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業務を変えるkintoneユーザー事例 第279回

秋田県の建設会社が残業1500時間削減を達成したkintone活用の道のり

元保育士が挑戦した建設業のDX化 現場経験ゼロでつまずくも“DX認定”で大逆転

2025年08月22日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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“DX認定”がきっかけに社長も会社も動きだす

 現場の3つの課題をkintoneで解決し、一定の成果も上げた高橋氏。続いて取り組んだのは「計画的なデジタル化」である。

 6年先のDXシナリオを作成し、最初の2年は、kintoneで“紙からのデジタル化”を推進した。次の2年は、社内から2重入力を撤廃することを目標としており、現在はこのフェーズだという。現場で手書きした帳票をデータ化できるソリューション「onboard」とkintoneを連携させ、帰社後のデータ入力をなくす仕組みを構築中だ。

 そして最後の2年では、kintoneによる業務管理を他社にも普及させるというシナリオだ。

 さらに2024年4月、kintoneを中心としたDX戦略や体制が評価され、秋田県の建設業で初めて、経済産業省が定める「DX認定」を取得した。これには、DX推進を掲げていた社長も喜び、全社員に対して「わが社はDX認定企業だ。これからは全社でDXを進めよう」と宣言した。

年1の社内イベントにて社長が全社でのDX推進を宣言

 するとkintoneの社内需要も高まり、DXに後ろ向きだった社員からも「kintoneを教えて」という声が上がるようになった。これには高橋氏も「トップによる発信の重要さ」を実感したという。社内にはDX推進部も立ち上がり、セミナーの定期開催や使い方動画の展開といった、kintoneの定着に向けた施策も進められた。

 こうしてDX認定を機に、社員自身もkintoneアプリを作成するようになり、社内全体で生産性が向上していく。例えば営業部は、顧客とのやり取りを蓄積・共有して、外出先でも確認できるアプリを生み出した。今ではアプリの総数は268個に上るという。

社内のkintoneアプリの総数は268個に

 そして、会社全体の課題であった残業時間も1年あたり1500時間削減しており、特に残業が多かった工事部では、43%の残業削減につながった。

 高橋氏は、「DX認定を取得して生産性向上につながったのは、kintoneが元保育士でも課題解決に直結できるツールだったから」と締めくくった。

課題に寄り添ったアプリに批判が起きない理由

 プレゼン後には、サイボウズ 東北営業グループの島谷昇孝氏から質問が投げられた。

島谷氏:DX認定を取得しようとした理由は何でしょうか。

高橋氏:実は、DX認定という名前がかっこいいからという動機からでした。ただ、申請の書類を作っているうちに「DXが計画的に推進できる」と実感し、途中から目的が変わっていきました。

アフタートークの様子

島谷氏:課題に寄り添ったアプリでも、仕組みがkintoneに変わることへの抵抗感はあったのではないでしょうか。

高橋氏:日報アプリと違い、担当者と一緒にアプリを作ることで、現場も業務が楽になるのが分かり、批判は起きませんでした。

島谷氏:作る過程で巻き込んでいるので、スムーズな利用につながったのですね。

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