地元中小製造業のセキュリティ対策支援と同時に、地元デジタル人材の雇用拡大と育成を図る

“サイバーセキュリティの地産地消”目指せ フォーティネット×SYNCHROが山口県で新モデルに取り組む

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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山口発で“サイバーセキュリティの地産地消モデル”を確立する

 SYNCHROとフォーティネットジャパンの両社では、このサービスを通じて“サイバーセキュリティの地産地消”モデルの確立を目指しているという。まずは山口県内にフォーカスしてスタートするが、将来的にはこの“山口県発モデル”の他地域への展開も検討していく。

 フォーティネットジャパンの佐々木氏は、Yamaguchi Secure DX Coreの最終的な狙いは「山口県の地方創生」だとして、次のように説明した。

 「この取り組みの最終的な目的は、県内中小企業におけるセキュリティ対策の強化ではなく、そうした企業が“儲かる”仕組みを作ること。企業が利益を上げるためには、現在ではデジタルの活用が必須であり、そのためにはサイバーリスクもしっかり抑えていく必要がある。それを実現するエコシステムを、地元の人を中心として作っていきたい」(フォーティネット 佐々木氏)

Yamaguchi Secure DX Coreの目指す“理想像”

 山口県内の大学では、近年、サイバーセキュリティを学べる情報系学部/学科の設立が相次いでいる。また、他方では県の施策として、女性のデジタル人材育成に努めており、2023年からWebエンジニア育成スクール「WINgs(ウイングス)YAMAGUCHI」を開講している。

 ただし、山口県の産業構造は製造業の比率が高く、デジタルスキルを持つ若手人材、女性人材が活躍できる企業や場はまだ少ない。そのために、近隣の福岡や広島をはじめとする大都市圏への人材流出も招いているという。

 山口県もこの課題解消に取り組んでいるが、Yamaguchi Secure DX Coreでは、山口県内に専門人材が活躍できる場を作ることで、こうした現状の是正に貢献していく方針だ。

 SYNCHROのCSCCを統括する中村氏は、山口に拠点を構えた結果、本社のある首都圏と比べて「人材の確保がとても容易になった」と語る。実際、CSCCはこの3年間で38名を採用したが、採用活動には一切コストをかけていないという。採用者の内、山口県内の出身者が3分の2を占めており、WINgs出身の女性も15名と多い。CSCCでは、今後も増員を計画している(2026年度中に10名程度を予定)。

SYNCHRO CSCCの人員構成。フルリモートワークや契約社員などの柔軟な働き方も支援している

 もうひとつ、Yamaguchi Secure DX Coreでは、地銀などの金融機関との連携も考えている。デジタル活用/DXに取り組む地元企業が、同時にIT/OTセキュリティ強化も進める“Secure DX”を実行し、十分なセキュリティ対策が行われていることを客観的に証明する診断スコアを金融機関に提出することで、DX融資が受けやすくなるという考えだ。

Yamaguchi Secure DX Coreで考えるビジネスモデルの全体像