エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀「玉ちゃんのシネマ秘宝館」 第1回
未だにJホラーで“最恐”はコレじゃないか!? 世界を制した『呪怨』の原点・ビデオ版を4K&5.1chサラウンドで観たら「一番怖い」と確信!
ビデオ版を自宅で見たときの衝撃は忘れられない
映画の試写会情報をアップしていく新連載「玉ちゃんのシネマ秘宝館」。記念すべき第1回は、清水崇監督『呪怨〈4K:Vシネマ版〉』『呪怨2〈4K:Vシネマ版〉』(新宿バルト9ほかにて8月8日より劇場公開)。
2000年に発売された、この2つのビデオ作品。本シリーズの映画化が決まる前に(劇場版『呪怨』は2003年に公開)、自宅で見たときの衝撃は忘れられない。
筆者は漫画家の山岸凉子のファンで、特に幽霊譚などの独特の怖い話に惹かれていた。そのためだろうか、『女優霊』(1996年公開)や『リング』(1998年公開)などに端を発する「Jホラー」と呼ばれるようになる作品たちが持つ、従来のホラーとは一線を画する感覚に強い共感を持っていた。ただ、中でも『呪怨』は単なる映画体験で終わらない感覚だったのだ。
その後の映画化の成功、数多くの続編、配信ドラマ化、ゲーム、舞台と広がり、ハリウッドでも映画化されて全米1位を獲得したシリーズだが、2025年6月18日、改めて、試写室でレストアされたビデオ版2作品と対峙して「やはり、ビデオ版が一番怖い」と確信した。
筆者がビデオ版を初めて観た頃は、名古屋で「東海ウォーカー」の編集長をしていた。東海テレビの映画紹介番組で「玉ちゃんのシネマ秘宝館」というコーナーを持っていたが、あまりの衝撃に(今で言うところの)推し活動を始め、上司にビデオを送りつける始末。しかし、実はすでに角川ホラー文庫でノベライズが決まっていたのだった。
その後、映画化が決まった際は東海ウォーカーでも記事化し、清水崇監督とも連絡を取った。最初の公開時には、東海エリアのシネコンでトークショーをしたほど。
かくして、映画はヒットし、2004年には『死霊のはらわた』などでおなじみのサム・ライミのプロデュースでハリウッド・リメイク版の『THE JUON/呪怨』が完成。全米1位を勝ち取って日本で凱旋公開された際は、「玉ちゃんのシネマ秘宝館」で清水監督と対談したのも良い思い出だ。
今さらだが、「呪怨」とは何か
「呪怨」とは、強い怨念を抱いて死んだモノの呪いで、呪われた家からあふれ出す死の連鎖のことを言う。観るものに強烈なインパクトを残すメインキャラクターの佐伯伽椰子は、映画『リング』の山村貞子と並ぶホラークイーンと呼んでいいだろう。伽椰子の子供である、白塗りの佐伯俊雄も忘れがたい存在だ。
また、親子が惨殺された郊外の一戸建ての家自体も本作におけるアイコンで、ハリウッド版でも、わざわざアメリカからこの家に来て襲われる。ちなみに、貞子とは白石晃士監督『貞子vs伽椰子』(2016年)で激突することになる。
数多くの続編から、配信ドラマ、ゲーム、舞台にまで広がった『呪怨』の世界だが、個人的には、ビデオ版のインパクトが一番強い。禍々しさはまったく色あせておらず、改めてスクリーンで見て、異様なパワーに驚かされる。
ビデオ版の怒涛の進行は観るものに受け身を取らせない
まさに“原石”の怖さがある
一連の『呪怨』シリーズはすべて物語が繋がっており、映画化以降、作品の完成度は回を重ねるごとに上がっていく。それでも、最初のビデオ版の2本はまさに“原石”の怖さがある。投げ出されたようなアイデアと畳みかける進行が、観るものに受け身を取らせない。
登場人物の名前ごとの章立てで、オムニバスのような作りなのだが、微妙に章ごとに時間が前後し、時制が惑わされる。しかも、1作目の一部は、2作目の冒頭に繰り返して食い込まされている。当時は、間違えてビデオを入れたのかと思ったものだった。
1作目の『呪怨〈4K:Vシネマ版〉』。「不登校の生徒・佐伯俊雄の家庭訪問に訪れた担任の小林。俊雄の母、伽椰子は小林の大学時代の同級生であった。訪問した佐伯家には俊雄の姿しかなかったが、そこで目にした伽椰子の日記には、異常ともいえる小林への想いが綴られていた」とあらすじにあるのだが、このようには映像は作られていない。しかもこの小林は、『女優霊』の演技で衝撃を与えた柳ユーレイ(現:柳憂怜)が演じているのも見どころだ。
2作目の『呪怨2〈4K:Vシネマ版〉』では、「不動産業者の鈴木達也は、霊感のある妹・響子に買い手のつかない事故物件となった家を見てもらうが、そこは響子の想像を超えた気配に満ちた場所だった。だが何事もなかったかのように新たに北田夫妻が入居する。響子はその家にまつわる因縁めいた逸話を集めるが、同じころ達也の息子である甥の信之にも異変が起こっていた」とあらすじにある。しかし、話が進んでいくにつれて、加速度的に世界が壊れていく。
実際には、2作目の最後の描写が映画版に繋がっていく。伽椰子の呪い同様、作品ごとにチェーン・リアクションしていくつくりは観客を逃さない。
『呪怨〈4K:Vシネマ版〉』
監督・脚本:清水崇
出演:柳ユーレイ(現:柳憂怜) 栗山千明 三輪ひとみ 三輪明日美 藤貴子 吉行由実 松山鷹志 洞口依子
『呪怨2〈4K:Vシネマ版〉』
監督・脚本:清水崇
出演:大家由祐子 芦川誠 藤井かほり 斎藤繭子 藤貴子 でんでん 諏訪太朗 ダンカン
【清水崇監督のコメント】
「劇場公開こそされなかったけれど、人生初の長編だったVシネマ作品が、四半世紀を経て、顧みられるとは思ってもいませんでした。当時の僕は、与えられた企画にチャンスを感じつつ、ただただ夢中で、70分越えの2本撮りに9日間の撮影期間で臨みました。提示されたお題は『怖ければ!』だけ……。幼少期から怖がりだった自分が膨らませていた怖い妄想の限りを吐き出しました。右も左もわからぬ若造に機会をくださり、支えて下さった方々に感謝です。若さゆえの勢いや歪さが今の皆さんにどう映るのか? 今こうして劇場で陽の目を見るのは、嬉しい反面……正直、気恥ずかしいばかりです」
清水崇 映画監督/脚本家
1972年群馬県出身。大学で演劇を学び、助監督を経て98年に監督デビュー。原案/脚本/監督のオリジナル企画「呪怨」シリーズ(1999年〜2006年)はVシネや劇場版を経てハリウッドリメイク。日本人監督初の全米No.1に。近作に『犬鳴村』(2020年)、『樹海村』(2021年)、『牛首村』(2022年)、『忌怪島/きかいじま』、『ミンナのウタ』(共に2023年)。ホラー以外に『魔女の宅急便』(2014年)、『ブルーハーツが聴こえる/少年の詩』(2017年)、『ホムンクルス』(2021年)など。プラネタリウム『9次元からきた男』(2016年)が日本科学未来館にて上映中。今夏公開された『あのコはだぁれ?』が大ヒットを記録。
【恐怖!リポストキャンペーン】
25年前に発表された作品ながら、鑑賞した人の記憶にその恐怖が残り続けるこの作品の感想やトラウマ体験をポストしてもらう企画。Xアカウントで #呪怨4K をつけて投稿されたポストに対して公式Xで積極的にリポスト&呪いいね!を実施していく。
内容は「呪怨」にまつわる思い出・トラウマ、俊雄・伽椰子に関して、オススメコメントや劇場公開への期待など内容不問。また、コメントの破壊力次第では公式から恐怖のDMが届き、ポスターが送りつけられてくる可能性も……という。
※不穏すぎる投稿内容や見落としなどの都合により、すべてのポストをリポストすることは約束できない。
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