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業務を変えるkintoneユーザー事例 第270回

「うんざりするような業務」を圧倒的に楽にするために

アプリ使ってもらうハードルってこんなに高かった? そもそもDXの手前だった医療商社がkintoneカスタマイズに挑戦

2025年07月17日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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クレームこそ、使ってくれている証

 しかし、岩木氏はあきらめない。ひたすら社内をうろうろし、ログインしてないユーザーにログインさせ、操作がわからない人をサポートし続ける。ユーザーからいろいろな声が挙がるので、どこかのCMのように、その場でシュシュッと改修してしまう。この積み重ねでようやく「便利じゃないですか!」という声につながる。

 「要望を超えて、クレームこそが使ってくれている証」と岩木氏は指摘する。「ライセンスがほしい」や、「説明会ないの?」といった声が現場から挙がるようになり、「わがままを聞いてくれる」という勝手に口コミが拡がり、ようやくユーザーに利用されるようになる。ようやくだ。

 実際、オルバグループの新年式では、DX関連のトピックも披露され、社員からの553件の声のうち63件で「kintoneの売上返品指示書アプリで時短ができた」「助かってます」という声が出てきたという。「びっくりしました。予期せぬ声です」と岩木氏も振り返る。DX施策の取り組みでkintoneの研修も進み、使う人だけではなく、作る人も増えてきた。

喜びの声も挙がってきた

 うんざり業務をさらに楽にするために、前述した独特の商慣習で様式が複雑になっている帳票の業務に手を付けた。複雑な様式でも利用でき、メールや電子契約、文書管理、AI-OCRなどさまざまな外部サービスと連携できるツールとして、OPROの「帳票DX」を選択。たとえば、労働契約書の作成や対象者への送信、電子契約までを帳票DXとGMOサインとの連携で実現している。

 また、富士フイルムビジネスイノベーションの複合機であるIWproでスキャンした書類をkintoneに登録し、OCRでデータ化することにした。「仕入れ先からの納品書がなかなか処理されないため、営業に督促するのですが、全部紙で来ています。IWproとkintoneを連携することで、ペーパーレス化を実現でき、アプリの中で進捗を管理できるようになった」と岩木氏は語る。さらにジョイゾーのJobocoを利用し、利用中のLINE WORKSに通知させるよう現在準備を進めているという。

 最近は取引先との連携も始めた。今までメールやFAXを用いていた納期確認をkviewerで、さらにWebで発注してもらうための仕組みとして「Kanal-WEB」などを試験運用しているとのこと。

DX手前の「アクセプトIT」だったカワニシ まずは身近なアプリ化

 ここまでのDXの流れを岩木氏はまとめる。一般的には、DXはデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3つのフェーズを踏むと言われているが、カワニシは「フェーズ0」があった。すなわち「ITを理解し、認める」「システム化を受け入れる」という「アクセプトIT」というフェーズだ。

カワニシはDXの手前のフェーズ0「アクセプトIT」だった

 アクセプトITのフェーズでは、データを入力しないと、システムには登録されない。こうした変化に直面したときの人の自然な反応としては、とにかく反発する「評論家タイプ」、パニックに陥る「被害者タイプ」、見て見ぬふりをする「傍観者タイプ」などがあるが、20%は前向きな「ナビゲーター」だと言われている。「こんな方々を一人でも増やすという活動を、われわれはやっていたんだと思います」と岩木氏は振り返る。

 ここからカワニシのDXは、ようやくデジタイゼーションに進む。2025年4月現在がカワニシの社員数は736人になっているが、kintoneのライセンス数はまだ592で、8割にとどまっている。1ユーザーあたりで使っているアプリもまだ1~4程度で、大半が1アプリか、2アプリ程度だという。「1ヶ月間ログインしていない263名もいる」と岩木氏は語る。

 ただ、数字を裏返せば、kintoneにログインする習慣を持つ人は、全体の64%に上るということでもある。「kintoneアレルギーは減ったはず。今こそ二の矢、三の矢を放つとき」と岩木氏は語る。そのヒントになるのが、「●●が大変でね」という社員との会話。「そんなのkintoneですぐ対応できるよ」と提案し、身近な課題を解決するアプリをどんどん作っていく。

 「アカウントあってもダメ」「アピールしてもダメ」「便利でもダメ」。アプリを使ってもらうという高いハードルを超えるために、さまざまな努力を続けてきた二人。高森氏は、「ということで、次のテーマは身近なアプリ化の発掘です。そして我々の活動『その気にさせる』はまだまだ続いていくと思っています」とコメント。パートナーである富士フイルムビジネスイノベーションへの岩木氏の謝辞で登壇を終えた。

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