業務を変えるkintoneユーザー事例 第283回
一度は絶望の淵に沈んだブライダル企業の“再生への道筋”
コロナ禍でも離れなかった仲間のために “500個のkintoneアプリ”で現場を変えた社長の覚悟
2025年09月05日 09時00分更新
いつか「コロナの時に会社を辞めなくて良かった」と言ってもらえるように
こうしたkintoneによる変革が、残った社員の奮闘を後押しし、介護事業部や子会社の売上は前年比で120%増加して、婚礼成約率も9ポイント上昇した。社員の働き方も変化しており、ダッシュボードや日報、議事録アプリなどを活用して、アウトプットを見ながら議論する文化が根付き始めた。
kintoneはなぜ、スムーズに現場に定着して、成果を生み出すに至ったのか。
ひとつは、社長自らが現場に踏み込み、現場の課題を解決するアプリを作成したことだ。大野氏が手掛けたkintoneアプリは実に500個以上。社員全員がコロナをきっかけに“変わらなきゃ”という前向きな姿勢で、kintoneを受け入れたことも成功要因だという。
もうひとつのポイントは、紙の撤廃に固執しなかったことだ。例えば、ウェディングプランナーの仕事は付箋の方が感情や緊急度を伝えやすい。商品発注の網羅的なチェックも印刷した方が作業がしやすい。kintoneが効果を発揮するのは3人以上で情報共有したい場面やデータを結合するような場面であり、「kintoneに拘りすぎないことで、kintoneの優れた点が明確になった」と大野氏。
現在大野氏は、kintoneのデータ結合と鮮度の高い情報よって、スピーディな意思決定や改善活動の早期化が可能になり、コロナ禍に決意した“強い会社”の実現に近づいている。kintoneによる自動化で社員の余裕が生まれ、「笑顔と満足を生み出す」という理念のもと、顧客に向き合う環境も整った。
大野氏は顔を曇らせながら、まるで出口の見えない暗いトンネルの中にいたようだったとコロナ禍を振り返る。そんな絶望の淵に沈む中で、kintoneを導入した。「社員の皆が登録してくれるレコード(データ)が、私にとっての灯でした。その明かりは暗いトンネルの出口に向かう道しるべになってくれた」(大野氏)
現在、世間ではコロナ禍の影響も落ち着きをみせているが、イヤタカの負った傷は癒えきっておらず、会社の再生も道半ばである。大野氏は、「『コロナの時に、会社を辞めなくて良かった』、いつの日か社員の皆にそう言ってもらえるよう、kintoneでさらに課題を解決し、会社をもっと強くしていきたい。それが私の使命であり、コロナ禍で支えてくれた社員への恩返しでもある。そして、私たち自身がいつまでも笑顔と満足で溢れた会社でいられるよう、全員で手を取り合っていきたい」と締めくくった。
北海道・東北地区の代表者は…
プレゼン後には、サイボウズ 東北営業グループの島谷昇孝氏から質問が投げられた。
島谷氏:PDCAの分類で業務システムを見るという視点が新しかったです。
大野氏:業務フローを、例えば、販売・購買・棚卸しといった形で並べると、各プロセスの共通点はPDCAでした。PDCAのどこも欠けてはいけない中で、イヤタカの場合はActionが足りなかった。業務のボトルネックを見つけるのに役に立ちました。
島谷氏:大野さんご自身で500個のkintoneアプリを作られたことに驚きました。経営者はかなり忙しいと思いますが、どのように時間を捻出されたのでしょうか。
大野氏:コロナ禍で仕事がなくなったことが大きいですが、現場で苦しんでいる皆を見ていたので、なんとか解決したいという想いからです。一番大変な現場から課題を解決するkintoneアプリを作り始め、kintoneを習得していきました。
そして、kintone hive sendaiの最後には、参加者の投票を経て、北海道・東北地区の代表が発表された。6組の登壇者の中で最も支持を集めたのは……イヤタカの大野恒平氏だ。
大野氏は、「イベントのエントリー時には、思い出すのも嫌で新型コロナの話をするつもりはなかったです。ただ、気持ちを伝えた方が良いとアドバイスを受けて、本日話をして、社員の皆へもメッセージを伝えることができました。皆さんにも評価もされて本当に感無量です」と喜びの言葉を伝えた。大野氏は、幕張メッセで開催されるCybozu Daysのkintone AWARDに出場予定だ。

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