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業務を変えるkintoneユーザー事例 第279回

秋田県の建設会社が残業1500時間削減を達成したkintone活用の道のり

元保育士が挑戦した建設業のDX化 現場経験ゼロでつまずくも“DX認定”で大逆転

2025年08月22日 09時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 「建設業のDXはなかなか進まない。バックオフィスでは重複作業が多く、残業時間も減らない」 ―― 元保育士という経歴から地元建設企業のDXに挑むことになった高橋氏。社長の勧めから出会ったkintoneの導入を進めるも現場知識のなさでつまずいてしまう。

 サイボウズは、kintoneユーザーの事例イベントである「kintone hive sendai」を開催。5番手として登壇した瀧神巧業の高橋周平氏は、kintoneによる現場の課題解決などで“DX認定”を取得し、残業を1500時間削減するまでに至った道のりを披露した。

瀧神巧業 DX推進部 係長 高橋周平氏

社員の抵抗で気づいた“DXの本質”

 秋田県仙北市に拠点を構える瀧神巧業は、建設や水門事業を中核に、最近ではドローン事業も手掛けている。同社は、kintone導入前、DXが遅れている典型的な建設会社だったという。特にバックオフィスでは重複作業が横行し、それに伴う残業の多さに悩まされていた。

 高橋氏は保育士を4年ほど勤め、子どもが産まれたのを機に地元に戻り、瀧神巧業に入社。そして、建設業・ITともに未経験の中で、DXに取り組むことになる。そんな折、社長の勧めで、同じ東北の建設企業であり、DX先行企業である後藤組の事例発表を見に行き、そこでkintoneと出会う。「これなら元保育士でも真似ができそう」(高橋氏)と導入を決断した。

 さっそくkintoneでアプリを作成した高橋氏だが、ただ便利なアプリを作るだけではDXは進まないことを思い知ることとなる。

 例えば、定番の日報アプリを作った時の話だ。kintoneに慣れてもらおうと、全社員が書く日報をTeamsからkintoneに切り替え、Power AutomateでTeamsにも同時投稿されるよう工夫も凝らした。しかし、反応は散々で、「俺たちが稼いだお金を何に使っているんだ」「また社長がいらないことを言ったな」と批判が飛び、日報に文句が書かれていたことさえあった。高橋氏は「kintone使えばDXは進むのに…」と落ち込むが、自身の過ちにも思い当たる。

社員からの批判に高橋氏は落ち込んだ

 思い返せば、現場経験ゼロの状態で、建設業や自社の課題が分からないままアプリを作り始めていた。「社員の困っていることを解決しないと、DXを進めても意味がない」(高橋氏)と気づかされたという。

3つの現場の課題をkintoneで解決

 そこで高橋氏は、改めて社員の困っていることをヒアリングして周り、それをkintoneで解決することで再出発を図った。

kintoneで3つの課題を解決

 すると営業部では、物件管理の見積から社内決裁のプロセスにおいて、“5重入力”の手間が発生していた。営業は「社内処理に時間がかかりすぎて外回りにも行けない」と嘆く状態だったという。

 この課題を3つのアプリをつなげることで解決した。「営業物件一覧」は、見積作成とあわせて引合番号を採番し、マスターデータを作成するアプリ。無事受注後には「受注工事」のアプリに情報を転記できる。

 受注工事アプリは、受注番号を採番し、「レポトン」のプラグインを利用して設計・製作依頼書の出力も可能だ。その情報が転記される「受注伝票」アプリでは、社内決裁がワンクリックで完了する。

 この一連のアプリの実装により、営業部からは「億劫な処理が一括でできるようになった」という感謝の声も寄せられた。さらに、一連の業務を約80%削減して、1年で約80時間の業務効率化も達成している。

設計・製作依頼書も出力できる「受注工事」のアプリ

 営業部に続いて総務課では、総務一人で担当していた全社員の「通勤車の管理」を、社員自身で管理できる仕組みをkintoneで構築。水門工事部では、Excelで作成していた複雑な「工事実行予算書」を、営業の受注物件データを基に自動算出するアプリを作成した。

「工事実行予算書」アプリでは、受注物件のデータを活用して内訳を入力するだけで自動集計

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