業務を変えるkintoneユーザー事例 第261回
販売管理の刷新から広がり、kintoneユーザーは2年で約25倍に
業務が忙しくDX推進どころじゃない… kintoneの導入で日本海ガスが凝らした工夫
2025年05月16日 09時00分更新
変えたくても、このままじゃダメなんだ――。改革を目指したものの、通常業務が忙しく、一度は暗礁に乗り上げた大規模なDXプロジェクト。最終的な成功のカギは、ひとまず「現場がすぐに楽になる」kintoneアプリから作り始めることだった。
2025年4月15日にZepp Nagoyaで開催された、kintoneユーザーの事例共有イベント「kintone hive nagoya」。4組目に登壇した日本海ガス絆ホールディングスのDX推進部 部長である松井義行氏は、販売管理システムの刷新から始まったグループでのkintone活用について語った。
ノベルティの“お昼寝まくら”でkintoneと出会う
グループ14社を抱え、富山県と石川県に事業を展開する日本海ガス絆ホールディングス。都市ガス・LPガスなどのガス事業を中心に、ハウジング事業やエネルギーマネジメントなども手掛ける、総合エネルギーグループだ。
松井氏が所属するDX推進部は、グループ内のITインフラ整備、保守、デジタル化、業務改善までを任されている。同部は2023年に発足したが、「社内の期待が想定範囲を超えていた」と松井氏。上層部からは、『すぐペーパーレスに!』『全部AIにやらせろ!』『サーバーなんか置かずクラウドにしろ!』と矢継ぎ早にミッションが課される。そんなミッションのひとつに、グループ企業の「モット日本海ガス」における販売管理システムの問題改善があった。
モット日本海ガスは、ガス器具の販売や安全点検などのサービスを提供する会社だ。同社の販売管理システムは、店舗ごと独立した、ネットワークに接続しないスタンドアローン型であり、それ故にさまざまな問題が生じていた。
ひとつ目の問題は「誤登録の発生」だ。販売単価や機器の登録情報が、店舗ごとに異なるケースが頻発していた。2つ目の問題は「管理PCへの行列」。販売管理用PCは各店舗に1台ずつしかないため、夕方には順番待ちの行列が起こっていた。そして最後の問題が「確認作業の増加」。見積書や請求書をExcelで管理していたため、手作業での転記・集計や目視でのチェックなど、多くの無駄な作業が発生していた。
DX推進部では、これらの問題に対して販売管理システムのリプレースを提案。しかし、上層部からは「コストが高い」とはねつけられる。さらには「今のトレンドは、SFAのダッシュボードをモニタリングして、データドリブンのマネジメントだろ」と、何故かさらに高価なシステムを引き合いに出して否定される始末だった。
頭を悩ませる中で、社員が使っていた、とあるサービスのノベルティに目がとまる。そのノベルティとはkintoneの“お昼寝まくら”であり、これがのちに日本海ガス絆ホールディングスを変えることになるkintoneとの出会いだった。
業務のひっ迫でプロジェクト中断、足りなかった推進の工夫
「kintoneならできるんじゃないか」(松井氏)とさっそく提案するも、上層部は形のないプラットフォームに懐疑的だった。松井氏は、「ライバル企業も、大企業も、みんなkintoneを採用しています」「“データドリブンなマネジメント”もできます」と説得を続ける。
だが結局、説得の決め手になったのは、豊川悦司さんが「業務アプリをシュシュッと作る」kintoneのCMだった。「kintoneでやったら、みんなに言われますよ? 『うちの店長は豊川悦司みたい』って」。
費用対効果についても、月額1800円/ユーザーの「スタンダードコース」であれば、1人あたり“1日3分の残業削減”で投資が回収できると提案した。
こうして始まった、モット日本海ガスとDX推進部による、販売管理の刷新プロジェクト。しかし、互いに通常業務を抱える中で、モット日本海ガス側は要件定義が、DX推進部側は販売管理の業務理解が進まず、プロジェクトはストップしてしまう。結局は「プロジェクトを進める工夫が少し足りなかった」と松井氏。
プロジェクト再起動を図るために、モット日本海ガス側は、要件定義を作り込むのをやめ、ひとまず「今すぐできたら便利なこと」を挙げることにした。DX推進部側も、現場に赴いて実際の販売業務を理解することに努めた。こうして、販売管理という目標にとらわれず、まずは「現場がすぐに楽になるようなアプリ」の作成に取り掛かることにした。
例えば、「受託作業管理アプリ」は、基幹システムの依頼書や指示書のデータを自動連携して、kintone上で管理できるようにするアプリだ。これにより、紙からExcelに転記する作業がなくなった。「道案内アプリ」は、スマホからkintoneに顧客名を入力するだけで、基幹システムの情報から道案内をしてくれるアプリ。わざわざ住所を調べて、カーナビや地図アプリを設定する手間がなくなった。
このように、すぐに業務の負担が減るアプリをたくさん作り、時間を生み出すことで、本丸である販売管理のkintone化を進めていった。完成した販売管理アプリは、複数のPCから同時に使えるため、専用PCへの行列が解消された。また、共通の顧客情報や単価マスターを自動連係させることで、店舗間での情報の整合性も確保した。「高額な販売管理システムに負けない機能を、kintoneでやり遂げた」と松井氏。
とどめのkintone活用は、「会議用資料の作成時間削減」だ。これまでは、作業日報を手作業で集計して、そこから会議用資料へと転記していた。今では、営業担当が日々、kintoneに入力する商談情報から、分析資料が自動でできあがる仕組みになっている。「会議のためのデータ入力作業はゼロ」(松井氏)になり、ダッシュボードやグラフで、より柔軟で詳細な分析も可能になったという。

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