業務を変えるkintoneユーザー事例 第285回
教育研修事業部がkintoneと歩んだ業務推進と人材育成の道のり
“kintone嫌い”の営業担当が改革の旗手に マイナビが乗り越えた新規事業の「成長痛」
2025年09月17日 12時00分更新
売れば売るほど忙殺される状況をコミュニケーションの高速化で解決
こうして事業拡大期を乗り切った教育研修事業部。2020年以降はコロナ禍による“事業変革期”を迎え、労働集約型ビジネスの構造的な問題が再び持ち上がった。売上が増えれば増えるほど、受注後の後工程業務が膨れ上がり、特に業務負荷が高いハイパフォーマーの離職が相次いだ。
この課題を解決するため、受注後の営業業務フローの改善に取り組んだ。研修講師はすべて外部のパートナーに委託しているため、アライアンスパートナーとの情報共有インフラの構築が鍵となった。
まずは、研修の受注から納品までの進行状況を一元管理する「納品進行」アプリを作成。いつどこで何の研修を実施するのかといった情報やテキストファイルなどを集約し、担当者以外でも状況を把握できるようにした。そして、この納品進行アプリの情報を、kintoneアカウントを持たない外部パートナーと共有するために「じぶんページ」のプラグインを活用している。
「じぶんページを通じて外部パートナーとファイルのやりとりをし、最新情報を確認してもらっています。コメントのやり取りもでき、コミュニケーション方法もメールからライトなチャット形式に変更できました」(前廣氏)
納品に関する情報へのアクセス性を高めた結果、コミュニケーションが高速化され、営業担当者が納品業務をすべて抱え込まずに分業できる体制が整いつつあるという。
事業と一緒に人も育てる、kintone内製化がもたらした組織の変革
こうして様々な成長痛をkintoneと共に乗り越えてきた教育研修事業部だが、その最大の成果は「人の成長」にあると振り返る。kintone導入当初は五十嵐氏が一人で黙々とアプリを作成していたが、「みんなで業務改善しよう」というミッションを明確に掲げたことで、メンバーが事業全体の課題だと捉え、自律的に改善を推進するようになったという。
その好例が前廣氏の変化だ。営業部門からの異動からイントラネット構築のリーダーに指名された前廣氏は、当初はkintoneに対してネガティブな印象を持っていたと告白する。
「営業部門にいた頃は、やれ活動を入力しなさい、案件を更新しなさいと言われて、『もうkintoneなんて見たくない』という状態でした。しかし、イントラを作り、やりたいことをひとつひとつ実現していくという体験を経て、kintoneの可能性に魅了されて、今は大好きになって、ここに立っています」(前廣氏)
この成功体験を機に、前廣氏はSFAやマスタの改修などでも中心的な役割を担う。時には誤って企業マスターをすべて削除してしまうトラブルも経験しながら、推進者として成長していった。当初は全員が文系出身者だったが、現在はシステムに明るい人材も加わり、業務改善専門の課を設置するまでに体制が強化された。そのおかげで、管理統制やドキュメント化も進み、属人化を防ぐ仕組みも整ってきた。
五十嵐氏は、「kintoneを通じて、事業だけでなく人も育っていきました。ITリテラシーの向上に加え、事業視点を持って業務改善を推進する人が育ったのは、kintoneならでは。メンバーで課題の特定から実装までを内製で進めたからこそです。kintoneの柔軟性を活用し、kintoneを使う人が育ったことで、成長痛を乗り越えることができました」と締めくくった。
セッション後には、サイボウズの柴田祐吾氏から両氏に質問が投げかけられた。
柴田氏:業務改善のミッションがなかなか浸透しないと悩むマネージャーは多いと思いますが、どのような工夫をされたのでしょうか。
五十嵐氏:kintoneに限らないですが、凡事徹底ですね。とにかく同じメッセージをしっかり言い続けることに尽きると思います。そして、進化したところをきちんと見つけることが大事だと思います。
柴田氏:前廣さんは元々営業だった方がいきなりイントラを作ることになって、どういったところから着手されたのでしょうか。
前廣氏:既に営業として欲しいものは頭の中にたくさんありましたので、先輩と一緒に整理しながら、kintoneでどう実現できるかを地道に調べたことが、kintoneの知識を伸ばすことにつながりました。

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