業務を変えるkintoneユーザー事例 第269回
新卒社員が3週間で100件の商談を獲得できる仕組みづくりも
「子供が熱でも仕事を続けられた」 kintoneで築いた在宅ママ5割のフルリモート営業組織
2025年07月15日 09時00分更新
「子どもが熱を出しても、仕事を続けることができました」 ―― 福岡のアウトソーシング企業は、在宅ママワーカーが50%を占めるリモート営業チームをkintoneで構築。さらに、新卒社員が3週間で100件の商談を獲得するなど、誰もが「トップ営業」になれる仕組みを作り上げた。
6月17日、サイボウズは、kintoneユーザーの事例イベントである「kintone hive 2025」を開催した。福岡での開催は4回目で、会場はいつものZepp福岡。ファイナリストに選ばれた企業は、Cybozu Daysでの本戦「kintone AWARD」に出場できる。トップバッターを務めたワールドスタッフィングの田口勇貴氏は、kintoneで運用するフルリモート型の営業チーム構築までの道のりとkintoneアプリの工夫を披露した。
企業と求職者のギャップが労働市場の課題
ワールドスタッフィングは福岡県に本社を構える、人材サービスやアウトソーシングを手掛ける企業だ。田口氏は、法人営業を代行するインサイドセールスBPO部門に所属している。
田口氏は、冒頭、「労働は誰のためのものか」と投げかける。現在の日本は、労働人口の減少によって、深刻な人手不足に直面している。一方で、育児や介護、家庭の事情による地方移住などの理由で、「働きたくても働けない」「働くことを諦めた」人も数多く存在する。この「企業の求める人材」と「働けない求職者」のギャップが、労働市場における深刻な課題だという。
これらの人々の大きな障壁となっているのが、「出社」と「時間」だ。田口氏は、固定観念にとらわれない働き方の可能性を提示し、「仕事と家族、どちらかを選択するのでなく、暮らしの中に『働く』がもっとあってもいい」と語る。
インサイドセールスBPO部門では、kintoneを活用して、この社会課題の解決に取り組んでいる。全国の在宅ワーカー、特に育児中の母親をオンラインで組織化し、フルリモート型の営業チームを結成。チームの在宅ママさんの比率は実に50%だという。すべての業務がkintone上で完結する運用モデルを構築して、地理的な制約なく機能している。
働くメンバーからも支持を得ており、「子どもが熱を出した時に見守りながら仕事を続けることができた」「夫の転勤で地方に移り住んでも仕事を継続できている」という声が寄せられているという。
ブラックボックス化を打破する「共創型BPOモデル」
実際の事業モデルは、まず企業から依頼を受け、プロジェクトごとに全国の在宅ワーカーでオンライン営業チームを組成、クライアント企業に代わって新規の法人開拓をするBPOサービスとなる。オンライン営業チームは、今では事業の“大きな原動力”になっている。
しかし、順風満帆にスタートしたわけではない。開始当初は、アウトソーシング業界特有の「ブラックボックス化」という壁に直面。業務を外部に委託することで、業務プロセスが見えなくなり、顧客からの懸念が募っていた。
「取引先から、『すごく良い取り組みだけれど、営業は企業の根幹。その根幹が見えなくなるのは、大きなリスク』と言われました」(田口氏)
この壁を打破するために、kintoneを通じて徹底的に“現場の見える化”を推進。顧客と一体となってプロジェクトを進める「共創型BPOモデル」を構築した。業務プロセスや情報をkintoneに集約することで、クライアントは営業活動の一挙手一投足をリアルタイムに把握できる。
kintone化したことで、日報や定例報告に依存した進捗確認からも脱却した。30分かかっていた日報作成業務もゼロに、常に状況を把握できるため定例会議の時間も60分から30分に大幅短縮した。この共創型モデルは、プロジェクト専用のkintoneを新規契約して、セキュリティを担保したまま外部ユーザーを招待できる「ゲストスペース」機能を活用することで実現している。

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