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業務を変えるkintoneユーザー事例 第291回

驚くほど導入がスムーズだった話

kintone導入、失敗しませんでした 先駆者がいたので、kintone留学や伴走支援まで用意され、至れり尽くせり

2025年10月06日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●サイボウズ

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「なんてスパルタなんでしょう」

 平吾氏は、トヨクモの「Toyokumo kintoneApp」「kViewer」「FormBridge」などを使ってアプリを作成し、リニューアル中だった介護施設と保育園のWebサイトから申し込みが行えるようにしたという。Webサイトの開発と並行して、おおむね1ヶ月くらいで実現したという。

トヨクモ製品を活用して、Webサイトからの申し込みを実現した

 kinbozuの無茶ぶりはまだ続く。「業務改善するなら、データはkintoneに集約すべき」という瀧村氏の意見に、平吾氏が「どうやって作ればいいですか?」と聞いたところ、「ブログを見て学んでください」とのつれない返事。「なんてスパルタなんでしょう」と思った平吾氏だが、今の時代ブログやYouTubeを見たり、アプリの作り方はいくらでも学べる。ベンダーのチャットサポートを使えば、困りごとにも対応できることがわかった。

 学び方を学んだ平吾氏が、こうしてアプリを作っていくと、社内にある変化が起こった。現場から「アンケートをアプリ化したい」など、アプリ化や業務改善の相談が持ちかけられるようになったのだ。実際、非常に煩雑だったアンケートの収集も、FormBridgeを用いたアプリで簡単に実現できるようになった。

 こうしてアプリを作っていくと、「わたしできるやん」という気持ちが生まれてしまう。しかし、平吾氏は「天狗になるな」と戒める。「開発者はアプリに実装できることを提案し、ルールや捜査範囲は現場に決めてもらうようにしました。この線引きを設けたことで、現場もアプリ開発を自分ごととして捉えてくれました」と平吾氏は振り返る。

kintone導入は失敗しなかった 先駆者がいたからこそうまくいった

 結果、明海興産のkintone導入は失敗しなかった。「失敗談とか話せたらよかったんですけど、なんだかんだうまく導入できちゃったということなんです」と平吾氏は語る。とはいえ、気をつけるポイントはあった。

うちの会社、失敗しないので

 1つ目は「現場理解から始める」こと。「耳にたこかもしれないが、その業務がどんな流れで進んでいるのか。点ではなく、線で捉える。どんな人がどのように関わっているのかを俯瞰することがアプリ開発者には求められていると思います」と平吾氏は指摘する。

 2つ目は「段階的に導入する」こと。「明海グループですでに導入されていたからこそ、全社導入につなげることができた。明海興産でも、特定の部署から始め、うまくいったら横につなげていく。段階的にアプリ開発を拡げて行きました」と平吾氏。

 3つ目は「伴走する支援」だ。「正論を言いたくなる。なんでこうしないんですか? こうやったらいいじゃないですか。でも現場はこんな正論は求めていません。誰よりも現場がわかっているからです」と平吾氏は語る。それよりもアプリ開発者は現場に寄り添い、困りごとを解消することに専念すべき。これが平吾氏が考える3つのポイントだ。

 「いろいろエラそうなことを言っていますが、先駆者がいたからこそうまくいった」と平吾氏は語る。明海グループで地ならしをしてくれたからこそ、明海興産のkintone導入もうまくいった。「たこも同じです。大昔の日本人が、このビジュアルに負けず、食べたからこそ、今日の私たちがおいしく明石焼きやたこ焼きが食べれるというわけなんです」(平吾氏)。

先駆者がいたからこそうまくいった

で、平吾氏の仕事を楽になったのか?

 とはいえ、明海興産にはラスボスとも言える請求書や契約書が残っている。長らく一人でアプリを開発してきた平吾氏だが、そろそろ力尽きそう……ということで、kintoneの担当者が2名増員になった。今後は3人体制でアプリ開発を進めることになるという。

 この3人に共通しているのは、「IT経験や知識がない」ということだ。「おわかりの通り、ITのIの字を知らない人でもアプリ作れます。そして、弊社のような多角経営の会社はシステムも、パソコンも、組織もバラバラだけど、そんな環境でも社内DXはできる。kintoneのように柔軟なアプリ開発が可能だからこそ実現する」と平吾氏は語る。

 ここまでやってきて、平吾氏の仕事は楽になったのか? 「なってません!」と平吾氏は力強く言い切る。いろいろな部署や組織がkintoneで業務改善したいと要望を出してくるようになり、受け側としてパンクしそうというのが、その背景だ。「『アプリ開発者あるある』なんですが、他の人の業務は楽になっていくのに、自分の業務は楽にならないのか。不思議でなりません(笑)。逆にみなさんからコツを聞きたいと思っています」と平吾氏はまとめた。

周りの仕事は楽になるが、平吾氏は楽になってない

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