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業務を変えるkintoneユーザー事例 第276回

アセスメントと目標管理で妊産婦のなりたい姿をサポート

生まれて間もなく消える命がある 妊産婦を支援するNPOから見た「命を救うkintone」

2025年08月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●サイボウズ

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出産後の妊産婦とともに「なりたい姿」を目指すためのアプリ

 妊娠SOS相談アプリはあくまで妊婦からの相談という入り口の業務を管理したものだが、出産後の妊婦を支援する「妊産婦等生活援助事業」のための入所者アプリも開発した。

妊産婦等生活援助事業の概要

 こちらは妊産婦の課題を知り、解決していくための職員のアセスメント力を養成しつつ、他の機関への情報共有も容易に行なえるようにした。また、国のガイドラインに準拠し、項目ごとにアセスメントを行なったり、短期中期の目標を設定できるほか、経過やアセスメントを点数で細分化することも可能だ。「どういう風によくなっていったのか、どのように難しくなったのかを可視化できるようになった」(田中氏)。

 入所アプリは個人情報を管理するフェイスシート、アセスメント・目標の登録と一覧を管理するアプリ、アセスメントと目標に従って日々の経過を記録し、一覧するアプリなど全部で5つのアプリから構成されている。アセスメントは、母と子の身体、精神、生活、社会、養育、就学、退所後支援などの項目が国で定められているが、具体的な項目に関しては全国妊娠SOSネットワークで独自に設定し、かみ砕いた形で整理したという。

 たとえば、身体は健康管理と保清という2つに分離し、それぞれ5段階で評価。当事者とともに、中長期的になりたい姿、短期的に取り組むべきことを目標として設定し、経過を登録。前回からの振り返りも可能。各カテゴリごとのアセスメントの点数もグラフ化できるため、入所時から支援を受けて、どのような変化が起ったのが迅速に把握できるという。

アプリでは独自にアセスメントと目標設定を実装

 入所者アプリを開発したことで、妊産婦のなりたい姿をサポートできるようになったという。また、関連レコード一覧やグラフ・表の活用で、数字だけではなく、中身を可視化できるようになり、アセスメントと目標を踏まえた経過記録により、職員の支援力がついたのも大きな効果だったという。

現場を知り、とにかく聞く アフターフォローまで泥臭く

 田中氏は「非常に泥臭い」という導入支援のポイントについて語る。団体の事務局に導入方法をレクチャーする際は、無料試用期間でのユーザー登録まで「ひたすら寄り添い」、相手方のキーマンを見つけて育てることを意識しているという。

泥臭い導入支援のポイント

 また、アプリの開発やカスタマイズ支援においては、「現場を知り、とにかく聞く」「デバイスを考慮」「試行錯誤」を重視。さらに、相談員に対してもオンライン/現地で研修を行ない使い勝手をヒアリングしながら、ともにアプリを育てているという。「ITやったことない人が、1回でアプリを使いこなせるわけはない。なので、そのマインドを持って、現地で研修を行ない、オンラインでフォローアップの研修も行ないます」(田中氏)という。

 導入後のアフターフォローとして伴走も欠かせない。「最初の数ヶ月、半年、1年と伴走していく。1年間、伴走すればだいたい大丈夫」と田中氏は語る。この間はアプリの改良も躊躇せず、利用者や検討対象者を集めた合同でレクチャーも実施する。「グラフやリストを事業年度に使いたいときに、私から声をかけて、レクチャーします。また、ディスカッションではみなさんからニーズを拾い、kintoneってホントに使えるの?というところまで話し合いながら、自信を付けてもらっています」と田中氏は語る。

 最後、田中氏は「kintoneは勇士の武器」と語る。「kintoneによって、世の中救われる命があります。私はkintoneに大きな可能性を感じていますし、私が関わっている分野以外の医療や福祉の分野にも使えると思っています」とアピールして、講演を終えた。

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