業務を変えるkintoneユーザー事例 第292回
アドウェイズが挑んだ年600時間の業務削減とエラー・行動ログの解析
“なんとなく”の現場改善、もうやめません? kintone運用6年で辿りついた自動化と可視化
2025年10月09日 10時00分更新
「数字は嘘をつかない」 アプリ可視化でみえた異常事態と思い込み
ここでテーマが変わり、kintoneアプリの可視化について語られた。
上森氏は、「皆さん、kintoneの改善を、『あそこの部署が大変そう』とか、『この機能使いにくいんだろうな』とか、“なんとなく”の肌感覚でやっていないでしょうか。このなんとなくの改善をそろそろ終わりにしませんか」と呼びかける。
加えて、現場の声はもちろん重要だが、それはあくまでユーザーも気づいている表層的な不満だという。本当に怖いのは、水面下に潜んでいる“ユーザーも気が付いていない不満”であり、ここにこそ本質的な課題が潜んでいる。そこで上森氏が注目したのが、事実として得られるエラーやログなどの“数値”だ。
これらの数値を可視化するために、Googleが提供するツール群を利用している。ひとつは、基本無料のBIツールである「Looker Studio」だ。kintoneの監査ログを同ツールで可視化することで、アプリごとのエラー件数やその内容を一覧で把握できるようにした。すると、ある特定のレポートタスク管理アプリに、全エラーの約半数が集中していることが判明。エラーの原因を精査して対応したところ、全体のエラー件数は大幅に削減された。
もうひとつ利用したツールは、ユーザーの行動ログを詳細に把握できる「GA4(Google Analytics 4)」だ。同ツールによって、kintone上のアプリの利用時間や表示回数を計測し、ダッシュボードで可視化した。GA4で明らかになったのは、600を超えるアプリがある中で、たったひとつのアプリに全利用時間の4分の1以上が集中していたことだ。上森氏は、この事実を「結構、異常なこと」と捉え、現在、このアプリの利用時間を30%削減するという目標で改善に取り組んでいる。
こうしてkintoneを分析する中で、思い込みが覆される発見もあった。これまでアプリの改善要望は営業部門から多く寄せられ、だからこそ営業部門が最もkintoneを使っていると想像していた。しかし、データでは、バックオフィス部門の方が圧倒的に利用時間が長かったという。現在、その要因を分析しており、業務効率化に反映していく予定だ。
上森氏は、今後は、データから得られる客観的な事実と、現場から吸い上げる定性的な声という2軸によって、「すげー」を生み出し続ける改善サイクルを実現したいと展望を語った。「皆さんに、私でもできるかも、といった「なにこれすげー」の小さな種が生まれていると嬉しいです。その種を持ち帰っていただき、職場で「なにこれすげーこんなのはじめて」という大きな花を咲かせください」(上森氏)
セッション後、サイボウズの柴田氏から上森氏に質問が投げかけられた
柴田氏:「現場が主体的に声を上げてくれない」という管理者の悩みをよく聞きます。コミュニケーションで工夫されている点や、声が上がるような仕組みはありますか。
上森氏:現場から直接聞くだけでなく、半年に1回、社内のkintoneユーザーにアンケートを実施しています。あとは、PO(プロダクトオーナー)が社内の様々な課題を吸い上げてきて、その課題を基に、私たちが開発するという流れをとっています。
柴田氏:発表の中にあったダッシュボードを作ろうとしたきっかけは何でしょうか。
上森氏:結局、現場の声だけで課題を吸い上げるには限界があると感じていました。「数字は嘘をつかない」ですし、データを可視化することで見える課題もあるのではという考えから始めています。

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