業務を変えるkintoneユーザー事例 第274回
「アプリ作るより運用フォローが大事」の実例、kintone hive 2025 osakaで聞いた
変化を恐れる社員をドーナツと座談会でサポート エースコックのkintone運用フォローが素晴らしかったブ!
2025年08月04日 09時00分更新
「アプリ作るより運用フォローが大事」。7組が登壇した「kintone hive 2025 osaka」のトップバッターであるエースコックの佐藤芳典氏が披露したのは、kintone導入「後」の運用体制の重要さだ。
所属するマーケティング部は膨大な書類が必要だった商品情報のkintone化を実現したが、運用体制に問題を抱え、問い合わせが殺到。育休後、会社に戻ってきた佐藤氏を待ち受けていたのは、変化への不安を訴える社員の声だった。仕組みと思いやりの運用フォロー体制に行き着くまでの道のりとは?
わかめラーメンの商品情報は300以上! 必要書類をkintoneで一発作成
kintone hive 2025 osakaのトップバッターであるエースコックの佐藤芳典氏は、「こぶた」のマスコットが付いたマイクを持って登壇。「こんにちはー! kintone hiveへようこそ~」と主催者ばりの挨拶でセッションはスタートした。
「スーパーカップ」や「わかめラーメン」などカップラーメンのメーカーとして高い知名度を誇るエースコックは、大阪府吹田市に本社を置く。「モノを作る会社」「設立から70年くらい」で、「kintoneのアカウントは全社で500名くらいで、部署だと80名くらい」というのが会社紹介。中途入社の佐藤氏は、営業部からマーケティング部の商品開発グループに移り、現在は同じくマーケティング部のリサーチやブランディングのグループに所属する。
今回、佐藤氏が披露したのは、「独自アプリを作って、1000時間改善した」というアプリを作る話ではなく、「運用フォローの大切さや取り組み」など、アプリを作った“後”の話になるという。そんなエースコックがkintoneを導入したきっかけは、グループウェアのリプレース。「どうせやるならいろいろしたい」「自分の好きにアプリを作りたい」ということで、kintoneの導入と相成った。
マーケテティング部でのkintoneは商品情報の管理に利用されている。マーケティング部では商品に対してさまざまな商品情報をデータベースに登録するわけだが、その種類は膨大。ご存じ「わかめラーメン」の商品情報は、なんと300以上に及ぶという。そして1つの商品ができるまでの商品企画、会議/開発、製造準備、製造/商談、発売などの各ステップで多くの書類が必要になり、商品数も年間200品を超えるのだ。
エースコックでは、今まで1ステップごとにやっていた書類作成をkintone化。会議ごとに異なる10種以上の書類作成がボタン1つで行なえるようになり、間違えると大きな問題になるJANコードの管理も自動化された。また、手入力欄も選択入力になり、ミスも軽減された。「だいぶ楽になったブ!」とスライドのこぶたもご満悦だ。
育休も、会社の居場所も必要 増え続ける問い合わせに向き合う
kintoneによる「自分たちでアプリが作れる。カスタマイズもできちゃう」という成功体験。これ自体はもちろんウェルカムだが、社内にアプリやカスタマイズはどんどん増えてしまう。「いいことではあるんですけど、個性的なアプリが増殖するんです。100社100通りのアプリというと聞こえはいいが、フォローが大変なんですよ。問い合わせでてんてこ舞い」と佐藤氏は語る。
ここで改めて佐藤氏は「伝えたいこと」は、「アプリを作るのと『同じ』か、『それ以上』に『運用フォローが大事』」ということ。「導入したら救われる。そんな完璧なツールなんて存在しません」と自らの経験談を語る。
80名のマーケティング本部で導入したとき、運用の初期体制はあまりうまく構築できなかった。導入時、3ステップに分けた導入説明会は用意したが、稼働後の運用体制は特段設けなかったという。そのため、フォローを担当していた佐藤氏に質問が集中。先ほどの「問い合わせでてんてこ舞い」は、まさに佐藤氏の経験だったわけだ。
では、サポート対象者の属性はどんなものか? まず業務が複雑で、ハンコ文化なので、とにかく確認が多い。また、各人が工夫を行なってしまうため、例外も多く、メール文化だ。人情味は豊かだが、デジタルやマニュアルが苦手なので、困ったときは人に聞いて解決することが多い。とはいえ、「こんな社員って、別にエースコックだけじゃない。どの会社にもいる普通の方たちなんです」と佐藤氏は語る。
ただ佐藤氏には、待ったなしの三児の誕生イベントが控えており、奥様のワンオペ育児を回避するために、育休が必須だった。「育休とらないと家庭に居場所はなくなる。運用体制を構築できないと会社にも居場所がなくなる。これは佐藤の居場所の危機なんです」ということで、問い合わせと向き合うことにしたという。
2つのアプリで「問い合わせがない」理想へGo!
問い合わせの理想状態は、当然ながら「問い合わせ自体がなくなること」だ。「誰もが疑問なく、業務遂行できる状態」「疑問が生じてもすぐに解決できる状態」であれば、新入社員でも困ることはないはずだ。
現状は問い合わせが全部自分に来てしまう状態。セルフで問題を解決でき、問い合わせに対して別の人がフォローできれば、負荷は軽減できる。具体的にはセルフ解決に関しては「ナレッジ」アプリ、そしてフォローに関しては「サポートNavi」というkintoneアプリで解決し、理想に近づけることにしたという。
まずナレッジは「困ったら、ここ!」という位置づけ。kintoneのみならず、すべての業務知識にアクセスできる情報の窓口アプリと定義されており、自ら調べるための方法と文化を提供すべく開発されたアプリだ。「対象者」「タイトル」「課題・お困りごと」「解決方法」などの項目とプラグインの検索バーが用意されており、高度な機能は提供されていない。「高機能にしても、アプリがわからない人は触れない。これくらいシンプルなのにしました」と佐藤氏は語る。
こだわったのは対象者レコードのアクセス権を「全社公開」と「部署公開」に分けているところだ。全社公開はもちろん全員にしてほしい基礎知識だが、部署公開では部署固有のルールやマニュアル、部署内で問い合わせの多い内容を登録している。これにより、異動した瞬間に自分に必要な資料にまとめてアクセスできるようになるという。kintoneであれば、URLやQRコードでリンクが手軽に張れるので、アプリやドキュメントへのポイントが容易で、「作るのもめちゃくちゃ簡単」だったという。

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