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大分県知事と東尾理子氏がゲスト登壇、「Zoom Experience Day Summer」基調講演レポート

Zoomで広がる次世代の“つながり” 大分県は「新モデルの遠隔教育」で質の高い学びを届ける

2025年07月25日 08時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 Zoom(ZVC JAPAN)は、2025年7月17日、最新事例を中心としたセッションを通じて、働き方の進化を届けるオフラインイベント「Zoom Experience Day Summer 2025」を開催した。

 本記事では、「次の世界へ。新しいカタチでつながる市民、顧客、従業員」と題したキーノートセッションの様子をお届けする。Zoomの多様な活用事例として、「遠隔教育」で地域の課題を解決する大分市と、「月経教育」の啓発活動にZoomを活用するTGPがゲスト登壇している。

「Zoom Experience Day Summer 2025」は、東京ポートシティ竹芝で開催された

Zoomは人と人のつながりを支えるAIプラットフォームに

 ビデオ会議サービスから事業を始めたZoom Video Communications。2024年11月に社名から「ビデオ」を削除したことが象徴するように、現在では“コミュニケーションとコラボレーションの統合プラットフォームのベンダー”へと進化している。

 「Zoom Workplace」では、会議に加え、電話やチャット、メール、カレンダーといったEX(従業員体験)領域のツールを単一プラットフォームで提供。加えて、CX(顧客体験)領域のソリューションも展開する。特に、営業データを活用できる「Zoom Revenue Accelerator」は、直近ではクラウドPBX「Zoom Phone」を導入するユーザー企業の半分が、併せて選択しているという。

 ZVC JAPANの代表取締役会長兼社長である下垣典弘氏は、キーノート冒頭、テクノロジーの進化に伴う働き方の変遷について振り返る。

 オフィスに出社してPCで業務をする働き方から、モバイルやテレカンの登場で人のつながり方が変わり、パンデミックを経てリモートワークが普及。現在では、「働き方はパンデミック以前に戻ったのではなく、人や会社との関係性が変化し、働く場所の選択肢が増え、より自由になっている。そして、そこにAIが加わった」と下垣氏。

テクノロジーの進化に伴う働き方の変遷

 Zoomの統合プラットフォームにも、AI機能の「Zoom AI Companion」が組み込まれている。Zoomプラットフォーム製品を利用するユーザーであれば、追加コストなしで活用できるのが特徴だ。下垣氏は「すでに手元にAIがあり、それを“使うだけ”なのがZoomの価値」と強調する。

 加えて下垣氏は、「日本人は新しいテクノロジーの話が好きだが、現在は、その仕組みを考えるよりも“何に使えるか”を考えることが重要な時代になっている」と訴える。Zoomであれば、仕組みを理解せずとも、会議や電話、チャット、メールなどの日常のコミュニ―ケーションをひとつの情報として管理し、そのままAI活用できるという。

 「もはやZoomは、ビデオ会議だけの会社ではなく、人と人をつなげる会社となった。そして、そのつながりを有益なものにするために、AIをはじめとする新しいテクノロジーを自然に使えるようにする。その範疇は、企業の中、企業と企業、企業と個人、個人と社会、個人と個人――、ありとあらゆるつながりにまで広がっている」(下垣氏)

ZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長 下垣典弘氏

 下垣氏がこう説明する“Zoomで生まれた新しいカタチのつながり”を示す事例として、大分県とTGPがゲスト登壇した。

大分県:双方向、進学指導など“新しい遠隔教育”を実践

 大分県では、県内どの地域に住んでいても、多様で質の高い高校教育を受けられる環境を整備すべく「遠隔教育の大分モデル」の確立を進めている。

 大分県知事の佐藤樹一郎氏は、「大分県では、県立高校の入試制度を全県一区(居住地に関係なく受験する高校を選択できる制度)としている。そのため、大分市内の進学校に子供たちが集中してしおり、長時間をかけて通学したり、下宿をしたりする生徒もいる。一方で、地域の高校は定員割れとなり、存続の危機に瀕している」と課題を語る。

大分県知事 佐藤樹一郎氏

 そこで、2025年4月に、普通科を設置する県内の4つの高校を対象とした遠隔授業を開始。専任の教員が、大分市内の「遠隔教育配信センター(以下配信センター)」から、授業をリアルタイム配信する環境を構築した。初年度は、難関大学を目指す理系の2年生が参加し、習熟が難しい「数学」「英語」を対象科目としている。

 この取り組みのユニークな点は、「双方向の遠隔授業」を実現していることだ。2つの学校をペアとして同時に授業を配信し、2校の生徒が同時に学習する。大型モニター上には教員がほぼ等身大で表示され、教壇に先生がいるかのように授業が受けられる。

 この遠隔授業を実現するために、Zoomのソリューションが活用されている。配信センターと教室は、専用ハードウェアと組み合わせて「Zoom Rooms」で常設接続。音声や映像のずれを感じることなく、教員による指導や生徒同士のディスカッションが円滑に行えるほか、煩わしい設定や準備が不要な運用を実現した。

 佐藤氏は、「授業中、生徒の様子は中継されており、生徒がどのように思考して、問題を解こうとしているかもすべて把握できる。遠隔でも高度な指導ができるシステム」と説明。AIを活用することで、授業の録画コンテンツが自動生成され、復習などに利用できるのも遠隔授業ならではだ。

遠隔授業の様子(配信室側)

遠隔授業の様子(教育側)

 さらに、遠隔による進学支援も展開する。2025年の夏休み期間には、大学進学を希望する県内の高校2年生に対して、ライブおよびアーカイブで「夏期特別授業」を配信。また、高校3年性には、大学入試問題の動画教材も届ける。遠隔授業対象校に対しては、オンラインでの個別指導や面談なども実施していく。

夏期特別授業と動画教材配信

 受講する生徒からは、「実際に先生がいて授業をしているような感じ」「自分たちも映っているため気が抜けない」といった感想に加えて、「他校の生徒とのコミュニケーションが楽しい」「他校の生徒に負けられない」といった、新たな学びに対する前向きな反応も挙がっているという。

 今後、2027年度までに遠隔授業を大分市内以外の普通科設置高校17校にまで広げて、対象科目にも物理・化学を追加する計画だ。ゆくゆくは、文系生徒や大分市内の高校にも展開し、小中学校におけるプログラミング教育や夜間中学での活用も見据えている。佐藤氏は、「ニーズに柔軟に答えるオンライン教育と、集まることでしかできない実学教育の両輪で、子供たちの学びの保障と進路の開拓を推し進めていきたい」と締めくくった。

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