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業務を変えるkintoneユーザー事例 第274回

「アプリ作るより運用フォローが大事」の実例、kintone hive 2025 osakaで聞いた

変化を恐れる社員をドーナツと座談会でサポート エースコックのkintone運用フォローが素晴らしかったブ!

2025年08月04日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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病院の受付や紹介制度をパクったサポート体制の構築

 ただ、ナレッジを作成したものの、ほとんど見てもらえなかった。そこで佐藤氏は広報活動を行なうことにした。まずは上役がメールで告知したルールを全部ナレッジに転記した。そして問い合わせがあったときは、直接答えず、ナレッジのリンクを送ることにした。「ちょっとイヤなヤツなんですけど、ナレッジのリンクだけを送りました。こうしないとなかなか広まらない」と佐藤氏は語る。

 ただ、こうした地味な広報活動の結果、「ナレッジに載せておいたよ!」や「ナレッジに書いてあるやるなんだけど……」といった会話が聞こえるようになり、ゆっくり浸透をしている手応えを感じつつあるという。

ナレッジも地味に浸透

 もう1つ、問い合わせを受付けるためのサポートNaviには、エスカレーション式という1つのモデルがあった。「問い合わせについていろいろ考えてみたけど、病院の受付や紹介制度が役立ちそう」と思った佐藤氏は、この仕組みを丸パクリすることにした。「エスカレーション式 問い合わせ受付アプリ サポートNavi」の爆誕である。

 「エスカレーション式」というのは、ざっくり「わからなかったら、他人に丸投げしてOK」という仕組みだ。たとえば、体調を崩した場合、ドラッグストアの薬剤師に聞いて、セルフメディケーションを行なう。これでよくならなかったら近くの病院に行き、そこでも良くならなかったら、近くの病院に紹介状を書いてもらって、総合病院に訪問するという流れだ。

 エースコックの場合、まずはナレッジで自己解決を試みてもらい、それでもダメならサポートNavi経由でアプリの担当者に問い合わせ。それでも解決できない場合に、佐藤氏に問い合わせが来るというエスカレーション体制を組んだ。「対象が明確になり、負荷が分散され、場合によっては自分に来る前に問題が解決するかもしれない。対応履歴も残っているので、私がいなくなっても問い合わせを確認できる」と佐藤氏は語る。

病院のエスカレーションと似ている問い合わせの仕組み

 具体的なアプリはイメージだが、質問者のほか、運用担当者、kintone担当者の佐藤氏、情報システムなどで記入されるパートがエスカレーションごとに別れている。ここまで整えた段階で、佐藤氏はようやく3ヶ月の育休に入ることができた。

育休復帰の佐藤氏を待ちかまえていた不安の声 解決したのは?

 さて、育休3ヶ月後に復帰した佐藤氏だが、職場の雰囲気に違和感を感じる。「思っていたより、問い合わせが少ない。なにより同僚たちの元気がない」と思った佐藤氏は、さっそくマーケティング本部内でアンケートしてみた。

 アンケートの結果、kintoneについては6割強が効果を実感していることがわかった。しかし、普段のリサーチではないくらい、フリーアンサーがやたらと長かったという。リサーチの部署でアンケートを見続けてきた佐藤氏もこの量には驚いた。「変化への不安、恐れ、悲しみ、ネガティブな感情がうごめいていたんです」と語る。

効果実感は60% しかしフリーアンサーが長い

 運用フォローの効率化や佐藤氏が不在となる間の対応はもちろん問題ない。ただ、駆け足で体制を構築したことで、もともと人に聞くのが当たり前の社員たちが不安を持ってしまった。「変化への不安に寄り添えていなかったと反省しています」と佐藤氏は語る。

 こうして生まれたのが、kintoneのみならず、業務上の不安や不満を相談するDX座談会だ。少人数の8グループ×90分で開催され、和やかな雰囲気を作るために、"業務改善プラグイン”として使ったのがドーナツ。「江坂中のドーナツを買い占め、参加者に配りまくり、みなさんに楽しい楽しい座談会にしてもらった」(佐藤氏)という。

江坂中のドーナツを買い占めて座談会を実施

 こうして実施した座談会の反応は上々。みんなが意見を交わすことで、変化への抵抗が和らぎ、業務改善意欲がアップした。また、kintoneを含めた100以上の要望が集まったが、kintoneへの要望は実は全体の3割強程度で「やり玉に挙がることはむしろ少なく、実は仲間と考えている社員も多かった」という。現状維持バイアスに寄り添うことがなにより大事というのが、佐藤氏の気づきだった。

 アプリを作ること以上に運用フォローが大事。そして運用フォローには仕組み化と思いやりが大事というのが佐藤氏の主張。「kintone導入により商品情報の書類多すぎ問題を解決したが、効率化の末、問い合わせが増えてしまった。それをセルフのサポートNaviとナレッジで解決したけど、気持ちに寄り添って座談会をやった方がよかったという話です」とまとめた。

アプリを作ること以上に、運用フォローが大事

 最後、今日帰ったらぜひやってほしいこととして、佐藤氏が挙げたのは「運用フォローの仕組みの再確認」「アンケートで浸透度/悩みの確認」「相談できる環境の提供」の3つ。とことん運用にフォーカスした含蓄のあるエースコックのセッションだった。

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