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人材不足解消を目指し、フォーティネットが“未来のホワイトハッカーたち”に特別授業

技術系学生がいま「OTセキュリティの考え方」を学ぶ意義とは?

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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学生時代からOTセキュリティに触れることで、キャリアの選択肢が広がる

 フォーティネットがTECH.C.でOTセキュリティの授業を行うことになったのは、昨年秋、あるビジネスイベントで両者の担当者が出会ったことがきっかけだったという。そこで「ITセキュリティを学ぶ学生に、OTセキュリティについても知ってもらいたい」という両者の思いが合致したのだ。

 TECH.C.大阪校で副校長を務める大西貫士氏は、同校グループでは2019年からサイバーセキュリティ教育に特化した「ホワイトハッカー専攻」を設け、専門性の高いITセキュリティ人材の育成に取り組んで来たと説明する。

 その後、ITセキュリティの重要性が社会的に注目され、ITセキュリティ人材に対するニーズも高まったことで、同様のITセキュリティ専攻科を設ける専門学校や大学が増え続けている。そうした中、他の学校にはない新たな教育プログラムとしてOTセキュリティに注目したというのが、1つ目の理由だ。

OCA大阪デザイン&テクノロジー専門学校 副校長の大西貫士氏

 もうひとつの理由は、学生のうちからOTセキュリティという世界の存在を知っておくことで、将来的な「キャリアの選択肢」が広がるからだと、大西氏は説明する。

 ホワイトハッカー専攻で学ぶ学生のほとんどは、卒業後はITセキュリティの仕事に就きたいと考えているという。ただし、そうした就職先は、東京や大阪といった大都市圏に集中しているのが実情だ。一方で、OTセキュリティであれば、製造業や社会インフラの“現場”で人材ニーズがこれからさらに高まることで、大都市圏に限らず働けるチャンスがある。

 「もちろん卒業後、すぐにOTセキュリティの職に就かなくてもいいと思います。ITセキュリティの世界でキャリアを積んだうえで、将来的なセカンドキャリアを選択する場面で『OTセキュリティもあるな』と気づいてくれてもいいと。そのくらい、長いスパンで考えています」(大西氏)

「OTセキュリティの考え方」を伝えることに重点

 一方のフォーティネットでは、高度なITセキュリティ人材の育成は社会的要請だと考えており、グローバルで「2026年までに100万人のサイバーセキュリティトレーニング」を行うことを目標に掲げている。今回のTECH.C.におけるOTセキュリティ授業も、そうした取り組みの一環にあたる。

 フォーティネットジャパン OTビジネス開発部 担当部長の藤原健太氏は、今回の授業の特徴は「OTセキュリティそのものの考え方を伝えること」に主眼を置いている点だと説明する。

 「一般的に、こうしたトレーニングは『特定の製品の使い方』を教えるものになりがちです。しかし今回は、まず『OTセキュリティの考え方』をもっと浸透させていくべきだと考え、そちらにシフトした内容になっています」(藤原氏)

 OTセキュリティ人材は、同社のようなセキュリティ製品を提供するベンダー側だけでなく、ユーザー企業側の、しかも幅広い層の企業に必要だと藤原氏は述べた。たとえば製造業で言えば、トップの大手企業だけでなく、そのサプライチェーンにつながる中小規模の企業まで含めて、セキュリティレベルを向上させていく必要があるからだ。

今後、OTセキュリティ対策は「サプライチェーンにつながるための条件」としても重要になっていく

 藤原氏によると、OTセキュリティ人材に対する求人は、この数年間で急激に増加しているという。「ITベンダー、SIer、ITコンサルなどだけでなく、特にユーザー企業がOTセキュリティ人材を強く求めるようになっています。いまの学生さんがOTセキュリティを学べば、そういうところにリーチできるでしょうね」。

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