが抜けています。「その業務自体が本当に必要か」を確認していないのです。
AI導入支援をしているからこそ見える真実
AI導入支援をしているからこそ、痛感することがあります。
技術先行のリスク
・不要な業務を効率化しても、根本的な改善にならない
・「AI化したから正しい業務」という錯覚を生む可能性
・本当に価値のある業務への集中を阻害する恐れ
「技術的に可能」と「やるべき」は全く別の問題だということです。
組織変革の現実と向き合う
私の業務見直しの取り組みは、一部では成功しましたが組織全体には広がりませんでした。
変革が進まない理由
・「前例がない」ことへの不安
・「何か問題が起きたら」という慎重さ
・「他がやっていないなら」という横並び意識
小さな変革でも、最初の一歩を踏み出すには勇気が必要です。
しかし、これこそがAI導入を成功させるカギでもあります。
技術的な解決策だけでなく、組織の心理的な課題に向き合うことが重要です。
まとめ
どんなに優れたAI技術でも、必要性が不明確な業務を効率化するだけでは本質的な改善になりません。
まず「その業務は本当に必要か」を問うことから始めてみましょう。
渥美洋行/FIXER
2025年9月 株式会社FIXERに入社。入社のきっかけはデッカイギとデッカイジャーです。元国家公務員、国や自治体のみなさまのAI活用を支援しています。


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