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業務を変えるkintoneユーザー事例 第271回

「顧客管理しないと会社の将来はない」から始まったkintone活用

社員の「あったらいいね」をkintoneで叶えているうちに、DX認定を取得していた話

2025年07月22日 11時30分更新

文● 柳谷智宣 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 「顧客管理をしないと会社の将来はない」 ―― この強い危機感から始まったオフィスソリューションズ北九州のkintone活用。顧客管理を含めて、社員の「あったらいいね」をkintoneで実現していくことで、経済産業省が定める「DX認定」の取得にまでつながった。

 サイボウズは、kintoneユーザーの事例イベントである「kintone hive fukuoka」を開催。2番手で登壇したオフィスソリューションズ北九州(OSK)の久保田祐史氏と祐徳辰弥氏は、現場の課題を解決するkintoneアプリ作成の歩みを語った。

オフィスソリューションズ北九州 久保田祐史氏、祐徳辰弥氏

顧客管理をしないと会社の未来はないがSFA導入は非現実

 OSKは、「オフィスの改善」を軸に、企業の課題解決をワンストップで提案する地域密着型の企業だ。九州の玄関口である福岡県北九州市小倉を拠点に、複合機やパソコン、ビジネスフォンの保守サービスから、オフィス家具の提案、そしてkintoneの伴走サービスまで手掛けている。

 代表取締役を務める久保田氏は45歳。リコージャパンを経て、2013年にOSKへ入社し、10年後に代表に就任した。一方の祐徳氏は2021年入社の25歳。両者ともに柔道は黒帯だが、IT知識は、久保田氏が「緑帯(中間)」、祐徳氏が「白帯(初心者)」だといい、専門家でなくともkintoneは使いこなせるとアピールした。

 kintone導入のきっかけは、久保田氏が入社した10年前に遡る。久保田氏は、OSKがどう見られているかを知るために、取引が途絶えた顧客を訪問。そこで聞いたのが「担当変更後に営業が来なくなった」という声だった。

 当時のOSKは、顧客への訪問頻度は営業個人に委ねられ、会社として体系的に管理していなかった。また、サービスやシステム、営業といった部門間の情報連携も不足しており、サービス担当者が顧客から貴重な情報を得ても、営業担当者には伝わらないといった場面も生じていた。

顧客管理をしていなかったことが原因で“顧客離れ”

 この状況を打開すべく、久保田氏は、「営業支援システム(SFA)」の導入を前社長に訴える。しかし、コストの高さを懸念され、「現状でうまくいっているから」と却下されてしまう。当時はまだ33歳、今思えば「無鉄砲だった」と久保田氏。

 そうはいっても、同社の顧客情報は、Excel、手帳、そしてベテラン営業担当者の「頭脳」によって管理されている状態。久保田氏は、「顧客管理をしないと会社の将来はない」という強い危機感から、諦めなかった。他の営業社員も同様の悩みを抱えていることも知った。そこで社長に、「誰にとっても分かりやすく、顧客満足度を向上させられる顧客システム」の構築を改めて願い出た。

 ただ、久保田氏自身はプログラミングの知識はなく、当時の社員の平均年齢は53歳。SFAに700~800万円といった高額な投資をするのも現実的ではなかった。そこで、「低コストで始められ、気軽に試せること」「平均年齢53歳でも簡単に操作できること」「20年来の直行直帰スタイルに対応できるクラウドサービスであること」という3つの条件でツールを探し始め、白羽の矢が立ったのがkintoneであった。

3つの条件をクリアするソリューションがkintoneだった

対話で育んだ「あったらいいね!」叶える3つのアプリ

 こうして導入されたkintoneだが、いわゆる「抵抗勢力」は存在したのか。久保田氏によると、もともと社員の仲が良く、明確に反対する者はいなかったものの、「自分にはできない」「無理だ」という消極的な声が存在したという。

 そこで、35名という同社の規模を活かして、社員一人ひとりと対話。「あったらいいね!」という希望を聞き出し、それを叶えるアプリを作ることでkintoneに対する「いいね!」を積み重ねていった。実際に「いいね!」を生み出した3つのkintoneアプリも披露された。

社員たちと対話し、社内のkintoneに対するいいね!を増やす

 ひとつ目は「納入機器リスト」アプリだ。

 以前は、“リース契約”の更新時期を把握するため、契約書の控えを都度探し、提案時期を逃すこともあったという。それが同アプリによって、「リース終了日1年前です!」といったポップアップが自動通知されるようになった。現在では、プラグインを用いてAND検索でターゲットを絞り込んだり、地区ごとの納入台数をグラフで可視化したりと、戦略的な営業活動に貢献しているという。

通知機能を活用することで提案時期を見逃さないように

 2つ目は「修理依頼」アプリだ。

 以前は、顧客からの修理依頼を電話で受け付けており、さらに管理部からサービスマンに電話する手順を踏んでいた。そのため、修理の進捗状況はサービスマンしか把握できていなかった。「情報を把握していない営業担当が、『修理中なのに提案するのか』と怒られることさえありました」と祐徳氏。

 それが同アプリによって、顧客名を入力するだけで、導入機種などの情報を誰でも確認できるようになった。そして、修理依頼が登録されるとサービスマンと営業担当者の両方にポップアップが飛ぶ仕組みも実装している。

電話を受けた人がすぐに顧客の導入機種がわかるように

 3つ目は「得意先情報」アプリだ。

 複数のアプリを運用し始めると、「どの情報がどのアプリにあるか分からない」という声が上がる。この反応は想定内であり、対策として関連レコードを集約する、知りたい情報が一瞬で見つかるアプリを作成。現在はタブ形式で、「見積もり情報」「納入機器リスト」「設定情報」「複合機修理履歴」といった情報を一つの画面で確認できる。この直感的なインターフェースは、新入社員であった祐徳氏も、すぐに馴染むことができたという。

一つの画面に情報を集約した

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