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業務を変えるkintoneユーザー事例 第280回

大英産業の変革は元営業の文系コンビによる基幹システム刷新から始まった

現場を回ってkintoneアプリを“ライブ改善” 対話と行動の積み重ねで全社員がDXの担い手に

2025年08月27日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp 写真●サイボウズ

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 「kintoneを活用するのに専門知識は必要ありません。大切なのはコミュニケーションとアクションです」―― 基幹システムの刷新から始まった大英産業のkintone活用。ヒアリングをしながらその場でアプリを修正する“ライブ改善”など、現場との対話と行動の繰り返しが、やがて全社員を巻き込んでいく。

 サイボウズは、kintoneユーザーの事例イベントである「kintone hive fukuoka」を開催。ラストを飾った大英産業の柚田耕太郎氏と江崎菜那氏は、元営業の文系コンビが現場と対話を重ねることでたどり着いた全社員の“DX人財化”について語った。

大英産業 情報戦略課 柚田耕太郎氏

エクセルと旧来システムが招いた「三重苦」をkintoneで改善するが…

 大英産業は福岡県北九州市に本社を構える総合不動産会社である。創立57期目を迎え、社員数は約500人。九州や山口地方において分譲マンションや戸建て、リフォーム済み住宅事業などを展開している。

 今回登壇した柚田氏と江崎氏は、ともに大学の文系学部を卒業後、戸建てとマンションの営業を経験し、現在はシステム担当として活躍している。そんな二人がDXに着手する前の大英産業の課題を、江崎氏は「五七五」で振り返った。

「壊れたる エクセル関数 迷宮に」
「二重三重 入力作業 終わらない」
「決裁で 上司のデスク 巡る旅」

 当時の基幹システムは、UIの悪さ、機能の少なさ、PCでしか閲覧できないと制約だらけ。開発や修正はベンダーに依存しており、もちろん柔軟な対応は難しい。そして何より、エクセルへの二重、三重の入力作業が、現場の大きな負担となっていた。

 この状況を打破すべく、二人は様々なセミナーに出向いて情報収集。kintoneに活路を見出して、基幹システムを移行した。出来上がったのは、顧客管理と物件管理、契約管理をkintone上で一元化するシステムだ。誰でも直感的に操作でき、スマホで外出先からも確認できる。多重入力も激減して、蓄積されたデータを基に分析まで可能だ。

 「最高のシステムができた!」と胸を張った柚田氏たち。しかし、社員の反応は冷ややかで、「前とやり方が違う」「kintoneにしない方が良かった」といった声が上がった。現場では、情シス部門が一方的にシステムを入れ替えただけという認識であり、改善のメリットよりもいちから覚える手間の方が勝っていたのだ。

課題解決のために作ったアプリが受け入れられなかった

ヒアリングしながらアプリ修正をする“ライブ改善”で現場の心をつかむ

 しかし、二人は諦めなかった。「みんなの業務を楽にしたい」という一心で、各部署を回り、定例会を開いて、とにかく現場の意見を直接聞いた。

 ここで、kintoneの真価が発揮される。設定が簡単で開発しやすいという特性を活かし、要望を聞きながらその場でアプリを修正する「ライブ改善」を繰り返した。画面を実際に見せつつ、リアルタイムに改善していくと、批判をしていた社員の反応は一変。「意外と悪くないね」「簡単に色々と変えられるね」「もうできたと?じゃあこんなこともできる?」と前向きな姿勢に変わった。

大英産業 情報戦略課 江崎菜那氏

 基幹システムの刷新から始まったkintone活用は、ライブ改善をきっかけに、会社の隅々へと浸透していく。ここではkintoneアプリで達成した2つのDXが紹介された。

 ひとつ目が「来場予約と来場アンケート」のDXだ。従来は、外注した予約フォームの情報をkintoneに転記し、来場後には紙のアンケートの内容を再びkintoneに入力するという二重の手間が発生していた。

 そこで、トヨクモの連携サービスを導入。紙のアンケートは「FormBridge」で電子化され、回答内容はkintoneに自動登録される。予約フォームは「kViewer」を活用し、顧客はカレンダーから来場したい時間枠を選択すると個人情報の入力画面に遷移する仕組みだ。予約枠の増減は「DataCollect」が自動計算してくれる。

トヨクモの連携サービスも活用してアプリを内製した

 これにより、予約からアンケート回答までがkintoneに自動で集約されるようになり、アンケート電子化による入力必須設定によって、集まる情報の質も向上。さらには、1年あたり1200枚の紙の印刷代や40万円の外注コスト、100時間の入力業務がゼロになるなど、大きな成果が得られている。

フォームを内製化したことで外注費を削減

 2つ目の事例は「人事・総務関連」のDXだ。

 かつての同社の申請プロセスは、署名や押印はアナログで、申請の種類によって窓口もバラバラ。そんな各種申請をkintoneの「人事申請」アプリに集約。システムメンテナンスの手間やコストを削減し、電子契約にも対応している。

 Excelと紙で作成していた契約書もkintone化した。印刷、製本、収入印紙の貼付といった作業も「帳票作成」アプリと電子契約システムの連携で効率化。同じくExcelで管理していた週報もkintoneに移行することで、実績が自動で集計・グラフ化され、関係者全員がリアルタイムに状況を把握できるようになった。

分散していた申請書を一つのアプリに集約

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