コープさっぽろは惣菜コーナーに、東京ドームは通路に「ソラカメ」設置
定時の「惣菜値引き」は売上が伸びない “クラウドカメラ”が見抜く小売・商業施設の課題
東京ドーム:通路・フードホールを映してマーケティング施策につなげる
続いて登壇したのは、東京ドームのマーケティング企画部・統括主任である矢倉和雄氏。ソラカメが活用されているのは、東京ドーム周辺に展開する都市型複合施設「東京ドームシティ」である。エンタメや商業、温浴、宿泊などが融合したエンターテインメントシティであり、年間数千万人が訪れる。
東京ドームは、主に「顧客理解の深化」と「顧客体験価値の向上」のためにデータ活用を進めており、それぞれでソラカメによる映像分析が寄与しているという。
顧客理解の深化では、アンケート調査や購買履歴、ポイント、アプリなど、多様なデータを分析の上、マーケティング施策を展開している。このような中でソラカメが取得しているのが、通路や店舗の人流データである。矢倉氏は、「年間数千万人という集客力がありながら、『いつ・どこに・誰が・どう動いているか』を定量的に把握できておらず、イベントや施設運営などに活かせていなかった」と振り返る。
矢倉氏が披露したのは、2024年6月に開業したフードホール「FOOD STADIUM TOKYO」でのソラカメ活用だ。同施設は、水道橋駅から東京ドームに向かう通路の途中にあり、この通路とフードホール内にソラカメを設置している。
ソラカメで取得するデータは、フードホール前の通行人数から、入店人数や入店率、フードホールの座席ごとの滞在時間までさまざまだ。これらを、人の属性や時間、東京ドームで開催されるイベントの有無や種類などと組み合わせて、より詳細な分析を図る。データを取得し始めて意外だった点として、当初、水道橋駅寄りの入口から入店する顧客が多いという仮説があったが、実際は東京ドーム寄りの入口の方が多いことが判明したという。「これらの分析で顧客の解像度が上がることで、マーケティング施策の展開も広がっていく」と矢倉氏。
こうした仕組みは、ソラコムの認定パートナーであるAIDのサポートにより構築。映像データは、AIDのサービスによるAI・画像処理を経て、クラウドDBである「SORACOM Harvest」に蓄積。「SORACOM Lagoon」でダッシュボード化したり、CSV出力してBIツールで分析したりしている。なお、東京ドームシティアプリにおけるフードホールの混雑状況の可視化など、顧客価値向上においてもデータは活用される。
苦労した点として挙げられたのは、“社内への投資対効果のプレゼン”だ。「ソラカメは非常に安価ではあるが、それでも新しい取り組みなため、説明には苦労した」と矢倉氏。効果的に映像を取得するためのソラカメの設置・調整でも試行錯誤をしたという。
今後は、顧客分析を営業活動やイベント・施設運用、サイネージなどの広告販売にも反映し、来街者向けサービスへの活用も拡充していく予定だ。




