業務を変えるkintoneユーザー事例 第291回
驚くほど導入がスムーズだった話
kintone導入、失敗しませんでした 先駆者がいたので、kintone留学や伴走支援まで用意され、至れり尽くせり
2025年10月06日 09時00分更新
「kintone導入は失敗しなかったんです」。失敗談や苦労話の多いkintone hiveでは珍しい驚くほど導入がスムーズだった話。グループ会社ではトップが音頭をとって、kintoneが導入済み。2ヶ月間kintoneを学ぶ「kintone留学」や、ちょっとスパルタな伴走支援まで用意されていて、至れり尽くせり。
kintone hive 2025 osakaの5番手は、明海興産のIT部門 課長の平吾尚子氏。先駆者がいると、あとからの導入はこんなに楽になるという話だ。
電話大好き、Excel大好き、紙大好き そろそろDX始めようか
神戸に本社を置く明海グループは、海運事業をはじめグループ全体で不動産事業、介護事業、保育事業、中華レストランやホテルの運営などを手がける。登壇した平吾尚子氏は、グループ会社の明海興産のIT部門 課長で、趣味はたこ釣り。「魚釣りは一切しません。シーズンになったら、たこを釣る。そんな生活をかれこれ10年近く続けています」という。
そんな平吾氏が所属する明海興産の課題は、もちろんレガシーな業務。「みなさんと同じです。電話大好き、Excel大好き、紙大好き」というもの。一次情報は電話で届き、Excelを作り、印刷して保管するのが好き。そんな三拍子揃った会社がkintoneを使ってどうなったのか? 課題は同じだが、切り口が他社と違うという。これが「kintone留学」だ。
kintone留学は、サイボウズにkintoneを学ぶのでも、セミナーを受講するのでもない。「今の業務から外れ、身軽な状態になって、東京のkintone開発部署に出張し、kintoneをひたすら学ぶ明海グループのkintone活用拡充の秘策」と平吾氏は説明する。
もともと明海グループはkintoneを導入済み。ホテル事業や海運事業ですでに多くのアプリを開発している。グループ会社のトップがkintoneの全社導入を推進していたことで、グループ会社の明海興産に「そろそろアナログを卒業し、DX始めようや」ということでkintone留学のお鉢が回ってきたわけだ。
とはいえ、指名された平吾氏にとってみれば、「青天の霹靂」(平吾氏)だった。もともと平吾氏は15年近く保育現場で働いており、明海興産に入社する前はExcelを触ったこともなかったという。「kintone留学前はくじら保育園を運営する保育事業部の課長でした」(平吾氏)とのこと。「まさか自分がkintone留学とは?」という思いだっただろう。
“厳しい”留学生活を終えて、新設のIT部門へ からの無茶ぶり
さて、こうしてスタートした2ヶ月に及ぶ“厳しい”留学。「毎日毎日、ホテル暮らしで美味しいものを食べ、胃袋に厳しい。体重に厳しい。そんな留学生活を送ってきました(笑)」と平吾氏は振り返る。
もちろん、食べてばかりなだけではない。ウェビナー、セミナーを片っ端から受けながら、介護事業部から「こういうアプリ作ってよ」というオーダーも受けていた。「インプットしながら、アウトプットする。そんな二軸で留学生活を進めていました」と平吾氏は振り返る。
平吾氏が恵まれていたのは、周りがkintoneアプリ開発の経験者だらけだったこと。「初めてのアプリ開発はうまくいきません。だいたい失敗するものです。でも、私の場合は周りの人にどうやって作ればいいかを周りに相談できる環境が整えられていた」という。加えて、アールスリーインスティテュートの「gusuku Boostone(現:キミノマホロ)」も活用しており、同僚にわからなくても、専門家の知見を得られる万全のバックアップ状態があった。
2ヶ月の留学を終え、宿題となっていたアプリ開発も完遂し、明海興産に戻ってきた平吾氏。保育事業部の席はすでになかったが、代わりにIT部門が新設され、平吾氏はそこの課長に抜擢されることになった。そこで出会ったのが、kintoneの業務改善コンサルを手がけるKinbozuの瀧村氏だ。
瀧村氏は豊富な知見を持つkintoneのエバンジェリスト。「アプリ開発は全部kinbozuさんがやってくれる」と考えていた平吾氏に対して、瀧村氏は「さあ、見学アプリ作ってください」と第一声。「勉強したし、作れるでしょ」と語る瀧村氏は、どう見ても9割SNSに専念し、kintoneの業務は1割。仕方がないので、平吾氏は今まで電話オンリーだった介護現場の見学や面会申し込みをアプリ化することからスタートした。

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