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業務を変えるkintoneユーザー事例 第281回

広島の印刷会社シンセイアートが挑んだ伴走支援を活用した内製化

「ノーコードだったらできるんじゃない?」 社長の一言でkintoneは社内の機械好きに託された

2025年08月28日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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伴走支援のおかげで運用までこぎつけた 新規事業もkintoneで

 こうして4つの課題を解消し、kintoneの運用を開始したシンセイアート。感想を聞かれた大倉氏は、「ホッとしました。やっとスタート地点に立ったんだと思いました」とコメント。各部署からいろいろな要望が出てきたが、きちんと回答と改修が行なえた。「これも伴走支援を選んだおかげ」と大倉氏は語る。

 そんな伴走支援が終了してしばらく経ち、社長からは「新事業するよ~」とのお達し。Tシャツプリンターとレーザー加工機を導入し、オリジナル商品の販売を開始することにしたのだ。「ここでもkintoneの柔軟性が大活躍し、すぐに新事業用のアプリを開発できたんです」と段畠氏。

新規事業もkintoneで効率的に情報共有

 今ではkintoneは「便利で楽しいツール」になっており、社内書類もどんどんアプリ化されているとのこと。以前は作業指示書だけだったが、今では在庫管理、車両管理、稟議書、FAX送付状などをkintoneで管理している。印刷会社らしく、業務フローの順番や色使いにもこだわり、使いやすさを意識しているという。

 そんなアプリの中で段畠氏が紹介したのは、「選挙ポスター貼り確認アプリ」。今年、庄原市では市議選挙があり、シンセイアートは市内512ヶ所に選挙ポスターを貼る業務を受託した。ここで活躍したのが、貼ったポスターの状況をスマホから簡単にアップできる選挙ポスター貼り確認アプリだ。「シンプルながら、大活躍でした」と段畠氏はアピールする。

選挙ポスター貼り確認アプリが大活躍

これが属人化か! kintone部を結成し、Cybozu Daysに参加してモチベUP

 大成功とも言えるシンセイアートのkintoneの導入。定量的な効果としては、まずデータ入力の回数が半分に。工場長は年間110時間、経理は年間250時間の業務時間の削減につながった。前述した作業指示書の要旨も1/4となり、年間1万8000枚の削減になった。

kintoneの導入効果

 とはいえ、社長からは「大倉さんが会社に出られなくなったら業務が止まってしまう」という指摘を受けた。kintoneを理解し、作れるのは大倉氏のみ。これがよく聞く「属人化」だ。その解決策として、大倉氏と若手3人で「kintone部」を結成し、週に1回の勉強会を開催。kintone hiveのYouTubeを参考に、各メンバーが作りたいアプリを構想し、現在作成している途中だという。

 さらに社長からは「kintoneアソシエイト資格試験」の受験がミッションとして課された。とはいえ、「試験=勉強」という意識からチームのモチベーションは下がることになってしまった。「なにかよい方法はないか?」と悩んだ大倉氏は、社長に「Cybozu Days 2024」への出張をお願いした。

 半年まじめに勉強したこともあり、社長からは快くOKをもらい、いざ幕張へ。Cybozu Daysに参加したメンバーは資格試験への意欲も高まり、業務改善のモチベーションが爆上り。多くのkintoneユーザーに触れあうことで、自分だけじゃないという連帯感も生まれたという。

まだまだ続くkintoneへの挑戦 外部業者でのカスタマイズも

 現在の挑戦は、特定の顧客とのゲストスペースの活用。原稿入稿や校正などで月100通あったメールをゲストスペースに移行することで、やりとりは効率化。顧客からも「使いやすい」と大好評だという。

 もう1つ目は、代表メールをメール共有オプションで管理することだ。今までは確認漏れを防ぐため、メールをプリントアウトとしていたが、メール共有オプションにより、1つのメールアドレスを複数人で管理できるようになった。担当者の振り分けや対応状況を容易に確認することが可能になった。次のステップとしては、自分たちではできない高度なカスタマイズを大塚商会に依頼する予定だという。

 段畠氏は、「私たちのkintoneの成功ポイントは、最初から完璧なシステムを目指さなかったことです。できることとできないことを見極め、アナログのいいところも残しました」と語る。苦手な登壇にチャレンジした大倉氏は、「当社にとってkintoneはなくてはならないものになりました。伴走支援を受けながら、自分たちでできることを段階的に進められた点がよかったです」とコメント。これからもkintoneへの挑戦を続けていくと締めた。

kintoneを中心とした業務フローの確立へ

訂正とお詫び:初出時、登壇者の氏名に誤りがあったので、訂正いたしました。(2025年8月29日)

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