業務を変えるkintoneユーザー事例 第277回
医院を共通のゴールを目指すチームに変えた予約管理システムの刷新
「このままでは医院を守れない」 仙台の歯医者を救った“スタッフと一緒に悩める”kintoneアプリ
2025年08月18日 09時00分更新
「こんな自分に医院が守っていけるのか」―― ある出来事をきっかけに、経営を学ぶことの重要性を痛感したすずき歯科クリニックの鈴木院長。同院の変革を後押ししたのは、働くスタッフを共通のゴールを目指すチームに変えたkintoneアプリの存在だった。
サイボウズは、kintoneユーザーの事例イベントである「kintone hive sendai」を開催。4番手で登板したすずき歯科クリニックの鈴木敬氏は、“目標を見える化”してスタッフの自主的な行動を促した、kintoneによる予約管理システムの刷新について披露した。
がむしゃらに患者を診る中で“経営と向き合った”きっかけ
2020年に仙台市の若林区で開業したすずき歯科クリニック。同院では、「患者やスタッフ、地域に貢献できる」ような歯科医院を目指している。鈴木氏は、「人の幸せを自分の幸せと感じられる人材を育て、患者とスタッフの笑顔があふれる医院をつくり、その笑顔を社会にも届けることが私の理想」と語る。
この理想を実現するために、「経営を学ぶこと」が避けて通れないと気づいたのは、ある出来事がきっかけであったという。
当初、鈴木氏は「診療さえすれば皆が幸せになる」という想いから、がむしゃらにアポイントをとり、患者を診ることに邁進した。実際に患者は増えたものの、やりがいを感じて欲しいスタッフは次第に疲弊して、モチベーションも下がっていく。さらに、忙しさと裏腹に利益も伸び悩んだ。
「想像していた医院の在り方と違うな」と感じつつ、開業から1年が過ぎ去た頃、鈴木氏は父親と死別した。コロナ禍だったこともあり、言葉を交わすこともなく別れを迎える。そして、相続の一環として、父親の会社の決算書や業務データに目を通すことになった。
「これまで経営を勉強してこなかったせいで、父が人生をかけた仕事の成果がまったく理解できませんでした。ただただ、悔しさが残りました。そして、こんな自分に医院を守っていけるのか。患者、スタッフ、地域に貢献したいという想いを実現できるのか ―― そう気づかされました」(鈴木氏)
それが、経営を学ぶきっかけとなり、アポイントを重視することの限界にも気付かされる。そして、アポイントとスタッフのやりがい、業績を連動させて「見える化」することが重要だと思い至った。
加えて解消したかったのが、経営者とスタッフの間にある隔たりだ。「経営者はスタッフや組織を守るために数字を達成しないといけない。一方で、スタッフはその数字が分からない中で最善をつくしている。双方に非はないが、お互いの見ているものに乖離がある」と鈴木氏。
必要としたのは、スタッフと一緒に経営の数字が見ることができ、一緒になって考えられるシステムだ。そして鈴木氏は、経営の勉強のために参加した集まりの中で、kintoneと出会う。

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