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AIエージェントの強化、セキュリティ強化の「Box Shield Pro」など ― 「BoxWorks 2025」レポート

Boxが年次イベントで多数の新発表 非構造化データ活用の課題を生成AIで解決

2025年09月17日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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Boxの年次カンファレンス「BoxWorks 2025」が開催された

 Boxが、2025年9月10日からの3日間、年次カンファレンス「BoxWorks 2025」を本拠地である米国サンフランシスコで開催した。11日の基調講演では、共同創業者でCEOのアーロン・レヴィ氏ら幹部が登場し、AI時代に向けた戦略を語った。標榜するのは「エンタープライズ向けのインテリジェントなコンテンツのためのプラットフォーム」だ。

Box 共同創業者 兼 CEOのアーロン・レヴィ(Aaron Levie)氏

AI時代のBoxの中核となる「Box AI Platform」とは

 レヴィ氏がBoxを共同創業したのは、20年前の2005年。それ以来、エンタープライズ向けのクラウドストレージサービス(SaaS)として、セキュリティなどの機能を強化しながら発展してきた。現在は12万社を超える企業顧客を抱えており、そこにはキヤノン、NEC、日本郵政など、2万社を超える日本企業も含まれる。

 Boxのミッションは「世界のコラボレーションを強化すること」だとレヴィ氏は語る。クラウドストレージから「コンテンツクラウド」へと進化したBoxは、さらに2024年、AIの時代に向けて「インテリジェントなコンテンツ管理プラットフォーム」という新たな目標を掲げた。現在、生成AIから「AIエージェント」へとIT業界のトレンドが移り変わるなかで、BoxもAIエージェントの提供を進めている。

 「われわれはこれから、バックグラウンドで動作する大量のAIエージェントを展開していく。それにより、多くの作業がエージェントに任されることになるだろう。自律的に、協調しながら作業を進めるエージェントが、与えられた目標やタスクの完了を目指す世界に近づく。皆さんがなすべき仕事は、これまでとはまったく違うものになるだろう」(レヴィ氏)

 生成AIによる個人レベルでの生産性向上が、エージェントによって組織レベルに拡張されるとどうなるか。特定の課題に割り当てられる人的リソースの制約がなくなるため、さらに大きな改善が見込めるだろう、とレヴィ氏は語る。

 さらにレヴィ氏は、企業が保有するデータの90%を占めると言われる「非構造化データ」が活用されていない現状も指摘する。

 たとえば、保険会社の保険金請求プロセスでは、顧客から預かる情報のほとんどが非構造化データだという。従来は、そうした非構造化データを人間が読み解き、システムに入力できる構造化データに変換したうえで作業を進めていたが、生成AIはそれを“読み解ける”能力を持つ。レヴィ氏は「AIは、これまで未活用のままになっていた非構造化データを解放する鍵を握っている」と述べ、作業時間の大きな短縮が実現すると説明する。

 ただし、こうしたAIエージェントの環境を実現するためには、AIが効率的かつセキュアに参照できるデータ基盤を整備する必要がある。レヴィ氏は、データがレガシーシステム、文書管理リポジトリ、クラウドのポイントソリューション、コラボレーション環境などに分散している状況は、「AI時代には企業の存続に関わる重大な問題だ」と指摘する。データのサイロ化によって、エージェントどうしが連携できない問題も起こりうる。

 この問題に対して、Boxが示す回答が、コンテンツプラットフォームにインテリジェントな管理機能を組み込んだ「Box AI Platform」だ。

 「プラットフォームの中心に、単一の情報源としてのコンテンツを置く。ファイルリポジトリは1つ、アクセス制御のポリシーセットも1つ、ストレージレイヤーも1つだ。これにより、アプリケーションと機能を向けることができる」(レヴィ氏)

 このプラットフォームに関して、レヴィ氏が特に強調したのは「サードパーティ製アプリケーションとの統合戦略」である。Salesforce、Slack、Microsoft Teams、ServiceNowなど、幅広い連携機能を提供している。

 さらに、Box APIや「Box MCP Server」(後述)なども利用して、外部の開発者ツールやAIツールとの相互運用性を確保する。こうした仕組みにより、企業は既存のテクノロジースタックを維持しながら、BoxのAI機能を活用できると説明する。

 また、BoxでCTOを務めるベン・クス氏は、Box AI Platformのアーキテクチャは、「コンテンツ管理プラットフォーム」「エンタープライズグレードAI」「AI向けコンテンツ基盤」といったレイヤー構造になっていると説明する。これにより、たとえばLLMについても、GPT、Claude、Gemini、Llamaなど最新のフロンティアモデルをサポートしつつ、ユーザーが自由に選択できる環境を提供する。

 なお、プラットフォームの最上位レイヤーにある「エージェント型プラットフォーム」では、非構造データの構造化、情報検索、研究といった、複雑なタスクを実行できるという。「Box AI Platformは企業の非構造化データに対してAIを適用できるエンタープライズ級のソリューションだ」とクス氏は述べた。

「Box AI Platform」のアーキテクチャ図

Box CTOのベン・クス(Ben Kus)氏

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