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業務を変えるkintoneユーザー事例 第273回

NPO法人抱樸は“鍵付きSNS”で何気ないコミュニケーションを活性化

職員を孤立させないkintoneの「疑似オフィス」 “誰も見捨てない”理念はシステム開発にも宿る

2025年07月31日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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職員に寄り添うための「居場所」を担うkintone

 これらの取り組みの結果、kintoneは単なる業務システムではなく、職員が集える場所になっている。全職員に個人アカウントを付与して、所属(部署・プロジェクト)ごとにスペースを作成、秘匿性のあるスペースにはアクセス制限をかける。kintoneで、離れた場所にいても一体感を感じられる“疑似オフィス”を築いた。

 対象者データベースもほぼ全部署でkintoneに移行され、グラフや集計機能によって業務も効率化された。そして、抱樸で作られたkintoneアプリの総数は461個に上り、その多くは、現場職員が課題解決のために作成したものが占める。伴走支援によって、職員一人ひとりが開発フローを学び、実践する文化が根付いた結果が現れているという。

1人1アカウントを付与し、名前のある個人として活動してもらう

 その他にも、抱樸らしいkintone活用として「対象者専用スレッド」がある。特に緊急性の高い対象者を、複数の職員で支援するための情報共有の場であり、通知機能によってリアルタイムで密な連携を可能にする。「kintoneの仕組みと抱樸の理念が、現場ニーズによって結びついている」と蔦谷氏。

 また、理念を基盤に活動する抱樸にとって、対象者や関わる人々と紡いでいく“ストーリー”は最も重要な資産である。kintoneは、そのストーリーを未来へ残していくための器としても欠かせなくなっている。

対象者とつむいだストーリーがkintoneに蓄積され資産となる

 蔦谷氏は、「支援をする側でも、孤独になる瞬間はやってきます。それでも、職員が対象者の孤独に寄り添えるのは、抱樸という居場所があるからです」と語る。そして、「開発チームが職員の孤独に寄り添えるのは、kintoneという居場所があるからです。kintoneで抱樸に関わる全ての人を孤独にしない。これが私たち抱樸kintoneチームの想いです」と締めくくった。

 プレゼン後には、サイボウズの岡地麻起氏により質問が投げられた。

岡地氏:鍵のかかったSNSという表現がありましたが、とても面白い発想だと思いました。kintoneは、コミュニケーションの基盤としても浸透しているのでしょうか。

蔦谷氏:実際に、何気ないコミュニケーションまで、kintone上で交わしているのを見かけます。そういったやりとりを見ると嬉しくなりますね。

アフタートークの様子

岡地氏:今回、パートナー企業のAISICさんの伴走支援を受けられましたが、依頼して良かったところを教えてください。

蔦谷氏:kintoneのことを何も分からない中、作りたいイメージを相談すると、機能やプラグインなど様々な可能性を提示してくれました。その中から私たちに合うものを一緒に探してくれたことが、一番ありがたかったです。

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