業務を変えるkintoneユーザー事例 第269回
新卒社員が3週間で100件の商談を獲得できる仕組みづくりも
「子供が熱でも仕事を続けられた」 kintoneで築いた在宅ママ5割のフルリモート営業組織
2025年07月15日 09時00分更新
kintoneを“営業の司令塔”にするアプリの工夫
加えて田口氏は、kintoneを「営業の司令塔」に変えた、2つの工夫も紹介する。
まず、「受注アプリ」では、営業ステータスが「受注」に更新されると、プロジェクトメンバー全員に速報が飛ぶ仕組みをつくった。これは、営業組織に必要なエモーショナルなサポート体制を築いて、チームの士気と個人のエンゲージメントを高める効果があるという。「『契約を取ったぞ!』というタイミングを素早く共有することで、成果を上げた営業さんのエンゲージメントを高め、チームの質も高められます」と田口氏。
また、「日時」フィールドを活用して、顧客への次回アプローチ日を登録すると、リマインド通知が届く機能も実装。顧客との最適な接触タイミングを逃さない、まるで優秀な秘書がついているかのような体験をkintoneで実現した。
「顧客管理アプリ」では、「スコアリング」というユニークな試みを導入した。担当者名や役職、決済権の有無といった「取得情報量の多さ」と、自社サービスとの「親和性」を掛け合わせ、顧客のスコアを算出。営業担当者間の「見極める力」の差を埋め、新人でもベテランでも優先度の高い顧客から効率的にアプローチできる。
このような工夫もあり、2025年度の新卒社員が、入社わずか3週間で100件の商談を獲得。商談化率22%という驚異的な数字を叩き出した。クライアントからは「訪問スケジュールがパンパンです」と感謝の声が届いたという。
個人の努力はもちろんあるが、「受注速報によるチーム全体の士気向上」「リマインド機能による最適なタイミングでのアプローチ」「スコアリングによる優先顧客の明確化」といった、仕組みづくりによるものだと田口氏は分析する。なにより、再現性があり、どのプロジェクトでも成果が上がっている。
田口氏は、今後の展望として、「労働市場の人手不足と働きたくても働けない人々のミスマッチを、『共創型BPO』によって解決し、就労機会の創出を通じた社会課題の解決に貢献していきたい」と語る。そして、kintoneと共に「場所や境遇にとらわれず、誰もが“はたらく”に挑戦できる社会」を実現していくというメッセージで、セッションを締めくくった。
プラグインやAPIを使わなくても「基本機能だけでここまでできる」
セッション後には、サイボウズの岡地麻起氏から質問が飛んだ。
岡地氏:kintoneの基本機能を駆使していただいてる印象を受けました。特に、関数でスコアリングする仕組みは、びっくりされた方も多いのでしょうか。どのようにkintoneのことを学習されたのでしょうか。
田口氏:お恥ずかしながら、今は、kintoneのライトコースをシンプルに使っています。いわゆるプラグインやAPIは使えていない状況です。その分、色々なサイトを調べながらアプリを作りました。「基本機能だけでここまでできる」ことを伝えたかったです。
岡地氏:新卒社員の方が短期間で100件以上の商談獲得されたという驚きの成果もありました。この1番大きな要因は何でしょうか?
田口氏:大量のリストの中から、優先度が高い顧客を見極める力が、いわゆる「トップ営業」との大きな違いになっています。この差をなくすための取り組みがスコアリングです。新卒の方でも、今日どこに営業したら成果が上がりやすいのかを瞬時に分かるようにしたことが成功につながりました。

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