業務を変えるkintoneユーザー事例 第268回
山形県の装置メーカーが「予実管理システム」で社員の笑顔を取り戻す
「無駄」「面倒」「頑張り損」 諦観していた社員を変えたkintoneの工夫
2025年07月07日 10時00分更新
「無駄」「面倒」「頑張り損」…「笑顔をつくる」というスローガンを掲げる山形県の装置メーカーは、非効率な業務、感覚に依存した人事評価で、逆に社員の笑顔が失われていた。
2025年5月13日に開催された、kintoneユーザーの事例共有イベント「kintone hive sendai」。2組目に登板した庄内クリエート工業の佐藤州氏が披露したのは、kintoneを活用した「予実管理システム」構築までの軌跡と、同システムに盛り込まれた7つの工夫だ。
笑顔をつくるはずの“自分たちの笑顔”をつくれていない
庄内クリエート工業は、山形県鶴岡市に3つの向上を構える装置メーカー。主に産業機械やガンの治療器を製造する、従業員80名ほどのものづくり企業である。
同社は活動スローガンに、「笑顔をつくる仕組みをつくる(CREATE for SMILES)」を掲げる。しかし、kintone導入以前は、業務や人事評価にさまざまな課題を抱え、笑顔をつくるはずの社員に笑顔はみられなかったという。
日報ファイルは個別で作成、図面裏に手書きした工数を表計算ファイルに転記、延々に続くデータの集計と確認、経営層の感覚に依存した個人評価…問題を挙げると枚挙にいとまがない。社員も、「働いていても無駄じゃん」「面倒くさい」「頑張り損だ」と不満が続出。佐藤氏は、「社員も無駄なのは百も承知。でも、誰も何もしない。なぜならそれが“当たり前”だった」と振り返る。
もちろん、社長の小田氏も、このような状況を望んではいない。社員の笑顔のために、スピード感と納得感がある“データドリブンな経営”をしたかった。ただ、こうした経営の実現方法がわからず、打開策を模索する日々が続いていた。そんなある日、佐藤氏は社長から「しゅー(佐藤氏のこと)、kintoneはどうだ」と声かけられる。「社長も夜な夜な調べていたんだな」と感慨にふけりつつkintoneを試してみると、会社を変えられる手ごたえを得られた。
そして、2022年7月、同社はkintoneのスタンダードコースを契約。社員の笑顔をつくるためのkintoneアプリの開発が始まる。
“データドリブンな組織風土”が芽吹き、諦観していた社員も動き出す
まず佐藤氏は、kintoneの知見を蓄えるべく、積極的にコミュニティやセミナーに参加。あわせてkintoneのプラグインについても理解を深めていく。伴走サポートを受けるための山形県内の開発パートナーとも出会った。
そして、山ほどあった困りごとを一気に解決するために、kintoneで構築したのが「予実管理システム」だ。仕入アプリ、日報アプリ、案件管理アプリを中核に、それを補完するアプリをつなげた、全体で50個のアプリで構成されたシステムである。
「日報アプリ」では、同社の多様な業務に柔軟に対応できるよう設計されており、入力作業も最小限で済むよう工夫されている。「仕入れ管理アプリ」は、メシウス開発のプラグイン「krewSheet」で、表計算ソフトの操作感を引継ぎ、部門をまたいで部品の手配状況を把握できる。「案件管理アプリ」でも、表計算の操作性を維持しつつ、案件番号を軸に、進捗状況や予算情報を可視化する仕組みをつくった。
そして、krewシリーズの「krewData」を使用して、日報アプリから工数実績、仕入管理アプリから仕入実績、案件管理から予算情報を集計する「予実管理アプリ」を構築。「krewDashboard」を用いることで、各社員の視点でデータを参照できる、多角的なダッシュボードも実装した。
こうした予実管理アプリの構築によって、月あたり約1500時間の効率化を実現。これは同社の約9人分の業務削減効果にあたり、「効率化で生まれた時間を、より付加価値の高い業務に割り当てている」と佐藤氏。加えて、過去・今・未来がデータで把握できるようになり、社員ひとりひとりの頑張りも、数値で評価されるようになった。
佐藤氏が最も嬉しかったのは、社長以外の上長たちからも、「この数値もデータでみたい」という前向きな意見が上がるようになったことだ。社長が目指していた“データドリブンな組織風土”が芽吹いた。
もちろん、社員にも笑顔が増えてきた。kintone導入後には、「寄付型自動販売機」が設置され、登山・ボランティアの同好会も生まれた。これらは、社員自らの立案により生まれており、「以前の何もしない社員では考えられない。kintoneのお陰で社員が変わり、“社員の笑顔をつくる”仕組みがつくれた」と佐藤氏。

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