第8回 シン・IoTの教室:ビジネスに活きる つながるモノの世界
BtoC/BtoBの製品販売ビジネスを、サブスク型ビジネスに転換/拡大するために
モノ(製品)を通じたサブスク型ビジネスの実現 鍵を握るのは「IoT」の要素
近年、急速に一般化したビジネスモデルが「サブスクリプション型ビジネス」です。日常会話の中でふつうに“サブスク”という言葉が使われるようになり、実際に皆さんも何らかのサブスクリプション型サービスを契約、利用しているのではないかと思います。
サブスクリプション型ビジネスと聞いてまず思いつくのは、デジタルコンテンツ(映画や音楽、コミックなど)の定額視聴サービス、食品/日用品の定期宅配サービスといった、消費者向け(BtoC)ビジネスでしょう。ただし、企業向け(BtoB)ビジネスの世界でも、たとえば業務SaaSのようなサブスクリプション型サービスが登場しています。
サブスクリプション型サービスでは、初期導入コストを抑え、そのぶん長期的に少額の費用を支払っていく形となります。提供する事業者側から見ると、まずは「継続的な収益確保」が大きなメリットです。

従来の製品販売型ビジネスにIoTの要素を追加する/組み込むことで、どのようにサブスクリプション型ビジネスが実現するのでしょうか。まずは第1回記事で挙げた、IoTデバイスだからこそできることを振り返ってみます。
■IoTデバイス「だからこそ」できることの例:
・デバイスデータの一元的な収集、蓄積
・リアルタイムでのデータ分析、状態把握、自動制御
・リモートからの監視や操作
・多数のデバイスの一括管理、更新(アップデート)
こうした特徴が、サブスクリプション型ビジネスにどう生かせるのでしょうか。まずは代表的な例を挙げてみます。
■使用量に基づく「従量課金プラン」の実現
製品をIoT化することで、納品したあとも継続的に使用状況データを取得できます。それを使い、使用量をリモートから正確に把握することで、売り切り型ではない従量課金型プランが実現可能です。顧客にとっては、初期導入コストを抑えることができる、その時々の需要に応じてコストが抑えられるといったメリットがあります。
■高精度な予防保守サービス
BtoB領域の産業機器や業務車両などは、突然の故障が発生すると業務がストップしてしまい、大きな損害につながることがあります。それを防ぐために、継続的にIoTデータを取得/分析して、故障のタイミングを高精度に予測することで、故障発生の前にメンテナンスを行う予防保守サービスが実現できます。修理部品の手配があらかじめ行える点もメリットです。
ただし、上述した例は従来型ビジネスの課題を“少しだけ”改善するものであり、大きな進化とは呼べないかもしれません。さらなるビジネスの拡大を考えるならば、付加価値サービスの提供を検討するべきでしょう。たとえばこういった例があります。
■データ可視化/分析サービス
製品から取得できるデータをユーザー自身で活用できるよう、クラウド上でデータを蓄積/可視化/分析できるサービスを提供することができます。
■使用状況のコンサルティングサービス
製品の使用状況をデータ分析したうえで、そのユーザーに適した、無駄のない/コストが抑えられる製品の使用方法などをコンサルティングしていくことが可能です。
さらに将来的には、生成AIやAIエージェントの技術を活用して、より高度なデータの可視化や分析、自動制御/支援といった付加価値サービスも実現可能になるかもしれません。
* * *
サブスクリプション型ビジネスを成功させる重要なポイントは「継続利用率の向上」です。そして長期利用顧客を維持する/増やすためには、顧客の課題をしっかりと把握し、顧客視点で製品/サービスの改善を考えることでしょう。
そのために、製品販売後(納入後)も“使用状況データ”のかたちでフィードバックが得られるIoT製品は、サブスクリプション型ビジネスにとってメリットのあるものだと考えます。
この連載の記事
-
第10回
デジタル
IoTの“エッジ”とは何か? なぜエッジでのデータ処理が必要なのか? -
第9回
デジタル
なぜIoTビジネスは「現場」から生まれるのか 現実世界をデータ化し、制御できることの価値 -
第7回
デジタル
「後付けIoT」手法が適しているケースとは? 過去の事例から知る -
第6回
デジタル
ビジネスとIoTが出会うとき ― 適しているのは「組み込み」か「後付け」か? -
第5回
デジタル
IoT設計/開発のセキュリティガイド おすすめの2つをどう「使う」べきか -
第4回
デジタル
IoT設計/開発では特に大切な「セキュアバイデザイン」の考え方 -
第3回
デジタル
IoTシステムがサイバー攻撃に遭ったら? 提供側のビジネスリスクを考える -
第2回
デジタル
デバイスだけなら「ただのモノ」 IoTシステムは“3つの要素”で成り立つ -
第1回
デジタル
IoTは「モノのインターネット」ではない… だったら何なのか? -
デジタル
「エッジAI」がIoTシステムの適用範囲/ユースケースを拡大する
この記事の編集者は以下の記事もオススメしています
-
sponsored
IoT電球を起点にしたヤマト運輸の見守りサービスとSORACOM -
sponsored
サウナのある生活にIoTができること 「ONE SAUNA」とSORACOM
