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業務効率化にとどまらない改革を目指し、Oracleのクラウド型ERPを採用

「経理の質は経営の質を決める」 SMBCグループは経理業務改革で“90%自動化”目指す

2025年09月22日 09時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG、SMBCグループ)が、クラウド型ERP(SaaS ERP)の「Oracle Fusion Cloud ERP」を導入し、経理業務の改革を進めている。そのスコープは単なる業務の合理化にとどまらない。「経理の質は経営の質を決める。我々が進めているのは『経営戦略としての経理業務改革』だ」と語るのは、三井住友フィナンシャルグループ 経理業務部の山本慶氏。Oracleが8月末に開催したイベントで、取り組みの狙い、内容、効果などについて話した。

三井住友フィナンシャルグループ 経理業務部の山本慶氏

「経理業務は経営判断の基盤」、3つの柱で業務改革を進める

 SMBCグループが、「経理業務改革」を目的としてOracle Cloud ERPの導入を決定したのは、2021年のことだ。2023年4月から段階的な導入を始め、現在、すでに一定の導入成果を得るに至っている。

 山本氏は「我々が実行してきたことは単なる業務の効率化ではない。経理業務を『経営判断の基盤』と定義し、全社の意思決定力を飛躍的に高めることを目指した」と言い切る。

 一般に、経理はバックオフィス業務と捉えられがちだ。しかし企業の意思決定は、経理業務により出力される数字に基づいて行われる。そのため「『経理の質が経営の質を決める』と言っても過言ではない」と山本氏は強調し、そうした観点から経理業務の改革を進めてきたと語る。

 具体的には、SMBCグループでは次の「3つの柱」を立てて、グループ全体の企業価値向上を早期に実現することを目指した。

■(1)業務の標準化と集約による効率化
 従来は拠点や子会社ごとにバラバラだった経理プロセスを共通化、標準化。システムコストの低減、人的資源の再配置を行う

■(2)グループ経営を進化させるための経理の情報統制
 財務会計、管理会計の両方でデータの精度と即時性を高め、グループ経営の舵取りに必要な共通言語として機能することで経営基盤となる。これにより、個社最適からグループ最適へ

■(3)従業員のエンゲージメント向上
 テクノロジー活用だけでは完結せず、現場の納得感、当事者意識、オーナーシップに基づいて改革を進める

SMBCグループにおける経理業務改革の意義

フィット・ツー・スタンダードは「妥協ではなく戦略」

 3つの柱を実現するにあたって、Oracle Cloud ERPの導入は戦略的な役割を担ったようだ。

 Oracle Cloud ERPはSaaSであり、その導入に際しては「フィット・ツー・スタンダード」が求められる。日本企業の中には、フィット・ツー・スタンダードが自社の業務に合わないとして敬遠する向きもあるが、山本氏は「SMBCグループにとって、フィット・ツー・スタンダードは妥協ではなく戦略」だと言い切る。

 Oracleに限った話ではないが、SaaSのメリットは、業界のベストプラクティスや最新技術といった“良いもの”を、速く、正しく取り入れることができる点だ。山本氏は「すべてをゼロから作るのではなく、世界中の知恵と工夫が詰まった標準モジュールを、セキュリティの高い基盤で、迅速に導入可能にするのがOralce Cloud ERPだと判断した」と説明する。

 「Oracle Cloud ERPが提供するスタンダードを積極的に受け入れ、活用することで、経理業務の標準化を進めることができる。その上で、SMBCグループの強みである、本質を見極める力、スピード、実現力を組み合わせることで、大きな成果を早期に実現できると考えた」(山本氏)

フィット・ツー・スタンダードによる「SaaSの強み」と、SMBCグループの強みを掛け合わせる

 SMBCグループでは、Oracle Cloud ERPだけでなくRPAも導入しており、これに合わせて既存業務の分類も行った。これまではすべて人が行っていたところを、申請や承認、仕訳処理、支払い実行といった定型業務は、RPAなどを活用して自動化を推進。これにより、全業務の4分の3、75%を自動化することに成功したという。今後はさらに生成AI技術も取り入れ、今年度中には「自動化率90%以上を目指す」と語った。

 ただし、ここで山本氏が強調したのは、「自動化は『量』ではなく『質』が大切である」というポイントだ。「単純な自動化にとどまらず、プロセス全体を再設計し、『人が判断すべき箇所』と『AIに任せるべき箇所』を明確にする。これにより、ROIの最大化が実現できる」(山本氏)。

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