少人数・短期間+ソラコム基盤で推進する遠隔対応可能な駅業務
無人駅の案内を「遠隔操作」 JR東日本情報システムが挑んだ“ゼロから作らないIoT”
デバイスからネットワーク、クラウド、アプリケーションと様々な技術要素から構成され、「ITの総合格闘技」と呼ばれるIoT。一方、「IoTはあくまで手段。ゼロから作ることではなく、価値のあるものを作ることが重要」と述べるのは、JR東日本情報システムの資延伸一氏だ。
ソラコムは、年次のIoT・AIカンファレンス「SORACOM Discovery 2025」を開催。JR東日本情報システムが登壇したセッションでは、駅業務の省力化を推進する4つのIoTソリューションが披露された。これらのソリューションは、“ゼロから作らない”というアプローチで少人数かつ短期間で開発されている。
ザ・ユーザー系SIerによる“ゼロからつくらないIoT”の始まり
JR東日本情報システムの主な事業領域は、JR東日本グループにおける基幹システムの開発・運用である。その開発スタイルは、9割以上がウォーターフォール型で、上流工程(要件定義や基本設計など)を担当。「いわゆる『ザ・ユーザー系SIer』」(資延氏)だという。
そんな同社が、新しい領域に挑戦するために立ち上げたのが「テクノロジー応用研究センター」である。資延氏を含む、同センターの約半数が所属するIoTテクノロジーグループは、AI以外の先進テクノロジー全般の検証を担う。そのため、「いざIoTサービスを作ろう」にも、取り組めるのは1、2名程度であったという。
加えて、IoTにはフルスタックのスキルが求められるが、該当するメンバーは限られている。「人もいない、経験もない」中で、着手したIoTが「センシング」である。
とはいえ、駅やキヨスクは自由には使えない。目をつけたのが自社の保有するサーバー室である。各支店に頼み込み、BLEゲートウェイと温湿度センサーを設置。そして、ソラコムのIoTデータを収集・蓄積する「SORACOM Harvest」とデータをダッシュボード化する「SORACOM Lagoon」を試し、そこで初めて「遠隔地からデータが送られてくる」体験をする。
結果、この仕組みは、高価な設備で構築していた機器室監視を置き換えるところまで発展し、大幅なコスト削減につながった。
その後も、商業施設向けの混雑情報サービスを開発して、知見を積み重ねていく。その頃から、汎用デバイスとソラコムのサービスを組み合わせて、「ゼロから作らない、あるものを利用するIoT」を始めている。
一方、新たに得られた学びが、駅の現場ではセンシングより「インフォメーション」が求められているということだ。無人駅が増える中、乗客へのサービスである“案内”は継続する必要があるが、設備に費用は掛けられない。
この現場の悩みを、混雑情報サービスで用いたRaspberry Pi(ラズパイ)で、何とかできないかいう想いで始まったのが、本セッションで披露された無人駅・地方駅向けの「インフォメーションIoT」である。




